はじめての楽器購入には勇気と熱い想いがあるのだ。そんな買い物から知るパーソナリティ。馬鹿な買い物と笑うか?青春の1ページとしてほっこりするか?その買い物は大当たりだ!と羨むか?そして、その想いは新たにほしい楽器へと
第1回 ティンバレス
時は高校1年生。世の中はフュージョン・ブームで高中正義、カシオペア、プリズム、スクエアなどが人気を博していた。一方でテクノ・ブームも到来し、日本にはロックに限らず、さまざまなジャンルの音楽が芽生えていた時期だった。私はといえば、少年チャンピオンをガムテープでグルグル巻きにしたものをドラムに見立て(シンバルはZライト)、ガンガン叩いては、親に「あんたは何になりたいんだか?」と呆れられていた。そんな時、音楽をやっていた先輩がこういった。「お前、パーカッションやれよ!」よく、バンドで「俺がギターやるから、お前ベースな!」という話は聞いたことあるが、パーカッションはどうなのだろう?確かに先輩はそう言った。体育会系でなくとも先輩のいうことは絶対だった。ご丁寧にその先輩は、バイト先まで紹介してくれた。いや、先輩の働いていたバイト先なのだが。

忘れもしない初めてのバイト代は6万円だった。高校生にとっては大金だ。「いくら入った?ティンバレス買えよ!」「ティンバレス???何それ?」パーカッションといえば、あの樽みたいなやつじゃないの?(コンガの名前もまだ知らない)そして、先輩と楽器屋に。「あ、これこれ。これをください!」って何で先輩が言うのかなー。金額を見てびっくり。5万5000円!アルバイト代が一発で消える…。その前に、この楽器は何ですか?店員が親切に教えてくれた。「リムとヘッドを同時に叩いて、で、この側面も叩くところです。ここにカウベルをつけて…専用のスティックでこうやって叩きます!」カンカカカンカン!!うわーーーっ!!!!!なんてでかい音!!こうして、大きな太鼓2つとスタンドを担いで家に到着。さっそく組み立てて叩いてみた。親が飛んできた「何やってるの!うるさい!!」

先輩から課題曲が渡された。高中正義の「Blue Lagoon」だ。ティンバレスはイントロと中間に登場する。パーカッションといいつつ、そこしか出番がない。そんな私を不憫に思ったのか、先輩は言った。「お前さ、ティンバレスだけじゃつまらないだろ?来月、ボンゴ買えよ!」
今となっては型番などすっかり忘れてしまったものの、ステッカーがおまけについていたので、そこからYAMAHAのティンバレスだということは覚えている。その後、そんな珍しい楽器を持っていたことから、パーカショニストとして色々なバンドを体験。また、友人にレンタルもした。イカ天(いかすバンド天国)に友人が出演することになり、私のティンバレスもTV出演。が、結果は完奏出来ず落選。ティンバレスのせいではない。そのままバンドも解散。なぜか私のティンバレスも行方不明となってしまった。20年後、SNSでその友人と再会する。「ごめん、あの時借りていた楽器返す」変わり果てた姿でティンバレスは戻ってきた。スタンドも傾き、すでに生産中止となったアタッチメント部分は代替が利かない。仕方なく中古楽器として処分した。500円だった。買った当時の1/100の金額となった。先日、先輩にこの話をしたら、「お前に楽器を買わせたの?俺が?まったく覚えてないや!」だって。そんなもんか。
ティンバレスを購入したことによって、高いピッチの打楽器はバンド内で重要なアクセントを生むことがわかった。自分のセットにメロタムをセッティングしているのもティンバレスを叩いた経験からだ。今はそこに加えメロディックなアプローチの出来るロート・タムをセットに組み込みたいと考えている。
【ティンバレス】
PEARL(パール)/ PTE-1314SET
MEINL (マイネル)/ HT1314CH

ZENN(ゼン) / DTM1314
【ロート・タム】