
Cheena:年末も近づいて参りました。楽器も大掃除といきましょう。
注:この記事内でのクリーニング方式はあくまで私たちの好む処理であり、「こうしなくてはならない」「これ以外はない」というものではありません。
〜プロフィール〜
Cheena:いつも魔改造に実験ばかりだと思われていますが他人の楽器はちゃんとクリーニング&調整しています。
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ネモト:カネがないから工夫してやってきたのでクリーニングはそこそこ経験あります。
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ネモト:一言でクリーニングと言ってもそれを行う楽器の状態(汚れ方、塗装、年代、素材)によって手段や注意点は大きく異なります。
なので今回は最初にお題を出して、それをクリーニングするならこうする、というふうに進めます。
最初は「普段使いしているポリ塗装の楽器(ビンテージは除外)」でやりたいと思います。一番よくあるやつですね。
Cheena:塗膜が安定なこともありアプローチは様々。普段使いならそこまで埃も溜まらないだろうし、皮脂が取れるかが勝負になりますね。
ネモト:それじゃ私のやり方を。
用意するのは固く絞った濡れタオルと乾いたタオルとクリーニングクロス。濡れタオルで丁寧に拭いて、乾いたタオルで水気を取って、クリーニングクロスで拭きあげ。ケミカル類を使わず超安上がり。しつこい汚れでない限りこれで十分ですよ。塗装も選ばないし。水ではなくてぬるま湯の方が洗浄効果は高いと思う。
水気のあるうちに拭くのがポイント。乾いてしまうとなかなか跡が消えないからね…。
拭きあげに使うクロスはセーム革を使ってる。
Cheena:水垢は精製水使えば出ませんけど、500ml100円ぐらいなのがネックですかね。
手早く済ませたいとか数をこなすとかいう時には不向きかも。そういうときは最後の1回2回だけ精製水でやればいいですね。
かくいう私は管楽器用ファイバークロスとシルバークロスを使います。YAMAHAのシルバークロスは大判でも安く、ラッカー相手なら染みた薬液が油脂程度なら拭き取ってくれますね。
YAMAHA ( ヤマハ ) / PCDXL3 ポリシングクロDX Lサイズ
YAMAHA ( ヤマハ ) / シルバークロス SVCL2
※今の所塗装に問題が出た例はありませんが目的外使用なので自己責任で。あくまで金属ラッカー仕上げ用クロスなので木質系ニトロセルロースラッカーに向いているかどうかもわかりません。
ネモト:言われてみると確かに。同時にたくさん頼まれた事がなかったから盲点になってた…。
シルバークロスは超便利だね。教えてもらってから愛用してる。
Cheena:あとは刷毛ですかね。100円のでもいいので持っておくとピックアップとかブリッジ周りの埃取りが捗ります。
大塚刷毛製造株式会社 ( オオツカハケセイゾウ ) / プラグレ 筋違 50mm
ネモト:刷毛は私も使ってる。先が硬めの方が使いやすいかな。
次にいきましょうか。
「物置に数年放置されていたと思われるギター。リサイクルショップで1000円」
改造の素体として買うやつだ。
Cheena:「数年放置」から初心者が諦めたもの、「ショップで1000円」から格安系だと考えられます。となるとこちらもウレタンですかね…
謎汚れやら錆やら出てるはずなので金属磨きとコンパウンドでやります。もっとも改造の際にリフィニッシュするからクリーニングせずに剥ぐこともありますけどね。
ネモト:私の場合はパーツ全部外して台所用中性洗剤とブラシとスポンジで丸洗い。組み直すの面倒だけど汚れがよく落ちる。細かいところの埃を綺麗に落とせるし。
金属パーツや洗剤で落ちない汚れはピカールやスチールウールで磨く。ピカールはボディに使っても結構な効果がある(金属用研磨剤なので自己責任)
ちなみにここでいうピカールは液体タイプです。練りだと削れすぎてしまうかもしれない。
Cheena:洗剤もいいですよね。ピカールは灯油ベースなので中性洗剤やアルコールで油分を取ることになります。
そうそう、タバコ臭はアルコールで結構取れますよ。ヤニは洗剤で格闘する羽目になりますけど……
ネモト:タバコ臭がする楽器は最近少なくなってきてて、スモーカーが減ってるのを感じる。
次にいきましょう。
「1970年代に製造されたポリ塗装のジャパンビンテージ」
60年代は少なくなってきたけど70年代はまだまだその辺にあるよね。
Cheena:こりゃ微妙に大変だ…でも基本は精製水とキムワイプでいっちゃいますかね。
とはいえポリウレタンは経年で加水分解しやすいポリマーなので状況によりライターオイルで洗浄するかもしれません…
ネモト:私はとりあえずアリアのSB-8(ポリッシュ)を使うかな。
大分前にメンテナンスキット的なものを買った時に入っていて、そのころから長年使ってる。洗浄効果は特筆するほどのものはないけど安いし。
経験から言うと70年代のヤマハとトーカイとグレコとアリアはピカール使っても余裕なくらい頑丈な塗膜を維持してるのもあったりする。フェルナンデスだとまだそういう個体に出会ったことはない。アイバニーズは70年代のものに触ったことがないw
Cheena:流石の日本製…
ネモト:マジで頑丈だよね。塗装被膜が厚いのなんの。
ヨーロッパでは高温多湿の街に持っていっても動かないからアメリカ製より人気があるとか。
次は「シールを沢山貼ってあるギター。シールへのダメージは極力少なくする。ある程度の傷や剥がれは容認。シール全体の脱色や剥がれはダメ」
段々難しくなってきた。
めっちゃ今更だけど「細かいキズをワックスで誤魔化す」は可能とします。
Cheena:シール貼ったギターって汚れはともかく傷は味みたいに思われてるものが多い気がするんですよね…
というわけで私はライターオイルと綿棒で細かく汚れ落とし、もし塗膜に糊が載っている(シールを剥がした跡が見えている)
ならシール剥がしをピンポイントで乗せて取ります。大きく取れる場所はマスキングテープを貼って一気に汚れごと剥がします。
正直に言ってしまうとシールの上から塗装載せてガチガチに固定したいぐらいですが…
ネモト:「磨いてたらシールが浮いたのか傷ついたのか、とにかくベタベタして不快だからなんとかして。シールは剥がすなよ」と若い頃に言われたことがあってなぁ…。
その時はシール以外を丁寧に清掃して、シールは簡単にマスキングしてワックス塗った後クルミ油かなんかでコートした覚えがある。何使ったかはうろ覚え…。
Cheena:そりゃまた随分な難題ですね。逆に許可取ってシール全部剥がしてラミネートとかでもいいかもしれないですけど…
ネモト:その手があったか…。気づかなかった。
Cheena:まあ見た目は変わってしまうし大変だし、シール保護の観点からならアクリルトップとかにしてほしい所です。
さて次行きますか、何が良いかな…
ネモト:よし。
「製造から5年経ったラッカー塗装。オーナーはラッカー塗装にケミカルを使うことに抵抗がある」
でいこう。つまりそこそこ汚れているけど塗装そのものの状態は悪くないってこと。こういう人結構いるよね。
Cheena:ポリッシュ禁止ですか。ケミカルの定義はどうします?
ネモト:ケミカルの定義か。
読者の方々のためにも「楽器用」の文字がついたポリッシュ、ワックス、クリーナー等にしますか。
ライターオイルのように100均で売ってるものも可としとこう。
私の場合
TURTLE WAX ( タートルワックス ) / Scratch & Swirl Remover
これを使うことが多いかな。テストは必要だけどね。
Cheena:私なら…ニトロセルロースならアルコールが溶媒にならないのでこれ。逆にアクリル系にアルコールは禁忌だからなぁ…ヘキサンが主成分のライターオイルで処理…いや危ないか……テストの時間がなければ全部精製水で格闘します。
※アクリルの細かいヒビからアルコールは浸透し、曇りや割れの原因になります。最近Zuweyなるメーカーからアクリルギター・ベースが格安で販売されていますが、分厚いこちらも同じくです。
ネモト:水でやるのは正しいけど、できれば柔らかくなってないならポリッシュやクリーナーでやりたいところ。柔らかいともうそんなのできない…。
Cheena:すぐ剥がれたり侵食されたりしますからね…ラッカーは苦手です。
ネモト:こないだ買ったGibson SB-400(71年製)にはこれを買って使う予定。どんなもんか楽しみ。
Lizard Spit ( リザードスピット ) / MP08/V.I.Polish
Cheena:良さそうなポリッシュですね。しかし凄い見た目と名前だ…Lizard Spit(爬虫類の唾液)にアメリカでよく見る飾り付きでポップな書体。不思議ですらある。
ネモト:アメリカは基本的に派手好きでよく言えば合理的、悪く言えばアバウトなイメージ。アメリカ人の車の買い方なんかは特にそう思う。
次行こうか。 「オイルフィニッシュ」 シンプル。
Cheena:ワックス&ポリッシュですかね…Ken Smithあたりので。
KEN SMITH ( ケンスミス ) / CLASSIC WAX POLISH
布に取ったワックスをはんだごて近づけるとかヒートガンで熱するとかして柔らかくしてから一気に拭いていくのが楽な気がします。
ネモト:私は水拭きしてからアヒル印のAX-WAX。
私がワックス等を施工する時はゴム手袋をはめて、手袋にワックスを取って丹念に塗ってからクロスで拭きあげる感じかな。ストラップピンの周りとかクロスだと上手くできない場合が多いもんだからこんなスタイルになった。
Cheena:手袋楽そうですね。埃取り用手袋なんか使うのも手段のひとつか…
ネモト:使い終わったらそのままゴミ箱へ。洗わなくていいから後処理も楽でいいし、薬液を吸わないから無駄に使うこともない。指板のメンテだと素手で塗るのがこだわりかな。手袋がないならラップを人差し指と中指に巻いても代用できるし、ラップを丁寧にたためば使い捨てのクロスになる(液体を吸わないから拭きあげは必要)ただし安いラップだと強度がなくてすぐにボロボロになるからやめた方がいい。
大体こんなもんかな? 後はガチのビンテージとかコントラバスとかだからあんまり経験ないし。
Cheena:ですかねぇ…ビンテージとまでくるとちゃんとしたショップに依頼するほうが安全だし。
あ、この記事書く理由になったサテンフィニッシュ専用のクリーナーはさっきのLizard Spit製です。
ネモト:MP30?結構色んなケミカル作ってるね。
Cheena:それです。
Lizard Spit ( リザードスピット ) / MP30 NEVER-Gloss Cleaner
これ以外にもカルナバワックス使用のポリッシュスプレーとかあって面白いです。
ネモト:ほー。カルナバロウは色んなところに使われているけど品質にバラつきが多いから変な安物買いたくないのよね。リザードスピットは安心できるのかな?
頼んだやつはまだ届かないという。
Cheena:品質のばらつきですか。まあブラジルに自生する椰子の葉から取る蝋ですし、ある程度は仕方ないかと…でもシェラックとかウルシより当たり外れが多い気もします。どうなんだろう。
ネモト:聞いた話だとカルナバロウはもうブランド化しているから密かに代用されたり色々混ぜられたり品質がえらい低かったり(ゴミが紛れているとかね)するみたいよ。ホントかは知らないけどこういうのはままある話。
Cheena:蜜蝋ワックスとかと違って自作しづらいのも問題点かな…と。信頼できる所が作ったのを買う以上にいいことはないんですけどね。
ネモト:安物に飛び付かないに限る。安く提供できるのはそれなりの理由がある、と。当たり前なんだけどね。
あらかた書いたし、ぼちぼち締めますか?
Cheena:読みやすさ考えるとそうですね。クリーニング回これにて終演です。
ネモト:ありがとうございました!
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