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シンセサイザー鍵盤狂 漂流記 ~音楽を彩った電気鍵盤たちとシンセ名盤の数々~ その59

2021-12-30

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」

ハモンドオルガンの名プレイヤーと数々の名盤特集 パートⅤ ジャズ編  ラリー・ゴールディングス特集とクリスマスパーティ 最高ソロ

今回の鍵盤狂漂流記はオルガンの名機と云われるハモンドオルガンのちょっとロックでジャズな名盤とジャジーなクリスマスアルバムから素晴らしいオルガンソロの入ったトラックをご紹介差し上げます。両方共、素敵なアルバムでハモンドの魅力に溢れています。とかく、ハモンドオルガンと云うと、黒人プレイヤーが想起されますが、2枚とも黒人プレイヤーではなく、白人プレイヤーによるアルバムです。

■ 推薦アルバム:バリアス アーティスト『ジャズ クリスマスパーティ』(1997年)

ジャズクリスマスパーティと銘打っただけあり、ポップでジャズなトラックが並んでい ます。以前紹介したマイケル・フランクスの楽曲やカーク・ウェイラム(SAX)とオルガニスト、ラリー・ゴールディングスによるトラック、「ベツレヘムのゆりかご」は秀逸です。

推薦曲:カーク・ウェイラム「Cradle in Bethlehem」

素敵なクリスマスムードたっぷりな名曲。ラリー・ゴールディングスはスティーブ・ガット(Dr)やメシオ・パーカー(SAX)、ジェームス・テイラー(Vo)、ジョン・スコフィールド(G)など著名ミュージシャンと共演をしています。これまで聴いたオルガンソロのベストはと問われた時、私はこの「ベツレヘムのゆりかご」を挙げる!と云いたくなるほどの素晴らしいソロです。メロディアスでエモーショナル。長いソロではありませんが、曲間のソロパートでは群を抜いています。必聴です!

■ 推薦アルバム:グレッグ・マティソン・プロジェクト『The Baked Potato Super Live!』(1982年)

グレッグ・マティソンは1950年生まれのロスアンジェルスのキーボードプレイヤー、作曲家、プロデューサー。ジャズからポップス 、ロックまで、幅広いテリトリーで活躍をしています。1978年にラリー ・カールトンの出世作、「ルーム335」を含むアルバム、「夜の彷徨」でキーボード、アレンジを務め、その名を広めることになりました。また、ドナ・サマーのヒット曲、「マッカーサー・パーク」でもキーボードやアレンジを担当し、エアプレイのボーカリスト、トミー・ファンダーバーグのソロアルバムも手掛けるなど、売れっ子キーボーディストの1人です。
数年前にはソロアルバムもリリースしています。このアルバムはオルガン中心の楽曲ではありませんが、西海岸の風を感じるアルバムに仕上がっています。
今回のアルバムは1ロスアンジェルスのライブハウス、「ベイクド・ポテト」でのライブ。
グレッグ・マティソンとTOTOのスティーヴ・ルカサー(g)、ジェフ・ポーカロ(ds)、クルセイダーズのベイシスト、ロバート・‘ポップス’・ポップウェル(b)とのセッションが記録されています。プロデューサーはエアプレイのギタリスト、ジェイ・グレイドン!が担当。面子から云っても申し分の無いライブアルバムです。
しかし、「ベイクド・ポテト」で録音されたこのアルバムはアメリカではリリースされていません。ミュージシャン達がリリースを良しとしなかったなどと噂が飛び交いました。
スタジオ業務に飽きたミュージシャンが自分達の好きな音楽をやっているという、リラックス感の強いアルバムである一方、彼らの実力を知ることができます。
ラフなライブアルバムではありますが、当時の若手ミュージシャン達が何を志向していたかが分かり、私のとても好きなアルバムです。
アルバムジャケットは2種類あり、私が最初に購入したレコードは左側のジャケットでしたが、その後CD化された時のジャケットは右側。また、最近では左側のジャケットに変更された様です。右側は凡庸で左側の方が素敵ですね。

推薦曲:「Thank you」

ライブ録音でダビングもされていないことから(ライブといっても現場での音以外にスタジオでオーバーダビングする場合もある)4人の音の隙間が印象的な楽曲。
グレッグがプレイするのはハモンドオルガンとミニモーグシンセサイザーのみ。とはいえ、その音の薄さというかスカスカな感じがいかにもライブハウスで、いい演奏を聴いているという気持ちにさせてくれます。
グレッグのミニモーグのソロもしっかりと歌っている。モーグのソロの際はハモンドでバッキングもしていない。ロック的なソロかと思いきや、ジャズのメソッドも散見され、聴いていて好感が持てる。構成もミニモーグの歌わせ方も素晴らしいと思います。 ルカサーのツボを押さえたギターバッキングも秀逸。

推薦曲:「Ⅰ don’t know」

グレッグ・マティソンのハモンドの刻みから始まり、モーグがテーマを奏でる。この位の曲のスピードがスティーブ・ポーカロのタイト感も強調でき、気持ちのいい4人のグルーブを感じます。グレッグのハモンドソロは抑制されたもので、特に早弾きもしないが、メロディーを意識した飽きのこないソロ構成も見事です。レスリーの回転操作を含め、百戦錬磨な仕事人の余裕を感じることができます。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、 推薦曲、使用鍵盤

  • アーティスト:グレッグ・マティソン、ラリー・ゴールディングス
  • アルバム:「The Baked Potato Super Live!」「ジャズ・クリスマスパーティ」
  • 曲名:「Thank you」「Ⅰ don’t know」「Cradle in Bethlehem」
  • 使用機材:ハモンドB-3オルガン、ミニモーグシンセサイザー

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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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