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EQを使用して、クリアで存在感のあるミックスを作る(パート3)

2023-03-14

テーマ:How to

ライブオーディオのミキシングにおいて、サウンドエンジニアの多くは、理解不足のままEQを操作しています。この記事では、EQを使用して周波数を操作するプロセスを説明し、クリアな存在感のあるライブミックスを作成するヒントを紹介します。

その1では、EQがどのように機能するかについて説明しました。その2では、周波数とは何かについて説明しました。この記事に入る前に、この2つの記事をぜひ読んでみてください。

不要な周波数をフィルタリングする

ハイパスフィルター(ローカット)は、不要な低域をフィルタリングするためのツールです。

一般的には、ハイパスフィルターを楽器が出せる最低音に設定するとよいでしょう。扱う楽器の周波数帯域を知るのはとても重要です。「楽器とボーカルの周波数帯域表」を覚えておくか、インターネットで検索してみてください。

ピアノやキーボードのようにフルレンジに近い楽器もありますが、必ずしもフルレンジを使って演奏するわけではありません。アレンジによって楽器をどのように使用するか不明の場合、100Hzのハイパスから始めます。

ボーカルの音域は、音楽のスタイルや男声か女声かによって異なります。音楽アレンジの中でどのように使われているかを不明な場合、すべてのボーカルに対して100Hzのハイパスから試します。

ほとんどの入力チャンネルでハイパスフィルターを使用します。ハイパスフィルターを設定すると、空調やステージの音量など、周囲の低音域のノイズが増幅されなくなるため、輪郭がはっきりとした音に仕上がるのです。

ローパスフィルター(ハイカット)は、不要な高音域を取り除くのに有効な手段です。一般的に、高音域が存在すると輪郭がはっきりとした音になるため、できる限り残します。 しかし、楽器によっては、ピッコロ、フルート、バイオリン、女性ソプラノの声など、ハイエンドの耳障りな音色(honk)を出すときがあります。このような場合は、不快なトーンが収まるまで、ローパスフィルターを効かせます。これは実際に聞いて判断してください。

カットファースト、ブーストセカンド

パラメトリックEQを使って、ミックス内の各楽器のサウンドを作っていきます。

周波数をブーストすると聴きやすくなりますが、すべてのチャンネルのプレゼンス(高音域)をブーストすると、ミックスに粗さが出てしまいます。さらに、EQのゲイン・ステージが全体で飽和してしまい、ミックスに歪みが生じます。

最初に問題のある周波数をカットすれば、多くの場合、何もブーストする必要がありません。まず、問題のある周波数をカットするようにしましょう。

しかし、問題のある周波数がどこにあるのかがはっきりしない場合、「ブースト、スイープ、カット」法を適用して問題を特定できます。まず、問題があると思われる場所に、周波数の中心点を置きます。Q値を狭くして、周波数中心点を5〜10dBほどブーストします。こうして、不快な周波数の分布域を特定し、不快な音が消えるまでその周波数をカットします。その後、Q幅を戻すかどうか選択します。

「ブースト、スイープ、カット」方式で問題のある周波数を特定する。

ブーストの段階でマイクがハウリングを起こしやすいので、実際に再生しながらミキシングする場合は「ブースト、スイープ、カット」を注意深く行います。

不快な要素を特定し、カットしたら、「この楽器をより際立たせるために、何をブーストすればいいのか」を考えます。例えば、エレキギターなら2〜3kHzで輝きを与え、キックドラムなら3〜5kHzでビーターのパンチの効いたサウンドになります。

全体的なミックスに焦点を当てる

EQをかけたら、あとはミックス全体を見ながら、各要素を調整していきます。

ミックスで起こる共通の問題は、周波数のマスキングです。重低音サウンドを求めると、重低音、低音、中低音をブーストして、高音域の多くをマスキングしてしまい、その結果、ミックスの輪郭が不明瞭になります。

また、どのチャンネルも同じように高音域をブーストすると、耳障りなミックスになります。

ミックス全体は、周波数の特定部分が過度に強調されないようにし、低域から高域まで均等に存在感を与えます。そのためには、まず音域の割り当てを行い、次にチャンネルボリュームを設定します。

楽器の音域割り当てを行って、各楽器をそれぞれの周波数空間で生かします。ハイパスフィルターを適切に設定すれば、ミックスの音域割り当ては、ほぼ決まります。

例えば、キックドラムやベースギターは重低音域と低音域、ギターやピアノやキーボードは中低音域から中音域の楽器です。ボーカルは一般的に中音域から中高音域の上部に位置します。これにより、他の楽器の周波数帯域と重なる周波数を強調し過ぎないようにします。

もちろん、各バンドには独自のアレンジがあるので、曲によって少し違うかもしれません。よくアレンジされた音楽を演奏するミュージシャンは、自然とアレンジの中で優れた音域配分をしています。音響担当者は、各楽器の特定のトーンを強調するために、いくつかの周波数をカットしたりブーストしたりするだけでいいのです。

他のアレンジでは、同じ周波数帯域の楽器が演奏され、個々の楽器が不明瞭になる場合があります。このような場合、ミックスエンジニアはEQを使用して明瞭な音像にします。

例えば、ピアノ奏者がベースの演奏している音域と同じ音を弾いている場合、ベースが弾き終わるまでピアノにハイパスフィルター(ローカット)をかけます。2台のキーボードが同じ周波数空間を争っている場合、一方のキーボードにローパスフィルター(ハイカット)をかけて、もう一方のキーボードがより高い周波数空間を占有するようにします。同じ音域で演奏する2本のエレキギターがある場合、片方を3kHzブーストし、もう片方を3kHzカットします。フルバンドの場合、アコースティックギターのハイパスフィルター(ローカット)を効かせ、5kHzのブーストを加えることで、同じ音域を占める他の楽器にマスキングされません。

ミキサーのフェーダーを使ったチャンネルのボリューム配置は、均一なミックスを作るための次のステップです。この作業は、自然に決まるわけでも、自動で決まるわけでもありません。サウンドエンジニアがミュージシャンの演奏に耳を傾け、曲の至る所で楽器のボリューム配置を調整します。例えば、楽器がソロを演奏するときや、リードボーカルがバックグランドボーカルになるときなどです。このように、音響担当者は常にステージ上の状況に目を向け、耳を傾けていることが大切なのです。

ボーカルが優先される

ミックスにボーカルが含まれている場合、ボーカルの音色を追求します。人間は本来、人の声に反応して、耳を傾けます。ボーカルの場合、小さな問題でも、ミックスの他の部分にある欠陥よりも目立ちます。ここでは、ボーカルをEQ処理するための提案をします。

BODY(200~500Hz)

温かみを感じる周波数帯域です。強すぎるとボーカルがブーミーになったり、ぼんやりしたりします。不明瞭さ(200~500Hz)を取ることで瞬時に透明感を出せます。

NASAL(1~3kHz)

もし、歌手の声が子供っぽいアニメのキャラクターのように聞こえるなら、この周波数帯域をカットしてください。しかし、やり過ぎると風邪をひいているような音になってしまいます。

PRESENCE (4 kHz)

輪郭がはっきりとした音にするためには、プレゼンスが重要です。ボーカルが目立たない場合は、ギターやその他の楽器の4kHzをカットし、ミックスの中にボーカルのためのスペースを作ります。ボーカルの4kHzをブーストし、存在感を与えますが、ブーストしすぎるとボーカルがキツくなってしまいます。

SIBILANCE (5-8 kHz)

SIBILANCEは発声の最大の敵です。「歯擦音」やその他の高周波音は不快です。ディエッサーが最適なツールですが、5kHzから8kHzの間で慎重にカットします。

楽器とボーカルのプリセット

QSC TouchMixミキサーでミキシングする場合、QSCが用意した楽器とボーカルチャンネルのプリセット・ライブラリにアクセスできます。これらのプリセットは、世界的なエンジニアが実際のライブサウンド環境で作成しています。素晴らしいサウンドだけでなく、システムの安定性を図ります。この記事で説明した多くは、これらのプリセットで再現できます。

QSCのインストゥルメント・チャンネル・プリセットをロードすることで、経験が浅くても素晴らしい音質を得られ、経験のあるエンジニアはミックスを調整するスタート地点へ素早く立てます。

サウンド・ミックスエンジニアを目指す人には、QSCチャンネルプリセットを使うだけでなく、このプリセットについて学ぶことを推奨します。きっと素晴らしい教材になります。

最も重要なミックス要素

クリアで存在感のあるミックスを作るために最も重要な要素は、あなたの耳です。EQを使用する際には、ミキシングコンソールに表示される情報ではなく、自分の耳に基づいてミキシングを決定してください。

はっきりと意図を持ってミックスするのです。なぜ調整するのかがわからないときは、やらないほうがいいです。

これらの概念をどのように適用するかを学ぶには、時間と練習が必要です。学びながら感動を覚え、ミックスを楽しんでください。

Golden Preciado

GoldenはQSCのトレーナーであり、ハウス・オブ・ワーシップ・スペシャリストです。Goldenは音楽業界で育ち、オーディオエンジニア、ミュージシャン、ワーシップリーダーである父親の跡を継ぎました。教会の世界だけでなく、音楽業界においても、熟練のフロント・オブ・ハウスとブロードキャスト・エンジニアとして活躍しています。チャーチ・サウンドトレーニングに関するFaceBookグループや、その他トレーニングが必要な現場などで、自分のスキルを教えています。

 
 
 
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