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大海の孤島を捜して~ATLANSIA~ Part1

2022-12-19

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 楽器

ATLANSIAそれは“大海の孤島”。 荒波に流されるかもしれない小さな島。
しかし、孤軍奮闘!常に斬新なものづくりに挑戦する創造大陸です。
目指すは壮大なギターロマンの世界です。 N.Hayashi

───ATLANSIA 創造大陸からのメッセージ より引用

~List of ATLANSIA Guitars~

Eden
Galaxy
Oscar
Otapman
Pegasus
Peleske
Peleske 2
Pentagone
Stealth
Stroke
The Century
Victoria
技多郎(a.k.a. Solitaire)

~List of ATLANSIA Basses~

Alien
Baroque
Bohemian
Breeze(a.k.a.Zipang)
Concord
Corint
Dualist
Fortune
Galaxy
Garland
Jupiter
Leonore
Oscar
Oxford
Pegasus
Pentagone
Solitaire
Sophia
Stealth
The Century
Trister
Victoria

~List of ABALONE Instruments~

Abalone 4st Bass
Abalone Model T-1

~Profile~

Cheena:一度Pegasusの姿を知ってからそれだけを求めるようになってしまった。それ以外にはVictoriaやSophia、Oxfordが好き。 Pegasusのコピーや再デザインをよくするが、ATLANSIAは模倣を嫌うのだ…
→ Cheenaの記事一覧

ネモト:子どもの頃、成田の楽器屋にあったVictoriaを見てからずっと気になっているメーカー。Galaxy、Pegasus等好きなモデルは多いが、本気で欲しいのはフレットレスのVictoria。
→ ネモトの記事一覧

~Part 1 Contents~

  1. 1 - What is ATLANSIA?
  2. 2 - VICTORIA Bass
  3. 3 - PEGASUS Bass
  4. 4 - ATLANSIA Pickups
  5. 5 - OXFORD Bass
  6. 6 - SOLITAIRE, DUALIST & TRISTER Basses

Cheena:さて……始まってしまいましたね。

ネモト:ああ…我々が愛するATLANSIA(アトランシア)の記事だ…。読者を置いてけぼりにしそうだ。

1 - What is ATLANSIA?

Cheena:まず軽くそれ自体の説明もしておきましょう。
代表の林信秋(はやし のぶあき)氏はマツモトギターやAriaなどで楽器デザインを手掛けたのち、1978年に独立、林信秋ギター工房(現:アトランシア)を設立。
他社の模倣を良しとせず、独自デザイン・特殊機能を持つ楽器を多数発表しオーダーメイドで販売しています。
その楽器はネックの太さ・強靭さにおいて有名ですが、30mmに迫るネックの厚みと同時に指板が非常に丸いことも特徴で、たとえばGarlandやPegasusでは50-100Rコンパウンド、ConcordやVictoriaなどでは120-180Rコンパウンドとなっています。一般に丸いと言われるビンテージジャズべやジャズマスの184Rと比較するとその異質さが伝わるでしょうか……逆に、多弦系がメインですが、4弦でも300-400Rコンパウンドなどを採用するものもあります。レスポール(305R)より平たい。

また、ペグを除くパーツの殆どがオリジナルパーツであることも特徴で、独立型ブリッジや各弦独立ピックアップ、ジャックマウント、ノブに至るまでがこだわりを持ってデザインされています。
氏のデザインした楽器で有名なのはやはりAria PEシリーズやSBシリーズ、あるいはアトランシアのOxfordベースでしょうか…現在もPEシリーズのヘッドには「Designed & Approved By H.Noble」とあります。

※H.Noble……「林 信秋」のもじり。

ネモト:有名なモデルは確かにその辺りだと思う。
追記すると、今の評価は知りませんが少なくとも15年前は国産最高峰との呼び声高いブランドでした。元々あまり見ないのですが、最近は滅多に見かけなくなりました。

Cheena:新規製造数も絞っているようで…。現状完全オリジナルの受注はなく、アトランシアデザインのものはおそらくオーダーが入れば作ってくれると思います。Facebookにも時々更新がありますね。

ネモト:Victoria欲しいけど、いつ出てくるかわからない中古を狙うよりもオーダーした方がいいんだろうな。こないだ某サイトでフレッテッドのVictoriaを見かけてから物欲が…。
Fodera欲しいからお金貯めてるんだけど、Victoriaに変えてもいいかもしれない。

Cheena:Foderaは弾数がありますからね。少なくともAtlansiaよりはよく見かける……

2 - VICTORIA Bass

Cheena:ネモトさんの言うVictoriaはこのデザインのものです。

ボディにマホガニーやパドゥク、ウォルナットを採用するこのタイプはAlembicに近い印象がありますね。

ネモト:デザインについては個人的にカールトンプソンを感じる。アレンビックと似通った部分はあるからまあ当たり前か…。
※カール・トンプソン
レオ・フェンダーに並ぶくらい後世に影響を与えたと勝手に思っているビルダー。ヴィニー・フォデラ、ケン・スミス、ロン・ウィッカーシャム(アレンビックの創業者)が師事。他にもカールの工房出身ビルダーは多い。ベース界のストラディバリウスと呼ばれ、緻密なウッドワークが特徴だが、弟子の方が有名…。

Cheena:機体の仕様としては、基本的にアクティブ3BandEQ搭載であり、2PUの場合はバランサーが追加されます。更に、2ホールシンラインの場合はFホール内部にノブが来るという設計になっていますね。
ちなみにボディエンドに見える黒い物はゴム製の緩衝材で、ケースに入れて立てた時や落とした時の保護に役立つそうです。ガーランドにも採用されていたかな。

ネモト:Fホール内部にノブがあるのは見慣れないよね。ここらにも独自性が見える。
Victoriaにもいろんな仕様があるけど、今はL900(弦長900mm、非独立ブリッジ)が一番気になっているので作ってくれるのか問い合わせ中。実物を見たことがないので、見てから問い合わせるべきかと思うけどものがない…。
※追記。
L900は廃盤とのことです。じっくり焦らず中古を探すことにします…。

Cheena:900mmは約35.5inchといったところで、スーパーロングスケールより少し長い程度なので弦の選択をミスると張れないような事態が発生しますね。アトランシアのブリッジは表通し専用なので大丈夫ではありますが……
私達のような高身長族(2人とも身長180オーバーです)には頼もしい弦長でもあります。

ネモト:読者諸兄姉、今は大抵の弦が裏通し対応だから34インチ表記でもほとんど大丈夫ですけど、A社の激安弦はダメだった(裏通しだと長さが足りなかった)ので注意…。私は長いスケールの方が音に張りが出るから(特に低域)好きだし、フレット間が多少広いからハイフレットも弾きやすいと思う。手が小さい方は「1フレットに指1本」から「3フレットに指4本(人差し指、中指・薬指、小指)」に変えれば対応できると思います。
最近見たソリッドボディ、パッシブのVictoria結構カッコ良かったし、Victoriaの話は延々とできるけど、やるわけにはいかないから違うモデルの話にしましょか…。

Cheena:Pegasus、行っていいですか?

ネモト:行こうか。愛が爆発する。

3 - PEGASUS Bass

Cheena:ベースでは4弦〜6弦、ギターでは6弦がラインナップされているPegasusですが、見た目にも機能にも特徴的な部分として

  • 長いホーン
  • リストレストの配置
  • 特殊なコントロールの配置
  • 分割されたボディ

などがあります。
特にノブ類は他の楽器には見ないような場所(ネックエンド付近左側)になっており、この場所からネックポケットの底に掘られた溝を介して配線しています。説明するより写真で見てもらった方が早いですね…

精悍、強靭、優美、といった感じの形容が似合います。
パッシブは1Vol1Bal、アクティブは1Vol3EQ1Balが基本のようですが、カスタムオーダー品を見てみると別のノブがあったり色々しています。というか写真のものはどれもToneを増設した3ノブですね。

ネモト:独特だよね。
私は長いホーンとネックから生まれるすらりとしたデザインがとても好き。ボディが分割してないバージョンもあるけど、私はそっちの方が好きかな。角っぽさは薄くなるけど。

Cheena:カッタウェイが深いのでネックが長く見えるんですね。ボディ分割はダボで接続されている場合、ボルト留めになっている場合、と2種類あるそうですが後者は写真での確認ができていません。

ネモト:ボルト留めのバージョンがあるのを初めて知った…。
Pegasusは多弦でL900化したらもっとカッコいいと思うんだよ、無いけど…。

Cheena:ギター版を所有する方がやっているブログに「ピックアップキャビティからボルトで留めている」という話が載っていました。スプリングハンガーみたく斜めに打つのは難しいと思うし、どうやってるか全く不明なので話半分に…
L900は私が試すしかないですね。5弦でやってみたいところです。

ネモト:事前にボディ、ホーン双方の接続箇所にネジ穴を開けて、合わせた後にオフセットドライバーで締めれば出来そうな気がする。でも、PUキャビティからってめっちゃ遠いよね…。コントロールキャビティかな?ネジ留めってことはホーンを換えられるようにしようとしたのかな。

L900化、めっちゃ面白そうだから待ってるよ。

Cheena:オフセットドライバーでなくても六角レンチならまあ大丈夫ですね。とはいえわざわざ強度も音質も劣る(といっても、振動伝達上クリティカルな部分ではないですが)のに接着していない理由とすればやはり交換でしょう…
※追記
ボルトは接着剤充填で固定されているとのことです。ソースは現所有者様のTwitterのため割愛。

さて、プロフィールで書いた通り私はこれを何度も模倣しているんですが、ここで幾つか紹介しておきましょう。

実際に作った方はあまりにも似つかないというか、粗悪品としか言いようの無い出来になっているので出せません。確実に言えるのは分割型ホーンの合わせを手作業で作るのは非常に面倒ということです…テンプレート作ってもトリマではズレるので、CNC使わないと厳しい。

ネモト:真っ直ぐじゃないからねぇ…。

4 - ATLANSIA Pickups

ネモト:PUはARC(各弦独立型PU)の直列でフロントはスラントの仕様が全体的に好きなんだけど(見た目的に)そっちはどう?

Cheena:ARCが弦ごとに3つ積まれたやつ、あれは6弦なのと相まった異形で好きですよ。普通のソープバー2基もいいですけどね。
以下独自研究が絡みますが、アトランシアのソープバーは恐らく幅1.5inch、天面は指板Rに合わせてあるものだと思います。また、ピックアップのATLANSIAロゴは僅かに落とし込み加工を行った部分に金文字または白文字を入れています。
無論市販品で同じ仕様のものはないため(Atlansia Parts Shopにもありません)自作時に似たものを使用するとしたら一般的なソープバーになるでしょうね…

ネモト:3つ積まれてるやつあったね、確かに異形っぽさが強い。天面にRがついたソープバーは珍しくなってきたなあ。昔のバルトリーニにもあったのよ。

Cheena:なめらかで好きなんですけどね。変形ソープバーとしてはClassic Washburnと並んで好きかもしれない。そのぐらいです。

ネモト:アトランシアにはシングルPUもあるのにほとんど見かけないなと今気づいた。マイナーだよね。

Cheena:格安機として据えられているAbaloneでもソープバーですからね……Stealthの2スラントシングル機が公式サイトに載っていて、それがほぼ唯一の例だと思います。あとはギター。

ネモト:ジュピターにも乗ってるよ。大体はソープバーだけど。
次はあれか…。オックスフォードの話をしようかな。

5 - OXFORD Bass

スケルトンのケースに収まった切り出し小刀みたいですね。なかなかとんでもない見た目。弦はフレームにマウントされていて、ネックには一切テンションがかかっていないから絶対反らないという触れ込み。理論上の矛盾はないですね(実際は気温、湿度の変化で少しは反るんじゃないかと予想。木は生き物)マジで買おうとしたモデルです。在庫がなかったし中古もなかったしで買えなかったけど。

Cheena:スタビライザーベースの最終進化系、みたいなものと捉えてください。語るところは色々ありますが見落としがちなのはこれがヘッドレスであることと、ネックジョイントのボルトが「1本」ということですね。どうやって…?
ちなみにハードケースが付属する唯一のモデルでもあります。
浪漫楽器と呼んでなお余る格がありますが、合理性の極みでもあるので機能美の楽器なのかな……

※スタビライザー……ヘッドとボディを繋ぐネック以外の構造体。一般的にはホーンを延長したような形状になる。Roland G-77やWishbass製の大型ベースなどが有名。

ネモト:ボルト1本でジョイントって凄まじいね。こういうところが我々のような者を惹きつけるんだけどさ…。昔から疑問だったけど、これ座奏できるのかな?ストラップピンの位置は自在に変えられるので立奏は問題ないと思うけど。

Cheena:写真で見る限りアリミゾ式でもなさそうなので、とにかく深く狭いジョイントで安定するようにしてるんでしょう…きっと。座奏に関しては以前脱着可能だか開閉式だかのラップレスト?があると聞いたのでちゃんと探してきます。

※アリミゾ……正式名称Arimizo & One Point Joint。Freedom C.G.R.が開発したジョイント方式。ネックポケットとネックエンドが底広がりの台形になっており、ボルトが無くてもネックが保持されるため、締め込みトルクによる音質変化、そしてジョイントプレートの交換による音質変化を積極的に活用できる。

Freedom C.G.R.公式ページ

ネモト

ATLANSIA公式ページ

調べてみたら確かにあった。このパーツはなんと言うべきか。

Cheena:No.115、サポーター”JU-BA”(ジャバ)となっていますね。

同様のパーツを持つSteinbergerはフォールディング・レッグ・レストと呼んでいますが……

ネモト:レッグレストがしっくりくる。わかりやすい。

Cheena:そういうパーツですからね。これ(サポーター)、クラシカルスタイルで構える時にも使えるんだろうか……

ネモト:さぁ…。取り付け位置を変更できるらしいからいけるんじゃないの?(適当)
実物を見てみたいな。レアリティの高さ半端ないけど。

Cheena:幾ら検索しても写真が3種類しか出てこないので、世界に3機しか存在しないのではないかと割と真面目に疑っています。
ARSピックアップが4基のもの、16基のもの、それにギターサイズハムと思われるものが2基載ったもの、これ以外のOxfordに関する情報をお持ちの方は私かネモトさんまでご一報ください……

ネモト:よろしくお願いします…。
後で問い合わせてみようかな。1本くらい工場の倉庫に保管してありそうな感じしない?

Cheena:します。すごく。

ネモト:だよね。楽器屋を通してきちんと問い合わせてみよう。もしあったらどうしようか、いや、よっぽどとんでもない値段じゃないなら買うしかないか…。

Cheena:さてそろそろ次に行きましょうか。Oxfordだけで進むのは……

ネモト:そうね…。次はあれか。少弦ベースの話でもする?あれもアトランシアって感じがする。

6 - SOLITAIRE, DUALIST & TRISTER Basses

Cheena:Solitaire, Dualist, Tristerですね。楽器としての必要最低限の要素を抽出したかのような存在……

最後のものは25.5inchスケールのミニベースだそうです。Solitaireではないですがインレイがよく見えるので追加しました。

ネモト:面白いよね。以前2弦ユーザーにインタビューして、A-Eとかありがちなやつにすると4弦使えばいいじゃん?って言われるから違うチューニングにしてるって答えていた。チューニングは何にする?私ならE-Gとかかな…?

Cheena:2弦だったらG-Cですかね。理由は特にないですけど……
ちなみにアトランシア少弦シリーズの見どころは直径5mmのサイドインレイです。でかい。

ネモト:5mmはデカいね(一般的なサイズは3mm)少弦専用モデルの他に2弦コンコードもあった。

Cheena:2弦Stealthもありますね。

ネモト:しかしまあ、弦1本でもちゃんと楽器として成立するようにデザインされているのはすごいなあ…。

Cheena:一歩間違えたら棒というか、まあTristerですら十分「棒」なんですが棒に留まらないというか。ホーンにテーパーが掛かっているのが重要なんですかね……

ネモト:重要だと思う。あとはブリッジやPUといった各種パーツが結構凝ってるというかしっかり作られてるのもあるかな…。

Cheena:それ以外のモデルにも採用されている独立型ブリッジ、1弦ピックアップ、がそのまま使用されていますからね。フェルナンデスがコピーするとかいう話を小耳に挟みましたがここら辺がうまいことコピーされるかどうかが懸案点。

ネモト:フェルナンデスがコピーするんだ。初耳。
早速調べてみたらもう販売されてるのね。
既製品っぽいブリッジやペグ(ヘッドレス用のペグ&ブリッジではない)にリップスティックPUを縦置き。なかなか上手くできてると感じる。
ただ、本家は11万に対してフェルナンデスは7万。価格差を考慮したら本家を買うと思う。

Cheena:まあそうですよね……さてそろそろ次に行きますか?

ネモト:そうしましょうか。毛色を変えてギターの話でもしましょうか。本来ベースのメーカーだから少ないよね。

Cheena:ギターパートいいですね、しかしデザインとかの話始めるとかなり長くなっちゃう気がするんですけどこのまま続けます?

ネモト:いや、ここで一区切りとしましょう。

Cheena:そうしますか。Part2をお楽しみに!

※画像はATLANSIA公式サイト公式Facebookより引用

⇒ 大海の孤島を捜して~ATLANSIA~ PartII


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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C&N Crafthouse

元プロでベーシストのネモトとクラフトマンでベーシストのCheenaによる、楽器への深すぎて自由すぎるこだわりトークをお送りします!
→ Cheenaの記事一覧
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