
ANTELOPE AUDIOといえばマスタークロックやオーディオインターフェイスなど、ハイエンド機のブランドという印象が強くありました。そんなANTELOPE AUDIOが、初心者からベテランまでどんな方にとっても有力な選択肢になり得る、高機能かつ手に入れやすい価格帯のオーディオインターフェイスを投入してきました!
コンパクトな筐体にどこまでANTELOPEクオリティが反映されているのか、どの程度フレキシブルな使用が可能なのか、などを検証していきたいと思います!
ANTELOPE AUDIO ( アンテロープオーディオ ) / Zen Go Synergy Core オーディオインターフェイス
INDEX
名前から見る製品の特徴
Zen Go Synergy Core、まずは名前から商品の特徴を紐解いていきます!

■ Zen
こちらはシリーズ名です。同シリーズではZen Tour Synergy Coreというハイエンドのデスクトップ・オーディオインターフェイスが存在します。
こうしたデスクトップタイプがZenシリーズとして括られています。
Zenという名前は、ANTELOPE AUDIOの社長がアジア文化に傾倒があり、日本人には馴染みの深い「禅」から来ているそうです。同じ日本文化シリーズでは他には「Satori」というモニターコントローラーなどもあります!ちなみにAmariというAD/DAコンバーターはヒンドゥー教の神様の名前から来ているそうです。
■ Go
Zenシリーズの中でも機能はシンプルに、より小型・軽量になっていることから、モバイル性の高さ、フットワークの軽さを示しています。
■ Synergy Core
FPGAとDSPチップが搭載され、コンピューターに負荷を与えることなく高品質なAntelope FXを利用できるというものです。
Zen Go Synergy Coreを入手すると無料でコンプやEQ、リバーブやアンプシミュレーターなど37種のAntelope FXが付属します。
機能面の特徴
発売当初はヘッドホンの音量が小さいことや極性が反転する問題などが報告されていましたが、現在はファームウェア・アップデートによりいずれも解消されています。
その後、現在はどのようなプロダクトとして仕上がっているのでしょうか?
本製品の機能面での特徴を見ていきましょう。
■ モニター出力で最大127dBのダイナミックレンジ
→ハイエンド機並みの数値!
■ 64-bitのAcoustically Focused Clockingテクノロジーを採用
→ANTELOPE AUDIO伝統のクロックがこの機種にも搭載されていることを示しています。
■ USB-C ケーブル 1 本だけで動作するバスパワータイプ
→これだけ多機能・ハイスペックでバスパワーというのは驚異的です。
■ スタンドアローン動作が可能
→PCなしでも起動します。この価格帯でスタンドアローン動作できるのは珍しい!これにより独立したマイクプリとしても活用できそうです。また、モバイルバッテリーでも稼働するため、フィールドレコーディングなど、電源のない環境でも稼働します。
■ 37種類のANTELOPE FXエフェクトを同梱
→エフェクト掛け録りでの録音やミックスで大活躍します!
■ ループバック機能を搭載
→配信やポッドキャストにも強力な味方となります。
■ セッションファイルのスナップショットを保存可能
→複数のAntelope FXを使い分ける場合や、配信用、音楽制作用など多様な場面を保存することでスピーディーに本題に取り掛かれます。
■ iPad Proで使用可能(サポート対象外)
→iPadに電源を供給することができるポートも付属しています!
サウンドチェック
まずは音楽を流してAD/DAコンバーターの実力をチェック。
サウンドは下から上までどの帯域も不足なくしっかり鳴らしてくれます。ダイナミックなベースから繊細なシンセサウンドまでクリアに再現します。同価格帯の製品と比べても一歩抜きん出た明瞭さです。
プリアンプはハイエンドモデルにも肉薄するクオリティで、レンジの広さもしっかり押さえつつ、アナログ的な温度感もある魅力的なサウンド。一瞬バスパワーであることを疑うようなコシのあるサウンドです。
操作部

ボタンや操作系統はDiscreteシリーズとも近い操作感で、予想以上にシンプルに作られています。
そのため、直感的に行いたい入力/出力ボリュームやモニタースピーカー/ヘッドホンのミュートなどの現場で必要な操作がスピーディーに対応できます。
インプット・ゲイン操作中にノブを長押しするとファンタム電源が有効になったり、アウトプット・ゲインの操作中にノブを長押しするとDim(所定の音量に一気に下がる)が効いたりと、ハードウェア上で必要な操作がサクッとできるのはありがたいです。
2つのヘッドホン出力

個人的にはヘッドホン出力が2つあるのがポイント高いです!
出先でレコーディングを行う場合に、オペレーターと演奏者のヘッドホン出力が別々に必要になるケースは多いので、ここから2系統送れるのは非常に便利。
もちろん2つのヘッドホンのボリュームを個別に操作できます。
その上、別系統の出力として別々のソースをモニターすることが可能です。オペレーターは全体のサウンドを俯瞰的にモニターしつつ、演奏者はクリックや必要な音だけを聞いてレコーディングする、というような場合にも簡単に設定できます。
ドラマーにクリックだけを送りたい場合などにも対応できるので、ライブなどにも重宝します。
37種のANTELOPE FX
Zen Go Synergy Coreは、他のSynergy Coreシリーズと同様、FPGAプロセッサーとDSPチップを備え、PCに負荷をかけることなく、豊富なAntelope FXを使用することができます。 これまでは録音時にエフェクトを掛け録りする用途に限られていましたが、ファームウェア・アップデートにより、Zen Go Synergy Coreもafx2dawに対応しました!これにより、DAWソフトウェアにプラグインとして挿入してエフェクトをかけることも可能です!
afx2dawプラグインは通常、オプションでの購入が必要となりますが、ただいまANTELOPE AUDIOのキャンペーンで15種の追加エフェクトバンドルと合わせてプレゼントされます!
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※11月30日まで
まずはエフェクト掛け録りを試していきます。
エフェクトをかけるまでの手順は非常に少なく、付属のミキサーソフトウェアからエフェクトを掛けたいトラックに挿入するだけ!

これでモニターの信号にエフェクトがかかります。
このままDAWソフトで録音すれば、エフェクトがかかった状態で録音されます。
ルーティングを設定することでエフェクトがかかった音とドライ音の両方を録音することもできるため、後から音色をいじれるように保険をかけておくのもおすすめです。
その際のルーティングも非常に簡単なのでご紹介します。2chのPREAMP2をPREAMP1に変更して、DAW側で1chと2ch両方とも録音するよう設定するだけ!

続いてafx2dawでのエフェクトのインサートもチェック。
こちらも前述の通り、DAWソフトウェアのプラグインとしてafx2dawを挿入するだけと非常に簡単!
通常のプラグインを使う感覚と変わりなく使えるため、微妙な音色変化を楽しむビンテージ機器のモデリングエフェクトなどは特に音作りがしやすいです。

ただし、オフラインバウンスには対応していないため、音作りが完了したら予め手動で別トラックに書き出しておく必要があります。
ループバック
Zen Go Synergy Coreでは配信などにも便利なループバック機能が付いています。
ループバック機能とは、PC上で流れるサウンドをそのまま配信に乗せたり、DAWソフトに録音することなどが可能です。
ループバック機能についての詳細はこちらをご覧ください。
関連記事『虎の巻 配信などでPC内の音も合わせて出力したい「ループバック搭載モデル」』
Zen Goを配信などで活用する場合、このループバック機能とAntelope FXの組み合わせが強力です!
例えば「歌ってみた」の配信を行う場合、ループバック機能を使ってオケを流しつつ、ボーカルには強力なAntelope FXを掛けることができます。
リバーブはもちろん、プリアンプやEQ、コンプ、果てはEdge Soloマイクがあればヴィンテージマイクのモデリングまで至れり尽くせりにボーカルサウンドを追い込むことができます。
まとめ
改めて触れてみるといろんな可能性を秘めており、とてもユニークなデバイスであると再認識しました。音質面でのクオリティの高さと、多様な機能による柔軟性がまさにシナジー(相互作用)を生み出しています。
最近ではAxino Synergy CoreというUSBマイクをリリースしており、さらに活躍するフィールドを広げています。元々はマスタークロックのトップシェアとしてプロオーディオの世界をリードしてきましたが、その歴史と確かな技術を土台に次々と新しいチャレンジを始める同メーカーから引き続き目が離せません!!