第2回 ザ・ビートルズ/リボルバーでM44Gの針で「効き比べ」!(A面)
リスニング用としてもDJ用としても、長年にわたって多くのレコード愛好家に親しまれていたSHUREのレコードカートリッジ「M44G」。
生産完了になって歳月が経った今も、このカートリッジから離れられないレコードリスナーやDJプレーヤーが多くいるのは周知の事実でございまして、その証として実にM44G愛溢れる対応針が現行品として販売されております。
サウンドハウスでも二種のレコード針を扱っております。※2024年10月時点
前回のこのシリーズのブログにて、会社のレコード好きな仲間とビートルズの新曲12インチの聴き比べをしたところ、その二種の音の違いに驚愕したものでした。
そこで、前回に続きまして、ザ・ビートルズのアルバムを1枚まるまる再生して、M44Gの針を聴き比べならぬ「効き比べ」をしたいと思います。
ビートルズのどのアルバムで効き比べするか実に迷いますが、今回は1966年のアルバム『リボルバー』にて効き比べすることにしました。
選んだ基準としては、目まぐるしく進化を遂げてきたザ・ビートルズの作品の中でも、ビート・グループとしての名残を少し残しながらも、ストリングス、ブラス・サウンド、打楽器を含んだインド音楽などなどをフィーチャーし、オアシスやポール・ウェラーを例に出すまでもなく後のUKポップシーンに影響を与えるほどの革新的なサウンドをギュウ詰め にした内容のため、トリップ感満載の効き比べが期待できそうだからです。
そして今回は、友人からアメリカ土産でいただいた、リリース当時にアメリカの工場で生 産された盤、通称USオリジナル盤にて聴き比べをいたします。当時はアメリカでもイギリ ス同様、ステレオ盤とアメリカ盤の二種がリリースされていますが、M44Gはステレオで再 生する針なので、ステレオ盤で効き比べをいたします。
「イギリスのグループなのにイギリス製のオリジナル盤で聴き比べをしないのか?」「US 盤はイギリス盤よりも3曲少ないじゃないか」というお声も聞こえてきそうですが、UK オリジナルのステレオ盤は状態がいいものとなると、モノラル盤以上に入手が困難な上、家族持ちの私にとっては高額なアイテムなため、今回は比較的お財布に優しいながらも、スィンギン・ロンドン時代のビートル・エナジーがダイナミックに炸裂するUSオリジナル盤で楽しみたいと思います。UK盤とUS盤のステレオ盤の違いを挙げていくとキリがないと思いますので、詳しくはビートルズコレクターの方のブログなどをご参照いただきたいのですが、一度UKオリジナル盤とUSオリジナル盤を聴き比べる機会があった際の印象として は、身体に真っすぐとガツンと来る迫力のUK盤、目の前がハリウッドの景色の様に広がっていくパノラマワイドなUS盤という印象でした。
さて、それでは効き比べ様用に用意しました、二つの針をご紹介しましょう。
今回も使用する針は信頼のNAGAOKAとDJ用針の新鋭ブランド100 SOUNDSによる交換針です。
NAGAOKA ( ナガオカ ) / DJ-44G - M44G・M44-7対応 交換針
音質実剛健なタフさを損なわず、よりパワフルな音圧、かつ繊細なワイドレンジで迫力の あるサウンドを実現させたモデルということで、聴きこむにもよし、DJでもアガる音質が 魅力です。針先部分にカバーがあり、リスニングユーザーへの配慮の拘りに泣けますね。 BEACH BOYSのアルバム『20/20』をこの針でかけましたところ「Be With Me」のストリングスやブラスのダイナミズムに圧倒されました。
100SOUNDS ( ヒャクサウンズ ) / RS-44-100B M44G/M44-7対応 交換針
さまざまなスタイルの楽曲をトランシーに鳴らすところが魅力で、レゲエやソウルをかける際、低音域の轟音とシャウターボイスを強調するようなサウンドが魅力です。ちなみにポール・マッカートニーの 「Good Sign」や「S.L.S.」の12インチはこれでよくかけています。金属パッケージをスライドする瞬間もテンション上ります。
さてそれではA面から「効き比べ」をしてみましょう!
なお、この聴き比べの感想はあくまで主観でございまして、プレーヤーやアンプ、スピーカーによって音質も変わってきますことをご了承ください。今回も比較的庶民的なオーディオ環境で再生しておりますが、逆にそれほどハイエンドな機器でなくても、オリジナル盤が放つ音の迫力、リアリティを結構楽しめるものとしてご参考になれば幸いです。
SIDE-ONEアナログA面
1. Taxman
●NAGAOKA
この針で聴くのは初めてですが、後に聴いた100 SOUNDSの針や他のカートリッジ+針で聴いたとき時と比べて左右の音の分離を強く感じます。リアルタイムのアメリカのリスナーの耳の世界にバーチャルトリップしたかのような、60年代中盤までのステレオ盤の音をじっくりと楽しめますね。最初のカウントの部分で聴こえる周辺の音が実にリアルかつ太く響き、この瞬間からアガるサウンドです。左のカウベルが実にクリアで、目の前にリンゴがいるみたいですね。ギターソロの後ですが、ベースリフに合わせたギターがラウドに鳴り響き、UKオリジナル盤のモノラル盤を聴いている時を少し思い起こさせます。
●100 SOUNDS
左右のチャンネルの分離感はNAGAOKAほど感じさせないため、むしろ今日的なサウンドといった感じでしょうか。また、ギターの音にエッジさが加わっているように聴こえ、ガレージロックのようなカッコ良さです。ギターソロはクリアさよりもラウド感が増した感じで実にロッキンな佇まい!60年代ソウル・ガレージなカッコよさ!!ダンスフロアで大音量で暴れながら聴きたくなります。プリティ・シングスのアメリカでの1STアルバムもこれで聴いてみたくなりました!!
2. Eleanor Rigby
●NAGAOKA
ストリングスが実に気品と迫力に満ちていて、特にバイオリンの音の響きが実に素晴らしい。まるでお部屋の中がお花畑!ポールのボーカルも実に活きいきしています。やはりアメリカ盤の音、捨てがたいです。家に室内楽団を呼んだらこんな感じなのでしょうかと、少し大げさかもしれませんが、そんな錯覚すらします。さすがはNAGAOKAの針!
●100 SOUNDS
先ほどの"Taxman"ではむしろ今日的なサウンドと書きましたが、ストリングス中心のこの曲ではアメリカ盤特有の雑味を逆に活かした様なサウンドが団子状に轟きます。 クラシック音楽のSP盤で聴くときのような、 古き良き時代のエモい迫力!アメリカ盤を聴いているにも拘わらず、今も古い建物が残るリバプールの街並みも思いだします
3. Love You To
●NAGAOKA
シタールやタンブーラ(ビーンと伸びる音のインド楽器)の音が強力なパレットになっていて、パレットの上に重なっていくボーカルとタブラ(インドの打楽器)の力強さ。ジョージの声が逞しく聴こえます!また打楽器タブラの響きがトランシーに響き、以前の NAGAOKAのM44G対応モデル以上にDJユースにも対応していることがこういう曲で発揮してしまうほどの高品質!!
●100 SOUNDS
こちらはシタールの音が強く、逆にタブラやボーカルがまろやかに聴こえますが、しかしながらボーカルが大きめで、アメリカ盤のボーカルもののレコードでよく聴かれる様に、歌とメロディー楽器のシタールが大きく支配。 ELECTRO-HARMONIXのギター・エフェクターRAVISH SITAR で遊んでみたくなります。全体の響きがポップに聴こえるのは、ビートルズによるインド音楽という先入観からか、100 SOUNDSのこの針でよく聴けるフックの強さによるものなのか興味は尽きません。
4. Here, There and Everywhere
●NAGAOKA
ボーカルはいかにもダブル・トラックという印象を強く受け、ステレオ盤を聴いている事を強く印象づける感じです。またタムの音がクリアで、時折左側から登場するエレキギターがすごく近くで弾いているかのようなリアリティ溢れる音です。
●100 SOUNDS
メインボーカルとコーラスの温かみが印象深いです。いつもは低音の力強さを楽しんでいることが多い針ですが、この曲ではボーカルやコーラスの温かみや優しさがメインとなって一丸となって響きます。モノラル盤に近い実に温まる音です。
5. Yellow Submarine
●NAGAOKA
左側から飛び出すリンゴのボーカルが力強く、今まで聴いた他のどの針よりもリンゴの歌声が曲を支配。ビートルズではなくリンゴのレコードを聴いているのかと錯覚すらするリンゴの世界で、ポール・ファンの私がリンゴ・ファンになったかの様に錯覚する危険すら感じましたW。M44Gをお持ちのリンゴ・ファンの方なら、この曲のためだけにNAGAOKAのこの針を買ってもいいかもしれません。
●100 SOUNDS
リンゴのボーカルのリバーブが少し強く感じます。ギターや他の楽器もNAGAOKAよりも少し大きく、バンドっぽい音。ザ・ビートルズ全員による「イエロー・サブマリン」。私は ポール・ファンであると我に還った音(?)。
正直この曲でここまで二つの針での音の違いが出るとは思いませんでした。リンゴに聴かせたらどっちを選ぶだろうか 笑
6. She Said She Said
●NAGAOKA
イントロから続くギターが歌に負けじと絡み合うように鳴り響きます。またオルガンの音が今まで聴いたどの針よりも大きく聴こえました。恥ずかしながらこの針で聴くまで、オルガンの音はほとんど意識していなかったので、新たな発見に喜んでいる次第です。またシンバルの響きの粗さがほどよく響き、スネアの音も良く聴こえ、リンゴのドラムセンスの良さを再発見しました。
●100 SOUNDS
ドラムとベースがいい意味で不安定に大きくなるサイケ・グルーヴ感。ポール・ファンもニンマリなベースの強さが嬉しいです。ポールのソロ・アルバム『McCartney II』などで聴けるお遊び感覚が好きな私には、このアメリカ盤による音の雑味を活かしたガレージ感がたまりません!
とここまでザ・ビートルズのアルバム『リボルバー』のA面を二つの針で効き比べいたしましたが、両方とも違う個性を放つM44G用交換針。正直甲乙つけづらいですが、B面にはどんなM44Gマジックがこのアルバムから飛び出すのでしょうか。
気になるB面の聴き比べは、次回ブログにて!