
ライブに行ったとき、サウンドエンジニアが複数のサブウーファーを近づけて設置しているのを見たことがあると思います。何か理由があるのでしょうか。
音の波長
音速の定義について思い出してください。音の伝達速度(音速)はC=fλ(f:周波数、λ:波長)で表され、測定条件が海面レベル、21℃、標準大気圧のとき秒速344mとなります。波長とは、周期性のある波において、同じ位相にある波の山、谷、ゼロ間の距離になります。音源から出た振動は空気を圧縮して伝搬します。この空気の疎密波が鼓膜と共振して音として感知します。人が聞くことができる周波数(20Hz~20kHz)の波長はおよそ17メートル~17ミリメートルです。

相互連結(Mutual Coupling)現象
相互連結現象というのは理論上は大きさに関係なく起こります。ここでは低域のサブウーファーで起こる相互連結現象をみていきます。相互連結現象は2つ以上のサブウーファー・ユニットが同じ信号を生成し、中心軸が近く、同じ方向を向いていて、サブウーファー・ユニットの中心軸の距離より波長が短い場合に起こります。この状態で合成された音は、複数のサブウーファーが1つの大きなサブウーファーとして働き、1つの音波として伝搬します。2つのサブウーファーの場合、中心軸が近く、1/4波長と1/2波長の間にあるとき、相互連結現象は起こります。波長が短い(周波数が高い)ほど、現象が起こる中心軸の距離は短くなります。

左図のように中心軸が1/2波長より離れている場合、相互連結現象は発生しません。右図のように、近い場合に発生します。2台のサブウーファーを1/2波長より離して設置した場合、出力差は3dBです。2台のサブウーファーを近づけて設置すると、出力差は+6dBまで増加します。
相互連結現象の利点を応用する
この現象を具体化するためにQSC KS118アクティブ・サブウーファーの仕様を見てみましょう。周波数特性(-6dB)は41Hzから98Hzに拡張されています。先に述べたように、まずサブウーファーが生成する最も高い周波数のときの波長(C=fλ))を計算します。
1/2波長@98Hz=1.75m
2台のKS118サブウーファーの中心軸を1.75m以下の距離に設置すると、相互連結現象により出力を+6dBに増やすことができます。
結論
以上からお分かりのように、サブウーファーを使用した相互連結現象の利点を応用するのは比較的簡単です。サブウーファーが生成する最も高い周波数のときの1/2波長より短い距離に2台のサブウーファーを設置するだけです。サブウーファーの数を最小限にして低域における高いSPLを得られる相互連結現象は、ツアー、音楽プロダクション、DJ、音響設備会社などにとって、大きなメリットとなるでしょう。
この記事はQSCによるWhat does Subwoofers Mutual Coupling Meanの翻訳です。