
最近、多くのミュージシャンはツアーに出ずに、ライブから遠ざかっているのではないでしょうか。そして、余った時間を利用してスキルを磨く、または何か新しいことに挑戦しているでしょう。しかし、その間、機材はほとんど使われていないはずです。実は機材は使っていないときが最も壊れやすいのです。機材を次のイベントまで完璧な状態に保つために、手入れや保存の仕方について知ることが重要です。
高いお金を出して購入したのですから、保管の仕方に注視するのは当然のことです。
バックアップする
ハードディスクやメモリーカードなどは、ほとんどのオーディオシステムで使われています。これらの機材を保管する前に、バックアップを取り、バックアップが使える状態にあることをチェックしましょう。
埃は天敵です
電子機器にとって埃は天敵です。ハンダ接点を弱くし、ツマミからはノイズを発生させます。予防として、保管のときも機材には常にカバーを掛けてください。また、定期的にほこりを取り除いてください。先端にブラシがついた掃除機は埃や小さなゴミを取るのに便利です。
機材をクリーニングするなら、柔らかい布に中性洗剤を含ませて埃を拭いてください。布はマイクロファイバーやソフトラグのように柔らかく、機材表面に優しいものを選んでください。
クリーニングには何か特別な専用品が必要と思うかもしれません。しかし、ほとんどの場合、少し水で湿らせた布が一番良い選択になります。石けんやクリーナーは機材の表面を傷める可能性があります。
接点のクリーニング
日常的な埃の除去だけでなく、ハンダ付けの部分も、良好な接触状態を保つのにクリーニングが必要です。機材がバッグに収納されていたとしても、腐食は進み、接点の状態を悪化させます。次のライブ前に、全てのケーブルと機材との接触状態が良好かどうかチェックする必要があります。接触が悪いところを見つけたら、接点復活剤を使用するのも良いでしょう。速乾性のスプレーで、繊細な電子回路にも使用できるように設計されており、ハンダ付けされた部品の接触不良を引き起こす汚れを取り除くことができます。
機材の寿命
オーディオ機材に使用されている部品には寿命の存在が避けられないものもあります。真空管、ヒューズ、ギター弦、オーディオケーブルなどは劣化する前に交換する必要があります。ギターアンプやマイク・プリアンプにある真空管が突然ノイズを発し、不安定になることがあります。接点に関しても保管しているだけで劣化することがあるため、全ての電源を入れて音に問題がないか確認します。ケーブル、弦、コネクター、電池、それから真空管とヒューズは常に予備が必要です。
電池は長い間使用しない場合、抜いておくべきです。どのようなタイプの電池でも、液漏れの可能性があり、それはオーディオ機材に影響を与えます。特に注意すべきは電池によりLEDディスプレーや他のデジタル部品に電気を供給しているビンテージ・シンセサイザーでしょう。電池を外しておき、次のライブの時には新しい電池に交換することを強く推奨します。
乾燥した場所
湿気は明らかにオーディオ機材の敵です。使用しないときは、乾燥した場所に保管すべきです。地域によっては除湿機を使う必要もあるでしょう。湿気の多いところは接点表面に腐食した薄膜を作り、接触不良を起こします。
長期間保存するとき、乾燥した場所を選び、腐食や酸化を遅らせる透過性防錆潤滑剤などを使用してプラグやソケットを保護します。
マイクに関しては特別な注意が必要です。湿気がマイク内に入ると、ダイアフラムの動きが悪くなり、音が不自然になります。不適切なフィルターを使用したマイクは、使用中にボーカリストの息がかかり、この問題を引き起こす可能性すらあります。乾燥させると問題が解消することもあります。
適切な温度
非常に高温になる環境はオーディオ機器には良くありません。保管場所が非常に高温になるのを防ぐために、十分な換気を行ってください。
また、ファンを搭載したオーディオ機材は、排気やヒートシンクが周囲の壁などにブロックされていないか確認する必要があります。
氷点下の車のトランクに入れていたオーディオ機材は、使用する前にゆっくりと室温に戻しておく必要があります。急に温かい部屋に持ち込むと、機材表面が結露し、電気的、機械的問題を引き起こす可能性があります。保管温度は室温(20℃)が最適です。
スピーカー
スピーカーも他の機材同様、手荒に扱ってはいけません。衝撃により、ボイスコイルの調整位置がずれたり、コーンに影響を与えます。
この問題をチェックするのに、クリーンなベース音を含む音源を普通の音量で鳴らして、ベース音が「きしむ」かどうかスピーカーの近くで聴いてみてください。初めは問題がなくとも、時間の経過と共に悪化し、トランスデューサーの交換、またはスピーカーごと交換することになるかもしれません。スピーカーのモデル、特に長い間保管されていた旧モデルでは、コーンの乾燥、加水分解などで破れてしまうものもあり、使用不可能になる場合もあります。次のライブ前に、ぜひチェックしておいてください。
適切な電源を使用
仕様通りの電源を使用しているか確認します。保管する前に電源にラベルを貼っておくと良いでしょう。電源装置を交換する必要がある場合、次の点に注意してください。
- メーカーが使用できる電圧範囲を設定している場合を除いて、仕様に示された電圧の電源を使用してください。仕様より高い電圧を使用すると、機材に影響を与える可能性があります。
- 仕様に示された最小電流を供給できる電源を使用してください。供給できる電流が少ない場合、動作に影響を与える可能性があります。
- 電源の極性に十分注意してください。特に直流電流は極性が正しくないと、使用できず、機材の破損の原因にもなります。極性はラベルに記述されています。
ケーブル、プラグ、ソケット
一般にケーブル、プラグ、ソケットは他の部品より問題を起こす可能性が高いです。だからこそ、故障を防止し機材の寿命を長くするために十分注意を払い、頻繁にチェックする必要があります。また、これらの部品は故障する前に事前に何らかの予兆があります。
摩耗
プラグを何度もソケットに抜き差しすると摩耗します。接触が悪くなる前に交換する必要があります。
湿気による腐食
プラグとソケットは湿気により腐食し、接触が悪くなります。内部が腐食していると、抜き差しがきつくなってきます。応急処置として、透過性防錆潤滑剤などをかけて接触の問題を一時的に解決することができます。
ケーブルの断線
ケーブルは曲げを繰り返すと被覆内に損傷を与えることがあります。機材に接続してからケーブルを指で上下に振りながら全体をチェックしてください。定常的なノイズや信号の分断が起きる場合、ケーブルを交換する必要があります。
電線は何度も曲げを繰り返すと断線します。これを防ぐためにケーブルを緩くコイル状に巻くことによって寿命を延ばすことができます。シールドケーブルには特に効果的です。ケーブルをコイル状に巻くのに一般的に知られた方法がいくつかあります。QSCでは、いわゆる「8の字巻き」を推奨しています。(https://www.youtube.com/watch?v=cpuutP6Df84)
整理整頓してケースに収納する
機材を安全に確実に保管するには、機材を整理整頓して収納する必要があります。所有するサウンドシステムには複数の部品やオプションパーツがあると思います。適切に保管すると、部品が混ざったり、壊れたりするのを防ぐことができます。重要なのは、全ての部品をグループ分けして整理してから安全なケースに収納することです。床に直に置いたり、むき出しの状態で放置しないようにすることです。
整理しておくことで、機材が必要なときに直ぐ探し出せるようになります。また、ケースに何が入っているか分かるようにラベルを貼っておくことも重要です。
結論
機材をクリーニングしたり維持したりするのは本当に大変なことです。しかしながら、少しの努力の積み重ねにより機材は良い状態に保たれ、いつでもステージに戻ることができます。
この記事はQSCによるHow to ready Your Gear for the First Gig Backの翻訳です。