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シンセサイザー鍵盤狂 漂流記 ~日本を代表するギタリスト渡辺香津美さん取材記Ⅱ~ その78 

2022-05-30

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」

私のミュージシャン取材記!~日本ナンバーワンギタリスト渡辺香津美さんと福田進一さんのアコースティックデュオ~

前回の鍵盤狂漂流記はジャズギタリスト渡辺香津美さんとクラッシックギタリストの福田進一さんの取材記を途中まで記しました。
今回は二人のプロミュージシャンのリハーサル風景の様子とインタビューを中心にお送りします。素敵なインタビューですよ!

渡辺香津美さんと福田進一さんのリハで音の違いにビックリ!

二人のリハーサルの前に大切な事が1つあります。コンサートホールなど大きな会場では舞台監督という方がいます。その方に挨拶…仁義を切っておかないと大変なことになります。私はコンサート会場でそのことを知らずにカメラを回し、取材をしていたら、えらくどやされた記憶があります。舞台監督、「ブカン」には気を付けろというのは我々取材する者の常識です。

カメラを回していて気付きました。かたやジャズギタリスト、かたやクラッシックギタリスト…二人の出す音は全く違っていました。出す音も違うのですが、音楽へのアプローチの仕方が全く違っています。音は出ているのですが、英語と日本語位の差を私は感じました。渡辺さんの音は私の聴き慣れている渡辺香津美のギター的な言葉で奏でられていました。一方の福田進一さんのギターは初めて聴くので少し戸惑いました。メロディーの捉え方がとても大きく、音が浪々としているのです。リズムのノリも渡辺さんとは全く異なる音楽がそこに存在していました。

渡辺香津美さんと福田進一さんのリハで福田さんに怒られました(涙)

TVカメラは基本、肩に担いで撮影します。担いだ方が急な動きにも対応しやすく、取材者としてのリアクションが取りやすいからです。しかし、肩に担いで撮影すると取材対象者はカメラが回っていることを強く意識しますし、撮影者とファインダーの位置が同じなので取材対象は撮影者と目が合うことになります。そうなれば自然な様子が撮影できなくなります。いくら演奏のプロだといっても、近くでカメラが回っていては気が散ります。
我々は撮影する際にワイド系のレンズで撮影するので撮影者と取材対象の距離は70センチ位です。しかも、音を生かしながらの撮影ですから、カメラは止めず撮影者はゆっくり動きながらの撮影になります。言葉は悪いですが、かなり鬱陶しいと思います。
渡辺さんはドキュメンタリー撮影の現場も慣れているようで、あまり気にする様子はなかったのですが、福田さんはそうではありませんでした。私は福田さんに怒られてしまいました。もっとしっかりと断りを入れておくべきだったと反省しました。

私は肩にはカメラを担がず、腰の高さで撮影しました。そうすると取材対象は撮影者をあまり意識しないで済みます。

インタビュー内容は・・・「音楽や音をどの様に捉えているのか?」

撮影に慣れたところで二人にインタビューをしました。インタビューでは二人の音楽アプローチへの違いが明らかになりました。

○ 福田進一さんインタビュー

「作曲家と聴衆をつなぐのが演奏家の役割。これはクラッシックの大前提」
「渡辺さんと演奏して楽しいのは渡辺さんから繰り出される不意打ちを、いかにかわすかということ。自分自身の精神的自在性が問われると思っている」(福田)

○ 渡辺香津美さんインタビュー

「同じ曲でもメロディーをどういったアプローチで弾くのかが肝要。フェイクしたりすればより、ジャズ的なものになったりする」
(実際、渡辺さんは楽曲中でウエス・モンゴメリー的なオクターブ奏法を多用していました)
「音楽や音は夢だったり、旅だったり、音でしか出せない色彩だったり匂いだったりするもの…」(渡辺)

私は渡辺さんのお答えになった最後のフレーズに見事にやられました。この言葉こそがミュージシャン、渡辺香津美が出す音であり、音楽なのです。
この時に渡辺香津美さんの懐の深さを垣間見る想いがしました。

テレビニュースや番組などではインタビューで終わることを嫌います。しかし、今回の鍵盤狂漂流記の〆(シメ)は渡辺香津美さんの素晴らしい内容のインタビューで終わりとします。

■ 推薦アルバム:渡辺香津美『ロートスナイト』(2010年)

渡辺香津美の傑作アルバム「トチカ」から30年を経て邂逅を果たしたマイク・マイニエリ(Vib)とウォーレン・バーンハート(Pf)3人によるライブ。
マイニエリの2曲の他、「枯葉」「星影のステラ」のスタンダード曲とバーデン・パウエルのボサノバ名曲「ビリンバウ」などが演奏されている。
私の渡辺香津美さん取材からは15年程の時が流れています。楽曲の色彩感や3人が醸し出すジャズの匂いを感じてもらえればと思います。とにかく渡辺香津美、ウォーレン・バーンハート、マイク・マイニエリのアドリブが美しすぎます。

推薦曲:『ビリンバウ』

特にバーデン・パウエルの楽曲、「ビリンバウ」におけるサビからのウォーレン・バーンハートのアドリブは秀逸!円熟した渡辺香津美のプレイも見事の一言。

推薦曲:『星影のステラ』

イントロのピアノからメロディを歌うヴァイブ…4ビートであるものの、かなりフェイクされたリズムにより展開されるステラ。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲

  • アーティスト:渡辺香津美、ウォーレン・バーンハート、マイク・マイニエリ
  • アルバム:「ロートスナイト」
  • 曲名:「ビリンバウ」「星影のステラ」

⇨ SOUND HOUSE ピアノ/シンセサイザー 一覧


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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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