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Rock’n Me 24 洋楽を語ろう:ピノ・パラディーノ

2022-08-12

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 音楽全般

こんにちは。洋楽を語りたがるジョシュアです。
第24回目は、ベーシストのピノ・パラディーノPino Palladinoについて語ります。彼のことを一行で表すと「どんな時代でも、どんなジャンルでも、フレットがあってもなくても、最高級のベーシスト」です。まずはその豪華なディスコグラフィ。1980~90年代ならばポール・ヤング、エリック・クラプトン、ドン・ヘンリー、フィル・コリンズ、デイヴィッド・ギルモアにジェフ・ベック、2000~2010年代ならばディアンジェロ、ザ・フー、ジョン・メイヤー、最近ではアデル、ハリー・スタイルズにエド・シーラン…と、どんな音楽でも最高級の演奏を提供するベーシストです。

(Wikipediaより画像引用)

ピノは、1957年にイギリスのカーディフ市に生まれました。14歳でギターを、17歳でベースを始め、その1年後にはフレットレス・ベースを操っていました。音楽活動のため拠点をロンドンに移し、イギリスのシンガー、ポール・ヤングのバンドメンバーとして抜擢されました。ポール・ヤングの大ヒット曲"Everytime You Go Away(エヴリタイム・ユー・ゴー・アウェイ)"(1985年)では、ポールの歌声のみならず、ピノが弾いたフレットレスのミュージックマン・スティングレイ・ベースが話題を集めました。歌モノとは思えないほど手数が多く、しかし歌を全く邪魔せずにメロディックなベースラインを奏でたことで、ピノは世界中のアーティストたちから依頼を受ける人気セッション・ミュージシャンとなりました。

■ ポール・ヤング "Everytime You Go Away"

この曲が収録されたアルバム『The Secret of Association(シークレット・オヴ・アソシエーション)』にはもう1曲、"I’m Gonna Tear Your Playhouse Down"というベーシスト必聴曲があります。一見シンセ・ベースに聴こえますが、これもやはりピノが弾いています。どうやってこんなサウンド?と思いきや、ボスのオクターバー(Boss OC-2)とチューブ・コンプレッサーを用いたと、昔のインタビューで読んだ記憶があります。後奏のベース・ソロをしっかりアップしているライヴ動画を見つけました。

■ ポール・ヤング "I’m Gonna Tear Your Playhouse Down (ベース・ソロ)"

超人気セッション・ベーシストとなったピノは、エルトン・ジョン、デイヴィッド・ギルモア、エリック・クラプトンなど超大物アーティストたちのアルバムで名演を残すようになりました。例を挙げるとキリがありませんが、フィル・コリンズの"I Wish It Would Rain Down(雨にお願い:1989年)"やドン・ヘンリーの"New York Minute (ニューヨーク・ミニット:1989年)"は、ともに「歌うフレットレス・ベース」の見本となるようなバラードです。なお前者には、エリック・クラプトンがレコーディングとプロモーション・ビデオでゲスト参加していますが、プロモーション・ビデオにピノの姿はなく、リーランド・スカラーが出演しています。

■ フィル・コリンズ "I Wish It Would Rain Down"

アップテンポの曲ではどうかというと、ピート・タウンゼントがザ・フー解散後に発表したソロ・アルバム"Give Blood"(1985年『White City: A Novel』収録)で、とんでもないテクニックを披露しています。ちなみに、ギターはデイヴィッド・ギルモア、ドラムはサイモン・フィリップスという豪華絢爛な曲です。そして、当時の共演がご縁となり、後のザ・フー加入につながります。

■ ピート・タウンゼント "Give Blood"

1990年代にはフラットワウンド弦を張ったフレット付きフェンダー・プレシジョン・ベースを持つことが多くなり、活動の幅もさらに広がりました。ネオ・ソウル・シンガーのディアンジェロの2作目(『Voodoo』、2000年)では、地を這うようなゆったりとしたテンポの中、間を重視した重みのあるベースを弾いて、ソウル系でも引っ張りだこになりました。

■ ディアンジェロ"Chicken Grease"

ピノに転機が訪れたのは2002年です。6月27日、ザ・フーのベーシストであるジョン・エントウィッスルが急逝しました。全米ツアーを翌日に控えたタイミングでしたが、バンドはツアーを決行することにし、ピートがピノを急遽呼び寄せました。7月1日にツアーを開始し、それ以降、ザ・フーのツアー・メンバーとしての生活が始まりました。しかしそれだけでは終わりません。ジョン・メイヤーとスティーヴ・ジョーダンと意気投合し、ジョン・メイヤー・トリオとしてアルバムを残した他、ジョン・メイヤーのレコーディングとツアーに参加するようになりました。次の動画はジミ・ヘンドリックスのカバーで、トリオ編成で暴れまくっています。

■ ジョン・メイヤー "Wait Until Tomorrow"

ピノのマルチタスクぶりにはいつも驚かされます。ザ・フーとジョン・メイヤーを掛け持ちし、ジェフ・ベックやナイン・インチ・ネイルズのツアーに参加し、アデルやエド・シーランのレコーディングにも参加して、どれだけ活動すれば済むのか…。新型コロナウイルス感染症のパンデミック後もギアを徐々に上げてきていて、今年はジョン・メイヤーやブレイク・ミルズとのユニットでツアーを再開しました。感染状況がもう少し改善すれば、ぜひまた来日して、唯一無二のベースを聴かせてもらいたいです。


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ジョシュア

1960年以降の洋楽について分かりやすく、かつマニアックに語っていきます。 1978~84年に米国在住、洋楽で育ちました。2003~5年に再度渡米、コンサート三昧の日々でした。会場でのセットリスト収集癖があります。ギター・ベース歴は長いものの永遠の初級者です。ドラム・オルガンに憧れますが、全く弾けません。トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズに関するメールマガジン『Depot Street』で、別名義で寄稿しています。
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