キーボード編:ミュージシャンが仕事を奪われるとニュースにまでなった
『メロトロン』
オールド・ロックが大好きな方の中でも、とりわけ「プログレッシブ・ロック」というジャンルが好きな方ならば、メロトロンがどんな楽器であるか?は説明不要と思います。最近ではCDの帯や宣伝文に「メロトロン」という言葉が使われようものなら、それだけで売り上げが変わると言われるほど(ええ、大げさに書いています。正確にはマニアが買い捲っているという話です)。さて、メロトロンとはどんな楽器でしょうか?(結局、説明するのですが)。35鍵しかない鍵盤にそれぞれ3つの音色を録音したテープと再生ヘッドが付いています。鍵盤を押すと、重りが下がり、最長で8秒間だけテープに録音された音が再生される仕組みです。そのテープに記録されたサウンドでもっとも有名なのはFlute、3 Violin、男女混声8Choir。音色は録音されたものをそのまま使用しているので、テープの再生と合わせて暖かいサウンドを奏でます。一方で、録音された音はヴァイオリン奏者などの仕事を奪い、テープ作りに参加した人はその音を使われても収入にならないといった物議を醸し出し、1960年代後期、制作会社のメロトロニクス社は、録音に協力したミュージシャンに補償金を支払っています。その位、存在感のある音がします。実際には誰も失業しなかったそうです。音色の切り替えは音色のダイヤルで操作。隣同士、音の真ん中にダイヤルを合わせれば再生ヘッドも真ん中に移動し、2つの音色を同時に鳴らすことが出来ます。このように、3つの音色+中間の音色ミックス2つを選べます。単純な構造の割には、鍵盤一つ一つに再生ヘッドとテープ、重りがついているので結構な重量です。また高価ということもあり、市場からほとんど消えつつあります。ただし、その音色に魅せられたプレイヤーは、カナダのメロトロン・アーカイヴス社、およびストリートリー・エレクトロニクス社といったメーカーに特注でメロトロンを作ってもらっているようです。制作期間は年単位。

メロトロンを使った有名な曲といえば、プログレッシブ・ロックの幕開けともなったKing Crimsonの『In The Court Of Crimson King』でしょう。中でも、タイトル曲「In The Court Of Crimson King」における3 Violinsはメロトロンの存在感を大きく打ち出した名演といえます。その他にもDavid Bowie 『Space Oddity』、The Beatles『Strawberry Fields Forever』、The Rolling Stones『2000 Light Years From Home』、Genesis『Watcher Of The Skies』などなど、メロトロンを大胆に使用した名曲はたくさんあります。Genesis『Watcher Of The Skies』は前半の1/3をメロトロンによる演奏に当て、ここではBrassと8Choirのミックス・サウンドとオルガンのみの演奏で重厚なサウンドを奏でています。
メロトロンは非常に繊細な楽器のため、メンテナンスや管理が大変な楽器です。本体が暖まらないと音も不安定になり、ピッチも安定しなかったりします。アーティスト泣かせながらメロトロンの魅力は、ずばりその音が絶対無二のものだからでしょう。現在でも、形を変えメロトロン・サウンドは継承されています。特徴はコンパクト化!Digital Mellotronは本体から、鍵盤部分のみ切り取ったようなデザインです。また各社からメロトロン・サウンドの音源集はたくさん発売されていますし、アプリもあれば、ギターでメロトロン・サウンドを奏でるエフェクターも発売されています。
再現してみよう!メロトロン・サウンド!
100色の音源をマスターテープからサンプリング!なのにコンパクト!
MELLOTRON / M4000D Digital Mellotron
MELLOTRON / M4000D MINI
MELLOTRON / Micro
【音源】
MELLOTRON / M4000 Rack
【ギター・エフェクター】
ELECTRO-HARMONIX ( エレクトロハーモニックス ) / MEL9 Tape Replay Machine
ギタープレイヤーが奏でるメロトロン・サウンド