
Photo by 森島興一
60~70年代ロックを後追いしてファンになった世代にとって、当時のロック・アーティストのライブをリアルに味わいたいという衝動をお持ちの方は少なくないのではと思います。私もその一人です。
そうなると、一番の方法は、やはりハイレベルな再現度を持ち合わせたトリビュートバンドのライブを楽しむという事になるのではないでしょうか。
今回、私が観に行ったバンドはピンク・フロイドのトリビュートバンド「原始神母」です。
私は80年代に音楽雑誌でピンク・フロイドを知り、アルバム『狂気』のレコードを聴いてからファンになった世代。来日公演が行われた1988年、学生時代に部活の合宿で行けなかったのですが、無理やりでも行けばよかったと今でも後悔しています。
その後、2002年にメンバーの一員でもあったロジャー・ウォーターズの来日公演が見られただけでも幸運だったと思います。
そんな私のフロイド愛を知った、職場の上司がフロイドのトリビュートバンドが名盤『原子心母』を再演するライブがあると誘ってくださいました。
プロフェッショナルなミュージシャン達によるピンク・フロイドのカバーバンド、その名も原始神母。
バンドは木暮"shake"武彦(RED WARRIORS)氏の呼びかけで、PINK FLOYDを愛するミュージシャンたちが終結したバンドという事です。私は原始神母のライブを観に行くのは初めてなのですが、バンドのホームページからは、ライブでの高度な再現力と、愉しさに溢れている様子がとても伝わってきます。 そんな原始神母による『原子心母』の全曲再演。これは観に行かない理由などございません!
そして、上司と一緒に川崎クラブチッタへ。
ライブの模様を3回に分けてお伝えしていきたいと思います。なぜなら、コンサートが怒涛の長尺3部構成だったからです。

厳しい体調チェックを受けて早めに会場内に入ると、アルバム「おせっかい」が流れ、テンションがあがります。
開演時間が近づくと、リアルタイムのファンと思われる層から、レディオ・ヘッドをきっかけに好きになったと思われる若い世代まで幅広い客層で埋め尽くされていました。コロナ禍の中、会場は満員状態で、どれだけ期待されていたライブだったか知ることができました。この日のコンサートは同時に配信もされました。
第一部の最初の曲は何だろうという、ファン同士のお決まりの会話が始まります。開演までのこういった時間もライブならではの楽しみでした。
さて、会場内が暗転し、ライブが始まるとあの時計の音が….
1. Time/Breathe (reprise)

ライブはアルバム「狂気」のナンバー『TIME』からスタート。最初から再現度の高いイントロは舌筆に尽くしがたいクオリティ。幻想的なイントロの中、リード・ボーカルのケネス・アンドリューさんが紳士的な佇まいで登場。

Photo by 畔柳ユキ
木暮"shake"武彦さんによる必殺のギターソロの素晴らしさ、そして、リズム隊のうねるようなグルーヴと、華やかなオルガンやコーラスもこの曲の肝だった事を改めて思い出させてくれます。
レコーディングされたアビー・ロードスタジオに一気にトリップしたような圧巻のオープニングです。また音響がアルバム『狂気』の中の空気感をも再現している様で、バンドだけでなく関わっている方々全体でフロイドしている、感動的なオープニングです。

Photo by 畔柳ユキ
2. The Great Gig in the Sky

引き続きアルバム『狂気』から。前曲が終盤になるにつれ、場内の多くの方がこの曲を続けて演奏する事を期待していた事は想像に難くありません。 やはりやってくれました!

Photo by 畔柳ユキ
オリジナルのクレア・トリーによる熱唱に全く劣る事なく歌い上げるラヴリー・レイナさんのボイス。そして掛け合うようにサポートする冨田麗香さんの声、浮遊感あふれるギターとハモンド。意表をつくような柏原克己さんのニック・メイソンスタイルのドラミング。音響の効果もあって『狂気』を身体ごと味わえる演奏です。最後はレコードと同じように残響音がフラットするところまでも再現。無敵です。
3. High Hopes

私の様な後追い世代にとって、リアルタイムでピンク・フロイドを体感できた数少ないアルバムの一つである『対』から。さまざまな世代に配慮した選曲をしているところは、プロフェッショナルなトリビュートバンドを観に行く醍醐味の一つと言えるでしょう。表現力豊かなボーカルのケネス・アンドリューさんは少しデビッド・ボウイを彷彿とさせるところがあります。

Photo by 畔柳ユキ
デイヴ・ギルモアのソロのライブDVDや、ロジャー・ウォーターズのサントラアルバムでの客演を思い出したりしました。
「High Hopes」オルタナ世代に嬉しい選曲。
4. Have a Cigar

アルバム『炎』から日本でもシングルカットになったナンバー。オリジナルはロイ・ハーパによる熱唱ですが、今回のライブで聴いていますと、もしデイヴ・ギルモアがこの曲を歌ったら…と妄想してしまいます。パフォーマンス力溢れたボーカリストの力量がさらに輝きを増してきています。

Photo by 畔柳ユキ
5. Pigs on the Wing 1

アルバム『アニマルズ』のオープニングナンバー。ロジャー・ウォーターズによるフォークの小品を、ベーシストの扇田裕太郎さんが、アコースティックギターを弾きながら実に素晴らしい声で歌い上げています。

Photo by 四海尚子
いつか原始神母に「マザー(THE WALL)」もやってほしいなぁ。
6. Sheep

再びアルバム『アニマルズ』からの人気曲を。ベスト盤『時空の舞踏』にも収録され、アルバム『アニマルズ』の壮大なハイライトとして人気のナンバーです。
この曲が第一部のエンディングにてプレイされた事を喜んだファンも多かったと思います。

Photo by 森島興一
原始神母というバンド特有のグルーヴと一体感をこの曲で特に感じました。「ただのコピーバンドではない」と言わんばかりにメンバーの個性すら感じたのは、何も曲調によるものではないと思います。
三國義貴さんと大久保治信さんによるエレピとシンセが70年代特有のサウンドを強力に彩っておりますが、照明の素晴らしさも特筆もの。70年代ロックのコンサートの華やかさを再現している様にも感じ、当時のフロイドのライブを夢想してしまいました。
以上6曲を演奏して、第一部が終了。
ステージ上のメンバーは、以下の通りですが、全体的にルックスの良いキャラクターのステージングである事も、プロフェッショナル・トリビュート・バンドたる重要な要素と思います。視覚と聴覚を酔わせて、ここではないどこかへ連れていってくれるフロイドの醍醐味を再現するバンドを初めて体験しました。
PINK FLOYD TRIPS 第一部 2021年4月3日川崎クラブチッタ
原始神母 メンバー(敬省略)
木暮"shake"武彦(Guitar)
三國義貴(Keyboards)
大久保治信(Keyboards)
扇田裕太郎(Bass, Guitar, Vocals)
柏原克己(Drums)
ケネス・アンドリュー(Lead Vocals)
ラヴリー・レイナ(Chorus)
冨田麗香(Chorus)
そして、お次は大目玉の第二部。
待ちに待った名作『原子心母』の全曲再演ライブです。
続きは次のブログでお伝えしましょう!

Photo by 四海尚子
原始神母ホームページ
http://pinkfloydtrips.com/
Facebook:@pinkfloydtrips
Twitter:@genshi_shinbo
Instagram:@genshi_shinbo
最後に!サウンドハウスで取り扱っているフロイド心をくすぐるアイテムをひとつ。
BUFFALO FX ( バッファローエフェクツ ) / Patriot
オリジナルモデルは、Division Bellツアーでデヴィッド・ギルモアのペダルボードに置かれていた名器。90年代初期に作られたロシア製のBig Muffをベースに制作された、ラウドかつヘヴィなファズ/ディストーションペダルです。ライブアルバム『P.U.L.S.E』が好きなギタープレーヤーの方はぜひ!!