サウンドハウスがストックする膨大なピックアップから、個人的にもおすすめなストラトタイプのギターに搭載できるピックアップを6個挙げたい。
まずは基本から。
1. セイモア・ダンカン / SSL-1
フェンダーの1950年代の音を狙った 原点回帰の製品。『シングルコイルとは如何に?』というシンプル極まりない、ダンカンからの回答だ。
素直でクセがなくプレイヤーの音を忠実に拾う。
ずいぶん昔、中古楽器店で1954年製ストラトキャスターが、なんと45万円で売られていた。全体が濃い茶色に変色しており状態はそれほど良くなかったが、それでも安かった。
店員に「何故そんなに安いのですか?」と聞いたら、「ピックアップがSSL-1に替えてあるから。」といわれた。しかしそれだけ元オーナーもSSL-1を認めていた証拠と思われる。
2. フェンダー / Texas Special(テキサス・スペシャル)
比較的安価でロックしたいならこれ。特にクランチのザクザクした音色は白眉。
それでいて音は暴れる事なくコントロールできるので音作りはしやすい。バランスの良い音で中域のパワーも特筆すべき物がある。
メイプル指板なら荒々しく、ローズ指板なら粘る。ストラトタイプでパワーと歪みを求めるなら最適。
左が5万円のフェンダー・ジャパンに付いていたピックアップ、右は断線してワイヤーを剥いだテキサス・スペシャル



3. LACE / Sensor Gold
レース・センサーは1980年代末に登場し、エリック・クラプトン、ジェフ・ベックらが自らのシグネイチャー・モデルに搭載して有名になった。
磁界が通常のマグネットよりはるかに強いのでピッキング・ニュアンスがマイルド。
ノイズも少なめ。
泣きのフレーズや繊細なフィンガリングには最適で、リッチー・ブラックモアは1995年の来日時、これをつけていた。初めてレインボーのライブを観た友達が「今までの御大のサウンドの中で一番良かった」と言っていたほどだ。
ルックスは基本白く、全体がカバーで覆われており個性的。『御大』は白ローズのストラトにマジックで黒く塗っていたという、微笑ましい逸話もある。
ゴールドの他に幾つかバリエーションがあり、それぞれパワーが異なる。
4. セイモア・ダンカン / SSL-7T
姉妹機SSL-4のスタッガード・ポールピース仕様の物。「4」はフラット・ポールピースでパワー全開のハムバッカー並みの強力ピックアップだ。「7」はシングルコイルの音が混じる。歪ませた時、音にザクザク感があるのが「4」との大きな違いだ。ロックする幅広い層に受け入れられるだろう。
5. EMG / SA
アクティブ・ピックアップの代表格であり80年代に発売された。アクティブ・ピックアップは電源(原則として9V電池)を使う。
※ボディサイズによっては無加工では取付できずキャビティを掘り下げる必要がある。
まず、ノイズが少ない。シングルコイルの弱点を見事にクリアしている。
次に音色が極めてクリーンでクセがないように感じる。エフェクターとの相性も抜群であろう。TOTOのスティーブ・ルカサー(彼はカスタム仕様)のようなキレのあるレンジの広い歪みから、スラッシュ・メタルまでカバーする万能選手。
自然さや素朴さはあまりなく、アクティブ・ピックアップ特有の綿密に作られた音だ。
ブルース音楽特有のマディな音と対局にある現代的な音。
6. ビル・ローレンス L-250
(クリーム 他色あり)
これは厳密にいえばスタックタイプのハムバッカーであるが、ストラトタイプに改造する事なくマウントできるので特別に挙げておく。
ビル・ローレンスはセイモア・ダンカンとならんでリプレイスメント・ビックアップ業界の重鎮。創業者は既に他界しているが、相変わらずコアなファンが多いブランド。
中でもこのピックアップはビルの代表作。
他の製品と違うのは、刃物の様なマグネット。このブランドのオリジナルである。
では何が他のピックアップと違うか?
チョーキングのデッドポイントがないのだ。普通チョーキングをすると、マグネットを2つ以上またぐ。その際デッドポイントがどうしても生まれ、一瞬音が痩せる。
そこにビルは目をつけて、ブレードタイプのマグネットを思いついたのだ。
この形のフルサイズ・ハムバッカーL-500も根強い人気があり、ベテランではエアロスミスのジョー・ペリー、スコーピオンズのマティヤス・ヤプスが使用している。
ツウ好みの、中域に特徴あるピックアップと言えよう。
以上、6種のピックアップを紹介した。昔は リプレイスメント・ピックアップといえばセイモア・ダンカン、ディマジオほか数社しか海外メーカーはなかった。現代では大手メーカー、多種少量生産のメーカー、個人経営のハンドワイアリング工房が混在し、多数のメーカーが存在する。
私のメインギターには、個人工房で製作された受注生産の手巻きシングルコイルピックアップが付いている。激しい曲を弾き続ける限り、このピックアップでいきたい。
個人でもピックアップ交換はできるだろうが、半田ごてになれていない人はプロに任せた方が良いだろう。
ワイヤーを断線してしまう、固定するネジがあわない、セレクタースイッチの半田付けが判らなくなるなどのトラブルを私自身も経験してきたからプロに任せている。
シングルコイルは激しいロックに向かないと一般に認識されているが、ギターの仕様、改良、アンプ・エフェクターなどの機材次第で問題はクリアできると思う。ギターの材やパーツ全体のトータルバランスで音は決まるからだ。
自分の好きな音を見つける、ピックアップを探す旅をしよう。
「お気に入りのピックアップが見つかったらあまり交換しない事」と米国Gibsonの研修を受けた楽器店のお偉いさんが仰っていた。
音の旅が一旦終わるまでは色々試そう。一番変化の判るパーツだから。
以上
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