
DJ用途のみならず、リスニング用途にも大好評だったSHUREのM44Gカートリッジ。約半世紀にもわたり多くのリスナーを魅了してきた針ですが、2018年頃に惜しまれながらも生産/供給終了へ。そんな中、国内を代表するレコード針メーカー「NAGAOKA(ナガオカ)」と、気鋭のDJ機器ブランド「100Sounds(ヒャクサウンズ)」が対応の交換針をラインナップ!
そんな伝説的カートリッジM44G用の交換針、ナガオカ製と100SOUNDSでサウンド特徴にどのような違いがあるのか、ポール・マッカートニー最新作にて``利き``比べしてまいります!
今回``利き``比べした音源〈マッカートニーⅢ〉(2020年12月18日発売) SIDE-ONE

1970年にリリースされたポール・マッカートニーの1st ソロアルバム「McCartney」。そして妻との共同名義によるアルバムや自ら結成したバンド、ウィングスの作品を経て、1980年に10年ぶりにリリースされた2ndソロアルバム、「McCartney II」。いずれも、ほとんどの楽器をポール自身で担当して作成された、セルフプロデュースによる、お遊び感覚満載なアルバムです。
どちらもリリース当時は賛否両論が巻き起こった問題作だった様ですが、主にソロ時代のポール・ファンの中には、何回も何回もスルメを味わうように聴き続け、二枚のローファイな作風を親しんで来た方も多いかと思います。
さて、時は2020年。2ndソロアルバム「McCartney II」から40年の時を経て作成された、ポールの新作は、そのお遊び感覚シリーズの第3弾ともいうべき作品になる事を示唆したかの様なタイトル。
その名も「McCartney III 」。
アナログ盤もリリースされ何種類か限定のカラーレコード等色々出ている様ですが、まずは通常仕様のアナログをSHUREが生んだレコードカートリッジの逸品M44Gで聴いてみたいと思います。
しかしこのM44G、現在純正の交換針は廃番のため、サウンドハウスで販売されている交換針二種類を用意。
この実験性満載であろう最新作を、それぞれの針で二回聴き倒してみる事にいたしました!
NAGAOKA / GD 63-44G
歌や、アコースティック楽器、鍵盤楽器がリアルに優しく響く印象で、私はウィングスの「ロンドンタウン」はこの針で聴く事が多いです。
100SOUNDS / RS-44-100B
ロックやソウル、クラブミュージックを、パワフルに、トランシーに聴きたい方におすすめかと思います。
ポールの作品ですと、ファイアーマン名義の1stやアナログオンリーのアルバム「TWIN FREAKS」はこれで聴いています。

さて、さて、レコードを取り出して聴いてみましょう。

シュリンク上に張られたステッカーにあるMADE IN ROCKDOWNの文字が示す通り、2020年のコロナウィルスによる密集自粛の情勢をきっかけに、殆ど一人によるセルフプロデュースのアルバムを作成したのでしょうか。

外出自粛は日本でもまだまだ続く可能性はありますが、そんならとことん、このアルバムに付き合おうじゃありませんか。
では、それぞれの針で二回づつ聴き比べてみた印象を曲毎に書いていきます。
私はビートルズというよりも、ポール・ソロ作品のファンにつき、例え話の中に、ポールのニッチなソロナンバーの曲名や、ポール・ファンにしかわからない様ないい回しも出てくるかもしれませんが、モノはポールのアルバムです!ファンの方にニンマリなブログとなれば幸いです。

1、Long Tailed Winter Bird
1st ソロアルバム収録の「Valentine Day」等を彷彿とさせる、インスト。お遊びアルバム二作のファンにはニンマリな堂々たる三部作の幕開けです。
ブルージーなリフながら、グッドナイト・トゥナイト風コーラス、ファイアーマン風アンビエントエフェクト、「Off The Ground」風ギターカッティングも飛び出し、この3部作ならではの不思議ちゃんワールドに早速引き込まれます。さて二つ針からどんなサウンドが飛び出てくるか…

● NAGAOKA
イントロのアコースティックギターの響きが透明感ある様に、伸びるようにキレイに響きます。コーラスもキレイで、1980年代のジョージ・マーティンがプロデュースした3作品を思いだします。
● 100SOUNDS
イントロのギターがちょっとタイトでギターのカッティング、アンビエントなサウンドコラージュが目立ち、リズムトラックもこの曲で踊るならこっちの針でしょうか!
2、Find My Way
アルバム中最もキャッチーでシングル向けポップ・チューン。
2018年のアルバム「エジプト・ステーション」の名残も感じます。熱心なファンでなくても、すんなり入れそうなナンバーかと思います。
● NAGAOKA
スビーカー左右から飛び出すリード・ギターの音の戯れが、木漏れ日の様に降り注いで来る所はこの針で再生しての醍醐味でしょうか。至福の時!
● 100SOUNDS
やはりベースの低音の響きが濃厚で、サイドギターがドライブします。ドラムの軽い感じが要所要所でいい響きを出してくれます。終盤のアウトロ含めこの針で鳴らす事で「使える」トラックに!
3、Pretty Boys
2013年アルバム「NEW」に収録された「Early Days」直径の秀逸なメロディがニンマリで、ネオ・アコなアレンジもナイス。あるところでは歌よりもエレクトリック・ギターの音色が目立ったり等、音のバランスに疑問を持つ方もいるかもしれません。しかし実はこれこそ、このお遊びシリーズの醍醐味といいますか肝になるところで、ルール無視なセルフプロデュースを楽しんでいる様子が伺える、ファンにはキラーなナンバーです。
● NAGAOKA
エレクトリック・ギターの響きが目立ちながらも、素朴で、自然な味わい。ボーカルが少し控え前で歌がギターを盛り上げる様な不思議なポップ感覚を味わえる箇所も。
● 100SOUNDS
アコースティックギターと歌が力強く響きます。前述のエレクトリック・ギターが目立つところは一緒ですが、歌とともに盛り上がる感じでした。
4、Women And Wives
アルバム「RAM」の「Dear Boy」を緩くした様な、哀愁漂うマイナーコードナンバー。そう思いながら聴くと、このタイトルはポールの前妻の事なのでしょうか。
● NAGAOKA
ピアノの響きが、濃厚に響き、「You Gave Me The Answer」を思い出しました。深い音色を出してくれます。
● 100SOUNDS
正直この曲、特に歌については、ナガオカの針でなきゃと思っていましたが、ナガオカに負けない位に歌の特徴を楽しめました。
5、Lavatory Lil
若き日のポールが聴いていたと思わしき、トミー・タッカーのR&Bクラシック「Hi-Heel Sneakers」へのオマージュも感じるナンバー(1991年のアルバム「Unplugged」でこの曲をカバー)。「McCartney II」の「Boggy Music」に通じるやんちゃっぷりが楽しいです。1999年のキャバーンクラブのライヴDVDを取り出したくなる程のガラ悪UKロックのお手本!

● NAGAOKA
低音のボトムはほどよくロックに響きます。バックコーラスの響きも迫力があるため、イギリス北部の荒くれパブすら思い出しますw
ビールかサイダー片手に酔っぱらいながら楽しみたいサウンドでしょうか。
● 100SOUNDS
ドラムやベースのウネリが良く、トミー・タッカーの7インチシングルを聴いている時の様なグルーヴィな感じがたまりません。やはり100SOUNDSはクラブ向けでしょうか。

6、Slidin
レコードではこの曲でA面が修了。一区切りつけるのにふさわしいロックナンバー。
*CDとは次の曲と順番が逆。
Fireman名義の3rd アルバムのオープニングナンバーみたいな、ヘルタースケルターチックなヘヴィギターがうねる曲。「I’ve Had Enough」「Nobody Knows」等、イントロのギターがカッコいい曲がA面ラストに来る事が多いですね、ポールのアルバムには。
● NAGAOKA
シンセベースが目立つ分、全体が音の塊になる様な迫力です。
この曲ではそれまで聴いた、ナガオカのこの針のサウンドと違って聴こえて楽しいです。
● 100SOUNDS
ドラムのスネアやハットの音が良く耳に入ってくる感じがトランシーです。ベースも耳にというゆりも身体に響く太さ。
と、ここまでがA面となります。
B面にひっくり返した後、どんなポップマジックが、M44Gと二つの針から飛び出すのでしょうか。続きは次回ブログにてご紹介いたします!
