ここから本文です

FENDER STRATOCASTER 1954ー1982 Part3

2022-01-14

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」

今回は【1959年製と1960年製のストラトキャスター】について述べたい。1959年にはボディ材と同じ位に重要な変更がある。それは・・・指板材の変更だ。指板=ネックはギターのサウンドを決める重要なパーツだ。

何故なら★ヘッドからブリッジサドル、★ネックジョイント部からボディエンドのエンドピンまで弦の長さを比較してみたら、ヘッドからブリッジサドルの方が弦に関わる長さが圧倒的にある。

1959年のフェンダーカタログの表紙、ジャズマスターのアップが一面になった事は以前の記事または写真で述べた。ネックがローズ指板で表紙を独占したのが、事の発端だ。
ジャズマスターはストラトより先にローズ指板を採用して、じわじわと人気が出てきた。ユーザーの声からも「ストラトキャスターもそろそろ仕様変更を!」と迫られた。

【スラブボードのストラトキャスター誕生】である。現代の音楽シーンにおいても最強のストラトだ。

1950年代末期、メイプル材ワンピース指板からスラブ指板に変更した理由は主に2つある、

ひとつはメイプルネックの指板が剥げて汚れて来た、と言われてきたからだ。現代においては故意に傷を付けて使用感たっぷりにする事がファッショナブルだが・・・。

2つ目にローズ指板の方が高級感があるとの声が広がり始めた。確かに茶色~濃いハカランダ指板(下記参照)にスリー・トーン・サンバーストは、お洒落な組み合わせだろう。赤と黒のコントラストはエネルギッシュで美しい。ゴールドパーツも映えると思う。

一般に、テレキャスターはメイプル指板の人気が高く、またストラトキャスターはローズ指板の方に人気があるようだ。スラブ指板の使用ギタリストでレジェンド級のギタリストと言えば、数多挙げられるが、1990年代以降のライブにおいてストラトをメインに多用してきたジェフ・ベック、ロリーギャラガーの極限まで塗装が剥がれたストラトが印象深い。

フェンダー社は1959年後半にストラトのメイプルワンピース指板からスラブ指板に移行した。【スラブ】とは【厚い】という意味だ。

サウンドはまさしく【ロックな音!!】

ザクザクとしたリフを刻み、人間の情感をたっぷりと包んだメローな旋律、粘る開放弦。ストラトの良いところづくし。

またヘッド部のテンションピン取り付けネジに鉄製スペーサーが入る。ネックの削り出しが変わった為だろうか?見た目からは、テンションはオリジナルより押さえ方が弱くなると判断する。

電装系のピックガードの止めネジが8点から11点に変わる。また稀に10点仕様も存在する。

ピックガードは今でも根強い人気の、通称『ミント・グリーン・ピックガード』。これもローズ指板の人気を後押ししている。ボディの茶色とピックガードの淡緑は奥ゆかしさがあり、絶妙なコンビネーションだ。

ではなぜ人気のピックガードが廃止されたか?それは次回述べる事にしよう。

トレモロ・スプリング・カバーは材質の変更がなく、変色は無いと言って良い。

ピックガード裏は1959年製末期からノイズ対策を万全にする為、全面シールド仕様になる。それまではコントロール系に少しだけシールディングが施してあるだけだった。コントロールキャビティ内は11点止めに仕様変更したので、正面右から下へ5本目のスクリューを付けるためにキャビティにアルダーボディ材の出っ張りがある。

コンデンサーはポッティングなしの見た目は青と白の爽やかな色だ。現代でもルックスに人気がある為かレプリカが存在する。この54年製からのコンデンサーは1960年で終了して以降、円形の薄くて、くすんだ赤色のセラミック・コンデンサーとなる。

指板はブラジリアン・ローズウッド。かなり固くて瞬発力がありそうだ。通称【ハカランダ】。現在においてはワシントン条約で国際間取引が禁止されており、鼈甲と同じく『入手が原則不可能である。』

トラスロッドも指板上から仕込むためネック裏のスカンクストライプが普通無いが、スカンクストライプ仕様も存在する。

表からはヘッドのナット上辺りに見た目が蒲鉾みたいに、たっぷりと指板が接着されている。『ここから【スラブ指板】と数年後の仕様【ラウンド指板】の判別が容易に可能。生産年代が容易に判る部分』

トラスロッドの仕込みも表からに変更して、ブラウン・エッグは無くなる。

カラーは基本的にスリー・トーン・サンバースト。初期ボディ塗装の赤色は太陽の光で赤みがほとんど消えた。フェンダー社は屋上で様々なアルダー材に赤い塗料を塗っては日光にあてて、対策を急いだ。

その後、1961年に赤みを失わない塗料に変更された。メイプルよりはローズ指板、2トーン・サンバーストよりは3トーンサンバーストの方が現在では人気があるようだ。

本体の重さもそれほど重くなく、まさに【円熟したストラトキャスター】と言えよう。

コンターは浅からず深からず。アッシュよりは加工が楽だったはずなので目的は達成されている。通常使用するにあたり、演奏性に不満な点は無いだろう。

もし、今現在、工場を仕切っていたレオ・フェンダーや専属販売会社『フェンダー・セールス』社長だった、ドン・ランドール、事務作業を任されていたフォレスト・ホワイトが生きていていたなら、この三人で絶対に現在の会社の悪いところを刷新出来たであろう。

最近フェンダー・カスタムショップ製ギターの価格が非常に高い!高過ぎる。レオの【誰でも気軽に手に入れる事が出来て、音の良さも保証する、更にメインテナンスがしやすい】と言う信念が現在無い。

しかし 、フェンダーセールス社長ドン・ランドールとレオはいつも対立していた。その間にフォレスト・ホワイトが入り、かなり苦労したと語っている。もしフォレストがいなかったら、ストラトの初めての注文記録は無かった・・・。と言って良い。

このドンとフォレストの2人がレオと関わりがなかったら、ここまで大きな会社にならなかったはずだ。

フォレスト・ホワイトの仕事は事務、電話応対、社員の指導など多岐にわたった。まさしく縁の下の力持ちだった。

フェンダーは個性的で優秀な人材が多く集まった『ミラクルな会社』だった。フォレストはフェンダー社を離れてからも楽器業界で活躍した。

画像:2007年フェンダーカスタムショップカタログより

二枚とも有名過ぎて、コメントは不要だろうが。初めて見る方に一応説明する。

このジェフ・ベックのギターは一般のストラトとは違う点が二つある。 ひとつはシンクロナイズドトレモロが二点支持になっており、オリジナルよりも正確な音がキープしやすい。微妙なビブラートをかけやすく、ジェフは弾きながら右手に収めてアーミングをコントロールしている。アームの長さはそれほど長くなく、50年代オリジナルに近い。

もうひとつはナットがプラスチックでも牛骨でもなく金属製である事。時代にもよるがローラーの上を弦が動き、ナットの引っ掛かりが改善されておりスムーズだ。

このストラトを弾くジェフの素晴らしい映像音源がある。2008年ロニー・スコッツ・ライブだ。ストラトをここまで使いこなすのはジェフしかいない。カメラワークも良く、手元のアップが満載で、ため息がでる程の映像だ。

もし、レオ・フェンダーが生きていたらジェフ・ベックのファンになったかもしれない。歳を重ねるごとに神業が光るジェフも【ミラクルなギタリスト】だ。

また、レオは以前述べてきたかも知れないが、ジミ・ヘンドリックスの演奏を恐らく好まなかったはずだ。特にトレモロ・アームの使い方。人間、年をとるに従い、新しいものを受け入れなくなる傾向があるため、レオが聴き込む音楽に限界があったと思われる。

もう一枚のスラブ指板ストラトはロリーギャラガーの愛機。

晩年の塗装と比べたらいかに弾き込んでいるかわかるはず。手荒に扱ったからボロボロになった訳ではなく、盗難に遭って雨の中、公園で発見されたと、随分昔に楽器店での会話を聞いたが真実か?

次回は、円熟したストラトキャスターのその後、ラウンド指板について述べたい。ミント・ピックガードの廃止の理由など紆余曲折な仕様変更になる。


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
投稿についての詳細はこちら

Realize

リッチーブラックモアのアルバム『Diffcult to Cure』の『第9』アレンジを聴いてファンになり、『Spotlight Kid』を聴いてストラトキャスターに目覚める。以後様々なストラトを手にし、20年以上ストラトオンリーで毎月ライブ活動を行っている。
ストラトに対するこだわりは強く、『ギターマガジン』、米国誌『VINTAGE GUITAR MAGAZINE』に所有ストラトが掲載されたことがある。翻訳書として、2002年Fender Accessories Catalogue等に掲載されている『The Fender Stratocaster』第4版がある。
ストラトへの改良は外見からみたら何処を変えたかわからないのがポリシーである。

 
 
 
サウンドマートスキル出品を探す サウンドナビアフィリエイト記事を書く

カテゴリーから探す

翻訳記事

ブログカレンダー

2025年4月

  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30

ブランドから探す

ブランド一覧を見る
FACEBOOK LINE YouTube X Instagram TikTok