ピンク・フロイド『狂気』50 周年を祝う至上の 1 年を締め括った年末公演

2025年、早くもディープな内容のライブイベントを続々と発表している、木暮shake武彦氏率いるピンク・フロイドのトリビュート・バンド、原始神母。
フロイドの楽曲を「トリビュート」という言葉すら疑問に残るほどのオリジナリティを持ちえたパフォーマンスのクオリティの高さで、フロイドのカバーを聴いているという事すら忘れ、原始神母というバンドの世界に引き連れられていく圧巻のバンド・アンサンブル。毎回、異次元の世界(月の裏側)へ行ってしまうような瞬間すらあるライブは、本家フロイドのアルバムや神秘的なライブでのスケールの大きさを改めて知らしめてくれるものです。
さて2025年も「驚異」のライブを繰り広げていく、原始神母のライブの思い出の記録として、2023年12月30日はEXシアター六本木でのライブ、その名も「公演名は「ピンク・フロイド 歴史的名盤『狂気』50th 記念イベント + Atom Heart Mother 〜冥界のカンタータ〜」の後半の模様をお送りしたいと思います。
素晴らしいライブを繰り広げてきた原始神母ですが、2023年の5月の日比谷公園大音楽堂公演をはじめ、日本のフロイド・ファンが、アルバム『狂気』50周年を1年中祝福できる幸せをここまで感じてこられたのは、原始神母の2023年の再演ライブがあったからに他ならないでしょう。
満天の星の下で『狂気』のナンバーが降り注いだ野音での再演ライブも一生忘れられないものでしたが、今回お伝えするEXシアター六本木で披露された『狂気』再演ライブもまた違った空間に身体ごと引き連れられていく様な素晴らしいものでした。
以前お伝えしましたライブの前半の模様を第一部と併せてお楽しみいただけたら幸いです。
『狂気/ THE DARK SIDE OF THE MOON』

1973年に発表された説明不要のUKロックの金字塔アルバムです。哲学的な歌詞が、これまでの実験性あふれるフロイドの音楽と当時の最先端のロックミュージックがブレンドされながら進行。そんな中、レスリー・ダンカンをはじめとする女性コーラスや、時にメロウになるサックスの導入で、分かりやすくも壮大な世界へと誘う音のスケールは50年経った今でも色褪せない作品として愛され続けております。
そして今回はシアター内での再演。どんなライブになるのでしょうか。
1. Speak to Me/スピーク・トゥ・ミー

2011年にリリースされたウェンブリーでのライブを思わせる、長めのSEの中メンバーが登場。今回もSEの音とシンバルが徐々に盛り上げる中、冨田麗香さんによるシャウトで「生命の息吹き」がスタートしますが、前回の屋外での開放的な空間と違うため、よりこのアルバムの緊張感を感じるスリリングなオープニングに感じました。
2. Breathe/生命の息吹き

緊張感あふれるオープニングから一転、大久保治信さんと三国義貴さんによるグルーヴィーなエレピとオルガンに乗って、木暮"shake"武彦さんのドリーミーなスライドギターが、前回よりはゆったり目なリズム感の中始まっていきます。メインボーカルのケネス・アンドリューさんの歌声と扇田裕太郎さんのハーモニーにうっとりしているのもつかの間、「走り回って」がスタート!
3. On the Run/走り回って


前回はまだ陽が少し残るなかで聴いたトリップ感で、柏原克己さんのハイハットを中心としたドラミングをはじめ、目をぐるぐるさせながらぞれぞれのメンバーのプレイに見入っていたものですが、今回はシアター内で聴く「走り回って」の再演。それはもう、素晴らしい照明の効果と三国義貴さん、大久保治信さんによるシンセサウンドの音圧がアップした事もあり、原始神母に別世界へ連れていかれたかのようなトリップ感!冨田麗香さんによる空港のアナウンスがその幸せの錯覚をさらに助長。もう心は本家フロイドのライブ盤『P.U.L.S.E.』の再演にもウェンブリーライブの音源にも戻れない位でした。フロイド・ファン失神必至の忘れられない名パフォーマンス!!
4. Time〜Breathe (Reprise)/タイム〜ブリーズ(リプライズ)

「走り回って」で失神している中、けたたましい時計のSEが容赦なく襲い掛かります。その後冨田麗香さんが重いパーカッション音と大久保治信さんのエレピと三国義貴さんのシンセに聴き入っていると、前回以上に強力に響きわたる柏原克己さんのドラム・フィルインが入ります。ケネス・アンドリューさんのボーカルがとても力強く、それに呼応する冨田麗香さんと廣野ユキさんの二人体制のコーラスがさらにソウルフルに響きます。その力強いソウルテイストを浴びならの木暮"shake"武彦さんの分厚く鋭いギターソロが身体ごとバイヴします!オルガンも分厚く鳴り響き、実に神々しい再演!!


5. Great Gig in the Sky/虚空のスキャット

三国義貴さんのピアノサウンドでゆったりと始まる神聖なるゴスペル・ロック・ナンバー。アルバムでイントロ部分に導入されている「死についての語り」は、毎回ケネス・アンドリューさんによる実演。そして語りをコーティングする様な木暮"shake"武彦さんの優しく奏でるスライドギター。メインとなる、冨田麗香さんの歌はいつものソウルフルさに加え、今回は洗練された感じもしました。


後半の廣野ユキさんの強力な歌声と相まって、年末にふさわしい素晴らしい歌声を惜しげなく披露する感動的な再演です!
6. Money/マネー

「狂気」再演の見どころは正直「すべて!」といっても過言ではありませんが、中でもバンド全体の演奏力やセンスを堪能できるこのナンバーは、曲の知名度を差し引いたとしても、実に盛り上がります。ステージに登場した阿部剛さんのサックスは前回同様、まさにロックの響き。

ロックのためのサックス・プレイを聴いているだけでも手に汗握りますが、白眉は本家フロイドでもやっていない、メロディー隊メンバーによるそれぞれの個性が滲み出るような長尺ソロ数珠つなぎでしょう。
ギルモア愛溢れる木暮"shake"武彦さんのエッジの効いたギターソロから、大久保治信さんと三国義貴さんの2人にタスキが渡されシンセバトルが炸裂。再び阿部剛さんのロッキンなサックスソロに続いてケネス・アンドリューさんのスキャット・ボーカル・ソロへと展開。満席のシアター内で手拍子が鳴り響く中、木暮"shake"武彦さんのギターソロに戻ると、高速シャッフルでエッジの効いたギターサウンドが轟音で鳴り響きま す。




曲のエンディングではギター、2人の鍵盤とサック、ファルセットボーカルが、絡み合いながら、扇田裕太郎さんが語りを実演しながらフェード・アウト。そのまま三国義貴さんのオルガンが優しく鳴り始めると「アス・アンド・ゼム」がスタート。
7. Us and Them/アス・アンド・ゼム

「アス・アンド・ゼム」。前回観たたときは日比谷野音で「マネー」で陽が沈み「アス・アンド・ゼム」で夜が始まるという、感動的な瞬間を味わったものです。この日はシアター内という事で、各楽器の音、ボーカル、コーラスがさらに濃厚に響いて、再度観に来てよかった!と思うほど、ドリーミーな空間。

罪人をも許してくれる寛大な牧師が現れそうな教会にいるかのように、三国義貴さんのとても優しいオルガン・サウンドが響くなか、メロウな音色を鳴らす木暮"shake"武彦さんのギターと大久保治信さんのピアノが、温かくうねる扇田裕太郎さんのベースと柏原克己さんのドラムによるリズム隊に乗って、ゆっくりと歩き出すオープニング。今回は屋内での再演という事か、ケネス・アンドリューさんのボーカルが前回以上に感情たっぷりに聴こえてきます。


阿部剛さんのサックスの音色がソロの盛り上り部分になるとさらにロッキン・ソウルに鳴り響き、冨田麗香さんと廣野ユキさんのソウルフルなコーラスとのコントラストが実にキます!

8. Any Colour You Like/望みの色を

照明がさらにファンタジーな世界を演出する中、大久保治信さんと三国義貴さんのシンセバトルがスタート。ファンキーに跳ねる扇田裕太郎さんのベースと柏原克己さんのドラムの上での気持ちよさそうに演奏する様が楽しく、木暮"shake"武彦さんのギターソロにおいても爽快な響きで、ステージにいるケネス・アンドリューさんがずっと身体を揺らしている気持ちが良くわかる、実にホットな再演です!!




9. Brain Damage/狂人は心に

ケネス・アンドリューのささやくような歌の中に、マイルドに入っていく木暮"shake"武彦さんの美しいギター。逞しくも優しさを備えた冨田麗香さんと廣野ユキさんのコーラス。フロイド教会さながらの美しい音世界と光の演出。そして最後には、三国義貴さんと大久保治信さんによる美しいシンセ・ソロが、この次に始まる「狂気の大円団」を告げる開演ブザーの様に鳴り響きます。


10. Eclipse/狂気日食

ミラーボールの光がホール内に降り注ぐ中、ド迫力で響きわたる大久保治信さんのオルガンの後、ケネス・アンドリューさんと扇田裕太郎さんの歌と冨田麗香さんと廣野ユキさんのコーラスとの掛け合いで、アルバム『狂気』の素晴らしいエンディングを再演。

アルバムリリース50周年、そして誰の中にでも潜む人間の狂気そのものを祝福するかのような包容力のある演奏は、本件フロイドの音源、ロジャー・ウォーターズの来日公演でも味わえない幸福感でした。2023年。本当に素晴らしい年でした。などと書いていますが、これだけ凄まじい再演が終わっても、これでは終わらないのが原始神母のライブの凄いところ!
11.Another Brick In The Wall - Part II/アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール(パート2)

『狂気』と並ぶ名盤という声が多いアルバム『ザ・ウォール』からのナンバー。ライティングシステムを下に降ろして、ステージをほとんど見えなくするという、原始神母ファンにはお馴染みの、『ザ・ウォール』心をくすぐる演出ですが、扇田裕太郎さんの十字ポーズ、ケネス・アンドリューの”Wrong, Do It Again”の叫びの実演など、ここまでやるかの再演がたまりません。

一方で木暮"shake"武彦さんのギターソロの後にはオリジナルにはない、三国義貴さんと大久保治信さんによるシンセとオルガン・サウンドの応酬合戦、さらにはサックスまでもフィーチャーするという、何回聴いても飽きない演出がされていました。




曲が終わると、ここで三国義貴さんの、ピンク・フロイドの1972年来日ツアーで札幌公演を体感したという話を聴けたのが興味深かったです。デイブ・ギルモアが目の前だったという事でしたが、つまりは『狂気』発売前のプロトタイプのアレンジでの演奏が聴けたという、追体験組には何とも羨ましいエピソードです。いつか原始神母によるプロトタイプのバージョンも聴けたら嬉しいです。
さてそんな感慨に耽けていると、さらに我々オーディエンスへの圧巻のプレゼントが待っています。
第一部で『ライブ・アット・ポンペイ』、この第二部で『狂気』を再演しただけで強烈なライブですが、ここでまた今や現在進行形の日本洋楽伝説といってもいい、原始神母+ブラスオーケストラ+コーラスを加えた、「Atom Heart Mother」を再演するというとんでもない演出が待っていました。しかもオーディションを行ってコーラス隊を大幅増員しての演奏というのですから、圧巻のスケールといえるでしょう。ブラス隊のセット、コーラス用のステージが続々運ばれていき、本当に「Atom Heart Mother」が始まります!
12.Atom Heart Mother/原子心母

低音オルガンが鳴り響くと、ホーンの音色が鳴り響き、本当にまた聴けるという興奮を噛みしめながら、本編「父の叫び」が始まると、初めて原始神母のライブに行った時のオーケストラ入りの「原子心母」を聴いたときの感動を思い出します。
「マザー・フォア」での冨田麗香さんと廣野ユキさんの歌声は、2022年の年末に聴いた時よりもさらに力強く、その後待ち受ける大幅増員コーラスのハーモニーとの絶妙なボーカルがホール内に迫ってきます。
大人数コーラスによる「マザー・フォア」の後半。筆舌に尽くしがたいほど圧巻です!「むかつくばかりのこやし」での木暮"shake"武彦さんのストラトギターの音が太くて実にタフな響きで、この大人数コーラスまでもフィーチャーした「原子心母」への意気込みを感じます。

「喉に気をつけて」でも左右から織りなす恐怖のメロトロン・ブロウの迫力にも手に汗握りました。
原始神母そして美しいチェロの演奏、眩しいばかりのブラス隊、大人数のコーラスという圧巻の再演は後に2024年にも行われ、その時も本当に素晴らしいもので、まさに「現在進行形の日本洋楽伝説」といえるものでした。またブログでレポートしたいと思います。

2023年年末の原始神母のライブレポートを2回にわけてお伝えしましたが、レポートとリリースされている動画だけでは味わえない、バンドのグルーブや空間を掌握するパフォーマンスは実際に体験してみてこそ、初めて原始神母の凄さがわかるのではないかと思います。
そんな中2025年の公演が続々決まっています!
shake Presents 輝ける1970's 〜 BRITISH ROCKの2日間 〜

[DAY1] Pink Floyd × Led Zeppelin
2025/3/8(土)日比谷公園大音楽堂
原始神母 as Pink Floyd / MR.JIMMY as Led Zeppelin
[DAY2]Pink Floyd "炎" 発売50周年記念ライヴ
2025/3/9(日)日比谷公園大音楽堂
【ゲスト】Queeness(QUEEN トリビュート)
2025年の3月、「shake Presents 輝ける1970's ~ BRITISH ROCKの2日間~」と冠した1970年代のブリティッシュロックと日本の洋楽史をバンドとオーディエンスが一体となって検証するようなイベントの開催が決定!3月8日(土)は原始神母に加え、上映中の自伝映画も大好評な“レッド・ツェッペリンに全てを捧げた男”MR.JIMMYも登場!そして3月9日(日)には、時が経つにつれ高い評価を得てきた、ファンと共に育ってきたと言っても過言ではない後天的な名作『炎』の発売50周年記念ライヴを披露!ゲストにはRISING SUN ROCK FESTIVALでのパフォーマンスも伝説となっている、究極のQUEENのトリビュート・バンドとして大人気のQueenessを迎えてのイベントとなります。両日共1970年代のUKロックをリアルタイム体験した方にとっても、追体験組にとっても必見の内容。場所は、原始神母が2023年に圧巻のフロイド再演ライブを行った日比谷公園大音楽堂。都会の空の下で至上のROCKを全身に浴びる事必至のイベントになる事でしょう。
そしてさらにそんなロック祭典の日々に先駆けて、木暮"shake"武彦さんの故郷西川口で2025年初のライブが行われます。
原始神母 GENSHI-SHINBO 2025 1st LIVE

2025年2月28日(金)
西川口 Hearts
今年2025年のテーマは「炎」50周年ということで、野音に向けての新たな楽曲が初披露されるかもしれないという事です。また普段野音やExシアターなどホールサイズのライブしか見たことのないファンの方は、すぐ目の前で原始神母が繰り広げるフロイド・トリップを堪能できるまたとないチャンスと言えるでしょう!!
原始神母 メンバー(敬省略)
木暮"shake"武彦(Guitar)
三國義貴(Keyboards)
大久保治信(Keyboards)
扇田裕太郎(Bass, Guitar, Vocals)
柏原克己(Drums)
ケネス・アンドリュー(Lead Vocals)
冨田麗香(Chorus)
廣野ユキ (Chorus)
ラヴリー・レイナ(Chorus)
阿部剛(SAX)
画像提供:原始神母
最後に!サウンドハウスで取り扱っているフロイド心をくすぐるアイテムをここでひとつ!
高出力クリーンブーストと高ゲインファズ/ディストーション回路で構成される驚異的なデュアルペダルの最新バージョン。豊かな低音、サステイン、パンチを提供します。メーカーもフロイドを弾きたい人へおすすめしています!これで「ヤング・ラスト」を弾いてみたい。