第四回は、「Pass Thru & Time Align」について紹介していきたいと思います。
まず、「Pass Thru」について。これは、パワードスピーカーの各入力に接続した信号をミックスした「パワーアンプ増幅前」のラインレベルの信号を出力する端子です。パワーアンプを内蔵しているパワードタイプのPAスピーカーにはほぼ間違いなくと言っていいほど用意されています。
主な用途としては、
- パワードスピーカーを追加して、音が届くエリアの拡大
- パワードサブウーファーを追加して、低音の強化
といったところでしょうか。もちろん、「パワーアンプ+パッシブスピーカー」で鳴らすことも可能です。
JBL EON700シリーズ、PRX ONE、EON ONE MKIIに搭載されている Pass Thru出力の優れているところは、
- 出力元のスピーカーから出力する信号にハイパスフィルター(HPF)をかけることができる。
- Pass Thruから出力する信号にローパスフィルター(LPF)をかけることができる。
- 出力レベルを調整することができる。
多くのパワードスピーカーの場合、
- ハイパス/ローパスフィルターはかけることができない、できたとしても周波数固定。
- 出力レベルは調整できない。INPUTに接続したレベルをそのまま出力するか、GAINやMASTER VOLUMEを変えると出力レベルも変わってしまう。
「Time Align」=タイム・アライメント・ディレイについては、よく想像されるのはギターエフェクターのディレイ(やまびこ)だと思いますが、PAシステムで使うディレイは、複数のスピーカーを離して設置する場合に「音が耳に届くまでの差をなくす」ための機能となります。
わかりやすい例でいくと、花火大会で花火が開いた後に、少し遅れてドーンと音が聞こえるというのを経験したことがあると思います。それと同じで距離の離れたスピーカーに同時に信号を送った場合、遠くにあるスピーカーから出る音は、離している距離分、遅れて耳に届くため、ダブって聞こえてしまうことになります。この時間差を調整してくれるのが今回のDelayです。
例①
サブウーファーはステージ前方、フルレンジスピーカーはステージ上に設置する場合、サブウーファーは、フルレンジスピーカーより、客席に近い位置にあるため、少し遅らせてあげる。
例②
メインのフルレンジスピーカーをステージ、客席の後ろにフルレンジスピーカーを追加で置く場合、後ろのスピーカーを遅らせてあげる。
では、さっそくJBL PRO CONNECT画面と本体画面を見ていきましょう。
① アプリ画面で「Speakers」を選択して、「モデル名(EON710)」を選択します。
「Pass Thru Settings」を選択します。
② 本体側では、「MAIN/MENUノブ」を押して、メニュー画面から「Pass Thru & Time Align」を選択します。
③ こちらがJBL PRO CONNECTの各画面です。
用意されているプリセットはFull Range、SUB、Customの3種類です。それぞれハイパスフィルター、ローパスフィルターの値が異なっているのがわかります。
④ こちらはスピーカー本体の画面です。
各パラメーターについて説明していきます。
・Pass Through
ONにすると、XLR端子から各チャンネルのミックス信号が出力されます。OFFにするとXLR端子から出力されなくなります。(Bluetooth音楽再生の音も出力されます。)
● Preset
Full Range、SUB、Customから選ぶことができます。
Full Range:出力元のスピーカーと同じ音を鳴らしたい場合
ハイパスフィルター:20Hz(出力元のスピーカーから20Hzより上の音が出る)
ローパスフィルター:20kHz(接続したスピーカーへ20kHzより下の音を送る)
SUB:サブウーファーを接続する場合
ハイパスフィルター:80Hz(出力元のスピーカーから80Hzより上の音が出る)
ローパスフィルター:80kHz(接続したサブウーファーへ80kHzより下の音を送る)
Custom:各フィルター周波数を任意に設定できます。
● High Pass Filter to this Speaker 20Hz~20kHz
出力元のスピーカーから出力される信号にハイパスフィルター(ローカット)をかけることができます。
● Low Pass Filter to Pass Thru Out 20Hz~20kHz
接続するスピーカーへ送る信号(XLRから出力する信号)にローパスフィルター(ハイカット)をかけることができます。
● Delay to this Speaker 0ms~100ms
出力元のスピーカーから出力される信号にディレイをかけて遅らせることができます。 100ms=0.1秒=約34.2m(気温18度の場合) 例)メインスピーカーよりサブウーファーが3.42m前方にある場合、サブウーファーを10ms遅らせてあげる
● Delay on Pass Thru Out 0ms~100ms
接続するスピーカーへ送る信号にディレイをかけて遅らせることができます。
● Pass Thru Level -100dB~+6dB
出力レベルを調整します。
いかがでしたでしょうか。
JBL EON700シリーズ、PRX ONE、EON ONE MKIIに搭載されている「Pass Thru & Time Align」を使えば、フルレンジスピーカーの追加やサブウーファーを使用した2ウェイシステムの構築がとても簡単にでき、さらに使用する環境に合わせて柔軟に対応することができます。音楽イベントで使用するPAシステムなら、とにかくJBLがお薦めです!!ぜひご検討ください♪