
楽器店でたまにしか見かけない鼈甲ピック。昔はセルロイドやナイロンピック等と同じように四角いスペースにぎゅうぎゅう詰めに入っていた。価格は一枚350円前後した。当時学生であった私には高くて数枚所有するのがやっとだった。
時を経てバンドを組み、行きつけの楽器店も出来て、衝撃的な話が出て来た!!
『鼈甲ピック、ワシントン条約で原則発売停止』楽器店で教えて貰った。しかもあまり知られていないが、鼈甲ピックは天然素材なので個体差がある。当時はインターネットもなく情報がすぐに広まらなかったので、都内の複数の楽器店で『自分にとっての当たり』の鼈甲ピックを買いに行くようになった。都内の楽器店まで定期券があった事もあり交通費はかからなかったものの、CDレンタル店でのアルバイト代はほとんどこのピック代金に消えていった。
さて貴方は鼈甲ピックをお持ちだろうか?
そのピックはどのプレイスタイルに合うか?
では個体差とは何かを言おう。
ピッキングする所が透明であったり、色が薄いのはデリケートな傾向がある。先端が濃い茶色だったら少し強めのピッキングに合うと判断して良い。
鼈甲ピックは硬い材質だがピッキングが強いと削れていくのが早い。ピックポルタメントをしたらご機嫌なサウンドが出る代わりに巻き弦の跡がはっきりつく。また先端が透明又は茶色の混在した物は欠けやすい分、スローな色気ある弾き方には向くかもしれない。これは主観だが。
鼈甲ピックを販売している、あるいはしていたメーカーの物は80年代当初、先が非常に鋭く小ぶりだった。英語で『RITCHIE BLACKMORE MODEL』と白文字で書かれ、この文字は消えやすかった。
裏には何故か『本鼈甲』と書かず『本亀甲』と金色のシールが貼ってあった。時を同じくプラスチック製の茶色や黒の同じ大きさのホームベース型も安価で売られていた。鼈甲ピックとは違い、プラスチックなのでピッキングニュアンスは異なる。
このホームベース型から後に、やや長方形の形が大きなリッチー・ブラックモアの金色のサインが印刷された物が発売された。これも大きい物と小さい物が混在し、角度が鋭角、鈍角とあり、80年代初期の『RITCHIE BLACKMORE MODEL』と英語で書かれたものから90年代初期まで思い出すだけでも五種類以上ある。
リッチー・ブラックモアのファンならほとんどの人が知っていて、所有した事があるはず。もしくは五角形のプラスチックや金属製の五角形もあった。しかし金属製は直ぐに見かけなくなった。他のピックと違う特徴は、音がシャープで、歯切れが良く、かつ豊潤な事。複数弦をまたぐ速弾きにも確実に弦をとらえ、滑らかにピッキング出来る。そしてピックも比較的軽い。
まさにリッチー・ブラックモアに無くてはならないアイテムだ。ただし本人は野球を好まないので『矢じり型』と言っている。一時期プラスチック製の五角形ピックを使用していたが、また鼈甲製に戻ったと言う話を聞いた。
もし楽器店で焦げ茶色、あるいは濃い茶色のピックを発見し、あなたがリッチー・ブラックモア奏法をするのなら購入を薦める。店頭で購入出来ない場合、通信販売や楽器店頭での注文時は、運を天に任せて待つしかない。亀には罪がない。濃い茶色のピックが手に入ったなら大切に使おう。ピッキングに支障が出てきたら、ヤスリ等で形を整え、長いお付き合いを。透明部分が多い個体には感情を込めて丁寧に弾こう。今まで私が使って来て、どの鼈甲も欠けた事はない。あくまで目安だ。
鼈甲ピックは他のピックと比べてカッティングに少しコツがいるかも知れないが、慣れたら問題はない。
ポール・マッカートニーも使っていたというこの鼈甲ピック。今となっては贅沢品というかVINTAGEなアイテムだ。

画像について。上段左から。茶色、黒プラスチック製。上段5枚、80年代初期の先端が鋭い物、8枚目80年代初期非常に薄い。メーカー不明。
下段。80年代初期のブラックモアモデル、2枚目から7枚まで90年代初期のサイン入り。大きい物と小型のもの。発売時期は同じ。8枚目、80年代~90年代は当時、ほとんどのピックに『本亀甲』のシールが貼ってあった。
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