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ライブサウンドのためのスピーカー配置。実践的なヒント(パート1)

2022-02-02

テーマ:How to

QSCのスピーカーは、幅広い用途で高性能かつ音源を正確に再生することで知られています。しかし、ライブ会場では部屋の形状、天井の高さ、音響的に影響を与える壁、その他多くの要因がサウンドシステムのセットアップ・プロセスを困難なものにしています。対策として、まずスピーカーを適切に配置することが挙げられます。この3部構成のシリーズでは、一般的な会場で最高のサウンドを再生するために役立つ、シンプルなヒントを提供します。

低音ブーストと空間放射

まず、「音の伝搬」について考えます。音は周波数によって伝わり方が異なります。下図のように、低周波における無指向性から高周波の高指向性まで多岐にわたります。

音の放射は、周波数によって異なる。

2つ目は、いわゆる「空間放射」で、スピーカーが音を放射する容積です。低周波(200 Hz以下)では、硬い壁により空間放射を制限すると、サウンドレベルが増加します。スピーカーを壁に近づけて空間放射を半分にすると、低周波の音圧レベルは2倍になります。

200Hz以下の低域特性がフラットなスピーカーを(天地前後左右に壁がない)フリースペースに設置した場合と比較して、固い壁際に設置すると最大6dB高いサウンドレベルを発生させます。コーナー(2つの壁際)に設置した場合、このゲインは最大12 dB増加します。

空間放射は、スピーカーが音を放射している体積。空間放射が変わると200 Hz以下の周波数のスピーカー出力に影響が出ます。

この場合、どうすればいいのでしょうか。図2の「フリースペース」以外の場所に設置されたPAシステムの各スピーカーについて、数デシベルずつ200Hz以下の低音のレベルを下げて、低音再生が理想的なサウンドを維持できることを確認します。そのためには、QSC K.2 Series?に搭載されているスピーカー内蔵のEQを使用するか、ミキサーで200 Hz以下のシェルビングフィルターをセットアップします(QSC TouchMixRデジタルミキサーで非常に簡単に行えます)。また、低周波のレベルが高すぎると、特定の低音が強調され、共鳴を起こし、濁ったオーディオミックスになりがちです。

なお、「壁近く」(半空間放射)というのは、サブウーファーの上にスタンドやポールマウントで置かれたスピーカーや、マウントブラケットで天井に取り付けられたスピーカーにも適用されます。同様に、壁の角に近い場所に設置されたスピーカーや、壁と天井に取り付けられたスピーカーは、1/4のスペースに音を放射することになります。もし、スピーカーが壁の角にあり、天井に取り付けられている場合、放射スペースは1/8のスペースになります。

バックウォールキャンセルとスピーカーの配置

同様に、200Hz以下で発生する現象です。スピーカーとその背後にある硬い壁との間に距離がある場合、この距離が放射される音の波長の1/4に等しい周波数では、壁による反射音はスピーカーの前方放射と位相がずれ、壁によって反射された音は、同じ周波数のスピーカーの前方放射を打ち消すことになります。

音速は344 m/s(気圧0、21℃)であり、C(音速) = f(周波数)× λ(波長)と定義されます。

この式により、任意の周波数に対する1/4波長を簡単に求めることができます。例えば、標準的なギターの最低音(6弦、Eの開放弦)は約83Hzです。このときの1/4波長は約1.0mです。

したがって、スピーカーを硬い固い壁から1m離して設置すると、その前方放射周波数特性は83Hzで大きな干渉を示し、減衰します。これは「低域櫛形フィルターキャンセル」と呼ばれ、スピーカーの出力をイコライジングしても、壁からの反射音も同じようにレベルが変化してしまうため効果がありません。後ろの壁に対するスピーカーの位置が大きな影響を与えているのです。

スピーカー後方の硬い壁による音のキャンセル現象。

このようなキャンセルを避けるために、PAシステムを後方の壁からどの程度離すべきでしょうか。45Hz(-10dB)までの周波数特性を持つQSC K12.2アクティブスピーカーを例に、45Hzでの1/4波長を1.9mと計算します。

QSC K12.2スピーカーを後ろの壁から1.9m以上離して設置すれば、キャンセル現象が発生せず、スピーカーの全帯域が問題なく再生されます。この距離は、実際のスピーカーの仕様に依存します。より低い音域まで出力されていれば、背面壁までの距離が長くなります。一般的なステージの奥行きは2m以上あり、多くのDJブースについても、この距離は簡単に実現できます。

さて、ライブのセットアップによっては、ディレイ・スピーカーや「フィル」スピーカーを背後の壁の近くに設置する必要があります。このような場合、どうすればよいのでしょうか。この場合、背後の壁からの強いキャンセルを避けるために、逆にスピーカーの背面をできるだけ壁に近づける必要があります。ただし、前章で説明したように、壁の近くに設置することによって生じる低音を適切に減衰させることも同時に行ってください。

今回は、スピーカーの空間放射とそれに伴う低音ブースト、背面壁のキャンセル現象について考察しました。次回は、どのような会場でも安定したカバレッジを実現するために、基本的な室内音響の変数、「限界距離」「逆二乗則」について解説します。ご期待ください。

この記事はQSCによるPractical Tips on Loudspeaker Placement for Live Sound (Part I)の翻訳です。

Christophe Anet

Christophe Anetは、電気音響エンジニアであり、QSC Live Soundのシニア・プロダクト・マーケティング・マネージャーです。長年にわたり音響への情熱を持ち、世界中のレコーディングスタジオの設計、音響心理学の講義、レコーディングスタジオのコントロールルームの調整などを行ってきました。ギターを弾いていない時は、スイスアルプスでロッククライミングをするか、大自然の中で水彩画を描いています。

 
 
 
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