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シンセサイザー鍵盤狂漂流記 その118 ~ジェフ・ベック偉大なるギターインストの創造者Ⅱ~

2023-01-23

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 音楽全般

ジェフ・ベック…巨星墜つ

ギタリストであり作曲家だった、ジェフ・ベックさん(以下、敬称略)が2023年1月10日お亡くなりになりました。享年78。心より、ご冥福をお祈り申し上げます。
前回は私とジェフ・ベックの出会いとジェフの記念碑的アルバム「ブロウ・バイブロウ」を鍵盤屋からの目線で書かせていただきました。
偉大なギタリストであるジェフ・ベックはある種、孤高のギタリストであり、70年代後半の音楽への向き合い方は時代を切り開くエポックになったと確信をしています。ジェフの音楽への取り組みは歴史的名盤なる必然があったと私は考えています。

ギタリストが異なるギタリスト?を呼んだ背景

ジェフ・ベックは新たなアルバムを創造する際に面白いことを考えました。それは新しいギタリストの参加でした。
卓越した演奏力を持つジェフ・ベックはギター2本を軸にしたアンサンブルを考えました。ギタリストと言っても只のギタリストではありません。ジェフが声を掛けたのはギターの音を出すキーボーディストでした。その名はヤン・ハマー。ヤン・ハマーはシンセサイザーでギターそっくりな演奏をする稀有な能力を持ち合わせていました。
ヤン・ハマーはチェコ出身の音楽家でジェフと演奏する前はジャズギタリスト、ジョン・マフラグリン率いる電気ジャズバンド、マハビシュヌオーケストラのメンバーでした。
ジェフは自身のギターとヤン・ハマーの弾くギターライクなシンセサイザーという構成でギターバトルを展開するという突拍子もないことを考えていたのです。
新しい音楽が生まれる種はジェフからの発案でした。

■ 推薦アルバム:ジェフ・ベック『ワイアード』(1976年)

この手の音楽は当時クロスオーバーというジャンルに属するものだった。所謂、フュージョンのはしりと表現してもいいのかもしれない。ジェフ・ベックはそういう先進性を持ち合わせたミュージシャンだった。本人の持つ高度な技術がそうさせたという背景があるのかもしれない。
アルバム『ワイアード』はロックとジャズの融和を図り、これまでにない演奏形態を導入した。彼の音楽家としての慧眼あっての産物だ。
このアルバム最大のエポックはキーボーディスト、ヤン・ハマーの参加である。ヤン・ハマーはシンセサイザーでギターそっくりな音を出すことができる。演奏を一聴するとどちらがギターでどちらがシンセサイザーなのか殆ど分からない。
ハマーはミニモーグシンセサイザーに付いた音程を上下させる2つのホイールを巧妙に使い、ギターのチョーキングやビブラートをシミュレーションする奏法を最初に考案した。これまでにもハマー同様にミニモーグによる音のベンディング効果を取り入れるキーボーディストはいたが、ハマー程ギター演奏に近付いたプレイヤーはいなかった。
ヤン・ハマーが在籍した電気ジャズバンド、マハビシュヌオーケストラのライブではギタリスト、ジョン・マフラグリンと壮絶なギターバトル?を繰り広げている。
ジェフ・ベックはヤン・ハマーに声を掛け、ハマーをジャズからロックというリスナーの多いジャンルに引き上げた。ロックというジャンルで大衆性を獲得するにはヤン・ハマーのギター的シンセサイザーサウンドのノウハウが必要だったのだ。しかもハマーはロックではなくジャズの素養が強いミュージシャンだ。このノウハウもジェフには必要なものだった。
そういう意味でジャズ由来の音楽の創造はヤン・ハマー経由でもたらされたというのは想像に難くない。事実、このアルバムでもチャールズ・ミンガスの名曲「グッバイ・ポークパイハット」を取り上げている。
ロックよりでありながらジャズ的要素が含まれた、これまでにないギター的シンセサイザーサウンドが注入された音楽はスリリングであり、ジェフのプレイスタイルと親和性が高かった。そしてそのサウンドは多くのジェフファンを喜ばせた。ジェフが創造した新しい音楽はフュージョン時代の幕開けを告げる記念碑的アルバムとなった。ジェフの先進性が奏功したのだ。

推薦曲:「レッドブーツ」

ジェフ・ベックお得意のリフ構成による楽曲。先鋭的なリフの上をジェフのアドリブが炸裂し、それに呼応するかの様にヤン・ハマーのギターライクなミニモーグが唸りを上げる。
意識して聴けばジェフとハマーの音質の違いやチョーキングビブラートの具合が微妙に違うため、どちらのソロかは理解できるが、最初に聴いた時には開いた口が塞がらなかった。
ジェフはこのアルバムに際し、ジェフのフレーズやチョーキング法を完全コピーして臨んだと言われている。フレーズが似ているのだ。また、そこにハマー流のギターフレーズも入れ込んでいる。
また、レッドブーツのドラムはヤン・ハマーが叩いている。キーボードの扱いもさることながら、この手のドラムプレイができるということに驚かずにはいられない。

推薦曲:「ブルーウィンド」

レッドブーツ同様にジェフ・ベック印のリフで構成される楽曲。冒頭のヤン・ハマーによるシンセ音はポリフォニックシンセサイザーと目されるが、音的にはオーバーハイムと思われる。リフを奏でるブリブリしたキター的シンセ音がカッコイイ。最初にギターのアドリブかと思わせるソロがあるが、実はシンセ。スピーカー右側がジェフのギターで左側がハマーのシンセ。バッキングもジェフがソロをとっている時にはハマー、ハマーがソロをしている時にはジェフが交互にバッキングをしている。
諸説あるがヤン・ハマーはミニモーグだけでなくオーバーハイムのSEMシンセサイザーと同期をさせ野太い音を作っている。また、シンセ音にはテープエコーがかけられ、フランジャーも使われている様に聴こえる。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲

  • アーティスト:ジェフ・ベック、ヤン・ハマー
  • アルバム:「ワイアード」
  • 曲名:「レッドブーツ」「ブルーウィンド」

⇨ MOOG/ピアノ/シンセサイザー 一覧

⇨ ジェフ・ベック・シグネチャーモデル


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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

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