はじめに
ギター人生の中で必ず一度は見る、リアハムにフロイドローズ、極め付けに赤白黒のストライプ。僕も初めて見た時はなんだこの自己主張の塊は(いい意味で)、と思いました。
しかしそれは誰もが知っている、あのエディ・ヴァン・ヘイレン仕様のギターでした。
ロック好きの方であれば、一度は手に取ってみたいと思ったことがあるのではないでしょうか?
そんなエディが使っていた、魅力的なトーンを生み出す機材を扱うブランドがEVHです。
CharvelやJacksonと同じFender傘下のブランドで、エディのファンの方からそうでない方まで、様々なギタープレイヤーに愛用されています。
今回はそんなEVHブランドから、私が実際に使用した中でオススメしたい機材を3つ紹介します。
① EVH ( イーブイエイチ ) / EVH Frankenstein Relic Series Maple FB
このギターは有名なストライプ柄で有名なあの「フランケンシュタイン」を模した機種です。注目すべきはセンターピックアップのザグりに取り付けられたセレクタースイッチや、ダミーのフロントピックアップなど、エディーの愛機を彷彿とさせるスタイルに仕上がっています。
またこの機種はエディのトレードマークであるストライプ模様を無くし、単色でのラッカー塗装になっています。このギターであれば「人前でEVHモデルのギターを弾きたいけどあのデザインのせいでちょっと躊躇しちゃう!」と思っている方でも特に気にすることなく使用できると思います。
サウンドに関しては個人的な感想ですが、力強く抜けていくように感じました。1ボリュームでメイプルネックということもあり、ハイが削れにくい仕様になっているからでしょうか。レスポールのような太くて柔らかい音とは少し違った印象を受けました。
このギターに搭載しているピックアップは同じEVHブランドのWolfgang ハムバッカー(ブリッジ側用)で、アルニコ2、抵抗値は大体14k前半(メーカーサイトより)と特別高出力仕様ではないため、クリーンで表情をつけた音作りも可能です。

気になるところは、ボディーがラッカー塗装であったりネックが無塗装の部分が多いので、温度や湿度をかなり気にかける必要がある点です。特に夏場は湿気のせいでネックが反りやすくなったり(冬場の乾燥で反ってしまうこともありますが)、暑さで塗料が溶けてしまう可能性も考えられます。

② MXR( エムエックスアール ) / EVH 5150 Overdrive(オーバードライブ)
EVHのエフェクターといったらやっぱりコレ。マットブラックの本体にストライプが入っていて、デザイン性も抜群。おまけにスイッチをONにした時のライトも中々見やすいです。
音は初期のブラウンサウンドらしい太くザラザラした歪みで、レビューでも多くの方がおっしゃるようにクランチからリードまでこれ一台で十分なくらい歪みます。
音の質感から考えれば、オーバードライブというよりディストーションと言った方が良いかもしれません。
ツマミに関してですが、ゲインやボリュームはかなり調整の幅が効きます。しかしイコライザーはグイッと回してもそこまで大きく変わらず、極端なドンシャリのようなサウンドにするのは難しかったです。ツマミを調整した際の音の変化が全くない訳ではありませんが、別でイコライザーをかけた時のような大幅な変化はないので、味付け程度に使用することがベストではないかと感じました。
本体右端のブーストスイッチをONにすることで歪み量を増やすことができますが、変化は少なく、そもそもスイッチ自体がかなり小さいため演奏中に足で押すことは至難の業です。もしさらに歪ませたいと感じたら、別にコンプレッサーやブースターを使用することをオススメします。

ノイズゲートは設定にもよりますが少し効きが不自然に感じました。「あとちょっと音伸びるかな、、、」というところで切れるので、私は普段ほとんど使用していません。逆にクランチのカッティングなどノイズが出やすいプレイには活用できるのではないでしょうか。
裏面は写真のようにビスの頭や電池ボックスが出っ張らないようになっているので、ボードに固定する際も簡単にマジックテープを貼ることが可能です。
こういったところまで配慮されているのは本当にありがたいですよね。

③ EVH ( イーブイエイチ ) / EVH Frankenstein Humbucker
最後に紹介するのがピックアップです。このハムバッカーは、通称「フランケン」として有名なエディのかつてのメインギターに搭載されていたハムバッカーを再現したモデルです。
出力は強すぎず弱すぎず、と表したら良いでしょうか。クリーンからリードまで幅広い音作りに適している印象でした。特にどこの帯域が強いとも感じなかったです。どんなギターにも合うので、私はシンクロトレモロが載ったストラトに取り付けて使っています。先ほど紹介した5150 Overdriveとの相性も抜群です。

ヴァンヘイレンのリフは複数の音を同時に鳴らしたりアルペジオが入ってくることも多いですが、そのようなフレーズでも音の一つ一つが潰れず綺麗に響くので、ロック系の曲を演奏する方には試して頂きたいピックアップの一つです。
一つ個人的に気になったのは少しノイズが多いと感じました。しかし取り付け方や個体差などの問題が関係しているのかもしれませんので、参考程度に捉えて頂けると嬉しいです。
機材アイテムの紹介は以上です。
機材の使用例
最後に今回紹介した機材を使用したセッティングの一例を紹介します。
私のオススメはズバリ、5150 Overdrive をプリアンプ代わりにすることです!もちろん普通の歪みペダルとして使用するのも楽しいですが、EVHらしい音の質感を感じたいのであればプリアンプとして使うことが一番だと考えています。
スタジオのアンプであればリターン挿しをすれば良いと思いますが、私は作曲でギターを入れるためにDAWで音作りをしているので、Logic Proを例に紹介します。
ちなみにギターは最初に紹介した Frankenstein Relic Series を使用します。
まずは70〜80年代前半の初期のサウンドを再現してみましょう。
参考にした曲は Runnin’ with the Devil や Panama です。

5150ペダルのセッティングはこんな感じです。
音の厚みを出すためにミドルを上げ目にして、 ローをかなり落とします。ローを上げ過ぎると メタルのようなズンズンした音になってしまいます。

そしてDAWでのセッティングはこのようになっています。プラグインは全てデフォルトで入っている無料のものです。アンプは、入力した音に余計な味付けがされない Transparent Preamp というモデルを選びます。これで先程の5150ペダルをプリアンプとして使用することができます。キャビネットは Brown 4x12 です。
音の特徴は、コード弾きをしても一つ一つの音がはっきりし、ペダルの歪みの質感がエディらしさを引き立ててくれます。また5150ペダルのゲインを上げればリードにもなりますし、コーラスを掛ければ簡易的にですが90年代のEVHサウンドを作ることも可能です。サスティンが長くフロイドローズのアーミングとも相性抜群でした。
余談ですが、Wavesのテープレコーダーを再現したプラグイン「Kramer Master Tape」を挿すことで、より一層アナログ時代の温かみを持ったギターサウンドを作ることができます。
⇒ WAVES ( ウェーブス ) / Kramer Master Tape
続いてのセッティングはこんな感じです。誰の音を再現しているか当ててみてください。


ポイントは5150ペダルのセッティングがドンシャリ気味になっていることや、モダンタイプのキャビネット Modern British 4x12 を使用している点です。
さらには言われないと気付かないくらいうっすらとコーラスがかかっています。これはあくまでも歪みのチリチリした質感を抑えるためのものです。
それでは答え合わせです。
正解は柴崎浩さんの「WANDS第5期」風の音色です。モダンな音でありながら90年代の楽曲にもマッチする、不思議な魅力のあるサウンドになっています。
低音域を上げることで、低音弦でブリッジミュートをした際の重みのあるズンズンした成分を出せるようにしています。
おそらくご本人はコーラスを基本かけていません。しかし今回は無料のプラグインで、なるべくシンプルに音作りをするため使用しました。これによってエッジの効きすぎない現代的な音にすることができます。
ただ柴崎さんも、どこかのインタビュー記事でEVHアンプのモデリングを使用していると仰っていたので、全体的な音の傾向はかなり似ているのではないでしょうか。
ここまで音作りを試してみました。今回使用したプラグインの他に、配布または販売されているIRを活用して、エディとは全く違った雰囲気の音色を作ることも可能です。かなり幅広い音作りができますので、試してみるのも面白いかもしれません。
おわりに
EVH製品は個性が強いものが多いですが、その分どれも唯一無二の存在だと私は考えています。特に先ほど紹介した5150 Overdriveは、ブラウンサウンドを再現したいエディのファンの方にはもの凄くオススメです。
きっと新しい刺激になると思いますので、興味を持ったらぜひ一度でいいのでEVH製品を手に取ってみてください。
ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
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