優駿牝馬に東京優駿も終わって連日気温は20度超え。さらに雨模様の日も多くなり、いよいよ梅雨と初夏の気配を感じる季節になりましたね。筆者は宝塚記念のファン投票を済ませ、笑顔で夏を迎える準備ができたところです。皆さんお元気でしょうか?
今回は、ギターのシェイプの名前についてのお話です。
サウンドハウスのホームページでギター本体を見ようとしたとき、大抵はさまざまなシェイプごとに分かれている中から気になるものを選ぶかと思います。
ここのページとかですね。眺めてみると、違和感を覚えた方もいるんじゃないでしょうか。そう例えばこのあたりとか。

パッと見た限り同じじゃん!と思う方、多いと思います。それと同時になぜこうなっているか分かる方、なかなかですね。さらにわざわざ分ける原因の発端となった理由をご存じの方、詳しいですね。
じつはこれ、商標などの利権が原因なんです。今回はFenderのストラトキャスターとテレキャスター、またその類似品にフォーカスして簡単に解説していきます。
簡単な歴史
まず前提として、ストラトキャスターとテレキャスターの歴史を把握しておかないと、この後の話の時系列がぐちゃぐちゃになってしまうので、最初におさらいします。
時は1949年ごろ。アメリカにて超鮮烈でセンセーショナルなギターが発表されます。なんとそのギター、従来のアコースティックギターのようにボディ内で音を反響させる構造を持たず、電気の力で大きな音を出すというのです。その名も“Broadcaster”。ブロードキャスターと読みます。そんなブロードキャスターが発売されたのが1950年。しかし発売早々、Gretschのドラムセットと名前が被っていることが問題となり、名称変更を余儀なくされます。そのためノーキャスターと呼ばれる、いわゆる名無し状態の期間が数か月あったのち、1951年に“テレキャスター”の名が世に出ます。それから今日に至るまで、さまざまな仕様変更もありつつエレキギターの定番として君臨しています。
ちなみにブロードキャスターもテレキャスターも、名前の由来は当時の新技術、テレビジョン放送、いわゆるテレビにあやかったものだったりします。
そんなテレキャスターの発売から3年ほどの1954年。Fenderより新たなギターが発表/発売されます。そう、ストラトキャスターです。テレキャスターとは見た目、機能において大きな違いを持ち、さらにアップデートされた新定番として発表されたわけです。それから今日に至るまで、これまたさまざまな仕様変更もあり、特に1966年にヘッドストック変更が行われたのは大きいと感じます。そんなこともありつつ、エレキギターの定番として君臨しています。
ちなみに、宇宙や成層圏という意味を持った”Stratosphere”が名前の由来だったりします。
1949 ブロードキャスター発表
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1950 ブロードキャスター発売
↓
1951 テレキャスターに改名
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1954 ストラトキャスター発表/発売
となりますね。これをなんとなく頭に入れておいてください。
日本製ギターの存在
上述のような流れで世に出たテレキャスターとストラトキャスターですが、1960年代後半から加熱するバンドブームによって、ギタリストたちの憧れの的となります。ジミ・ヘンドリックスをはじめジェフ・ベック、エリック・クラプトン、リッチー・ブラックモア、デヴィッド・ギルモア等々、錚々たる面々が使い始めたわけです。これに当時の若者は熱狂します。
その勢いのままギターを手に取ろうとするわけですが、Fenderなんて高嶺の花。到底手が出る価格ではなかったわけです。
1970年代ごろにそこに活路を見出したのが日本のギターブランドです。最新技術であったNCルーターと呼ばれる自動で決まった形にものを削る機械を駆使し、安価かつ本家に迫るクオリティのコピーモデルを作るブランドが出てきます。これが若者を中心に飛ぶように売れました。どれくらいの勢いかというと、Fenderの売り上げを脅かすくらいです(これは当時のFenderの無理な量産による品質低下等も関係していますが)。
ここまでは良かったのですが、この時に日本のブランドはなんと商標権を完全に無視していました。そして1980年代初めに、東海楽器が実際に訴訟を起こされてしまいます。同様のことがGibsonのレスポールでもほぼ時を同じくして起こっており、これより日本製のコピーモデルは市場縮小、後発のギターブランドは商標対策により一層力を入れることになります。
この商標に関する訴訟はなにも過去の話ではなく、ギターの世界では現在もちょくちょく見かける話題です。数年前にもGibsonが訴訟を起こしたと記憶しています。
とまあ、こんな流れを経ている歴史があり、現在は“ストラトキャスター”“テレキャスター”とはっきり言い切れるのはFenderと傘下のSquierのみになります。こういった理由から冒頭の画像のように区別するため“STタイプ”“TLタイプ”と表記し区別している、というわけです。
ギターもどれくらい知識を掘り下げるかは人によって違いますが、こういった歴史の背景を踏まえながら楽器を眺めてみると、また今までとは違った選び方ができて楽しいかもしれませんね。
それではまた!