前回PART1 ではボディ表面のモディファイを試みた。今回はボディ裏側のパーツの交換を試みたいと思う。
モディファイのプロフェッショナルも力説するが、改良は一気に欲張らず、一つひとつ換えていこう。また、取り上げる商品全部を換えなくても一つ換えるだけで効果がはっきり出る場合がある。
では、トレモロユニットのモディファイで一番行われている交換から紹介する。
トレモロスプリング
今から15年程前にRAW VINTAGEからスプリングのリプレイスメント製品がサドルと同時発売された。これは当時インパクトがあった。低コストで音が変わったからである。着眼点も良かった。
スプリングやサドルのパッケージ裏の説明が説得力ある文章なので一読の価値あり。交換する判断基準に一役買ってくれる。
個人的にスプリングをフェンダーのデフォルトから換えた感想を、取り付けた直後に箇条書きしておいたメモが手元に残っているので、そのまま記載する。
- 新品の弦を張ったキラキラ感が蘇る
- まろやかな音色
- 柔らかいコードの響き
- 優しいトーンになるため激しい音楽には向かないかも?
- 100Wの真空管アンプにつなぐと重低音がアップして迫力満点
抜群にコストパフォーマンスが良いが、激しいリフを刻むようなギタリストには必要ないかもしれない。繊細な響きなので、綺麗なトーンを求めるギタリストに向いているだろう。
素材のスプリングがとても柔らかく交換は容易だ。工具を使わなくても素手で本数を加減出来ると思うが、初心者は慎重に行うことをお勧めする。手先を怪我するかもしれないし、ギターも傷つけかねない。
柔らかいと言うことはテンションが弱いので、4本または5本張るようメーカーは推奨している。アームを使う人は4本張りが適当であると思われる。
他のメーカーもトレモロスプリングを発売しているが、VINTAGE SOUNDに関してはRAW VINTAGEが一番ポピュラー。
フェンダー純正
FENDER ( フェンダー ) / American Vintage Tremolo Tension Springs (Package of 5)
一番ポピュラー
RAW VINTAGE ( ロウビンテージ ) / RVTS-1 トレモロスプリング
個人的にシングル向けと思われる
ESP ( イーエスピー ) / TREMOLO TONE SPRINGS Type-1
同じく個人的にハムバッカー向けと思われる
ESP ( イーエスピー ) / TREMOLO TONE SPRINGS Type-2
ゴトーのスタンダード・タイプ
他のメーカー品もあり。サウンドハウスのサイトを要チェック!

ボディ上面から見るとRAW VINTAGE のサドルを載せていることがわかるだろう。トレモロブロックを固定するスクリュー3点以外はノンオリジナル。
トレモロブロック
私が初めて改良したパーツ。1990年代に雑誌で幾度となく紹介された。パーツとしては高価で、国産エフェクターの歪み系が買える価格であったが、冒険する価値はありそうだった。
サドルを外さないと出来ない面倒なモディファイだが、確かに音は変わった。微妙な変化だがコードを弾いた音像が上品に美しく変化した。
デフォルトのフェンダーオリジナルとカラハムブロックを動画で比較したところ、フェンダーは明るく元気ある音、カラハムは倍音が美しく綺麗な余韻(サスティーン)が、あった。
トレモロスプリングと同様、LOUDな音楽には向かないかもしれない。ただし50w以上の大型真空管アンプで 5f、7f、12f のハーモニックス音を出した後の倍音の美しさは、特筆すべきものがある。コードの響きも変わるので、試してみる価値はあるだろう。
トレモロブロックの素材は鉄だけではなく、チタンなどもあるが、基本は硬いスチールだ。米国ではチタン製を通信販売などで供給している所を以前確認したが、国内では知る限り見かけない。高額になるとは思うが国内販売を期待したい。ちなみにフロイドローズにはFU-TONE社からチタン製トレモロブロックがサウンドハウスからも発売されている。

米国の雑誌広告。チタン製リプレイスメント・トレモロブロック。スチールとは違う魅力がありそうだ。
PART1 でも触れたが、ストラトキャスターの開発にあたり最後に完成したパーツとして語り継がれている。ストラトキャスター開発1stバージョンはサスティーンがまったく無く、レオ・フェンダーはそれまでのトレモロユニットを全部処分した。(出典:米国誌「THE Feder STRATOCASTER」)それらの詳細な記録は日本にも入っていなく、1stバージョンのストラトキャスターのトレモロユニットの写真等は同じく存在しない。
ただトレモロスプリングを3本しか張っていない個体のプロトタイプの写真は、確認されている。(出典:リチャード・スミス著「FENDER」)
トレモロブロックの発想は、レオの一生涯の中で一番難航した仕事の一つとして挙げられるかもしれない。70年を経ても色褪せないギター界の偉業といえる。
1stバージョンから僅かな時間でトレモロユニットを完成させたのは、レオ・フェンダーだけではなく、開発チームの叡知の賜物といえる。
私は それを考えたら、やはり良いものを取り付けたくなった。
フェンダー純正
FENDER ( フェンダー ) / Pure Vintage Stratocaster Tremolo Block
カラハム製
CALLAHAM ( カラハム ) / Vintage Repro Enhanced Tremolo Blocks
トレモロハンガー
まさかこのパーツまで?と言われそうだ。しかし海外メーカーから信じられない程高価な商品が発売されている。素材は知る限りチタンと真鍮だが私は前者を選んだ。
当初、簡単な取り付けと思ったが『大きな壁』が待ち受けていた。
私は低出力の半田ごてしか所有していなかったため、ある楽器店の店員に頼んだ。彼女は半田ごてを扱えたが、チタンに半田がのらない。仕舞いにアース線を短くカットしてさらに作業を進めようとした。
しかし、結局チタンに半田がのらなかった。
そして行きつけのリペア店に行き、店主は悩み悩んで普通では思いつかない方法で見事にリペアは成功した。
この製品にアース線を着ける時は、中央の引っ掻ける所につける事。私の様なトラブルを招かないように!メーカーのパッケージにも注意書きは特に無い。このパーツを着けるギタリストなら知っていて当たり前なのだろうか?
効果はトレモロハンガースクリューの記述のあとに説明する。
チタン製
FU-Tone ( エフユートーン ) / Titan Claw
真鍮製
FU-Tone ( エフユートーン ) / Brass Claw
トレモロハンガースクリュー
これも、ネジ2本でこの値段?と言われそうだ。確かにホームセンターに行けば真鍮のネジ2本くらい数百円で買えるかも知れない。だが、トレモロユニットのサイズに合わせた太さや長さ、ネジ山の切り方を考慮すると、性能も含めて『アリ』かと思う。
FU-Tone ( エフユートーン ) / Claw Springs Brass Screws (2)
トレモロハンガーと共にギターの弦振動がボディにダイレクトに伝わる最終地点だ。音に関係しない訳がない。
モディファイ結果。
サスティーンの大幅な向上。エフェクターを使った音の伸びとは一味違う自然な音。
コストはかかったが、換えてみて、確実に音が変わったパーツと言える。
ただし、価格も音の伸びの音色の効果も上級者向け。
真鍮は暖かみがプラスされ、サスティーンはチタンより控えめなはずだが、トレモロハンガーのどちらを選ぶかは直感で決めてみては?
以上 PART1、PART2に渡ってシンクロナイズドトレモロユニットのパーツ交換を試みた。ギタリストにより音の嗜好は千差万別なので、一ヶ所もしくは数ヶ所換えるだけで充分だと言う声もあるだろう。
ただメーカーが価格を度外視してまで開発し、発売している現状は理解しておいた方が良いと思う。それなりの効果があると思うからだ。
私はメインギターのトレモロユニットのモディファイを、10年以上かけてコツコツと行った。時間もコストもかかったが、とても楽しい体験と満足感を得ることが出来た。シンクロナイズド・トレモロユニットのパーツを換えると、ここまで音色が変化するとは当初、思わなかった。
まるでブティック・アンプの真空管をヴィンテージ製品に変える程の発見があり、エフェクターを使うのと同じくくらい、はっきりとした効果がわかるパーツもあった。
メインで弾いているストラトキャスターは、ネック・ボディ材そしてネジ25本、ジャック・プレート、配線、一部の半田以外交換した。
また機会があったらこのようなモディファイも紹介したいと思っている。

ボディバックから見たトレモロユニット。5本のスプリングは他社を混ぜたりする事を検討中。アーム使用時は4本張りにする。
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