皆さんはエレクトリックバイオリンのアンプと言われて、思いつくメーカーや商品はありますでしょうか?実際に試しに検索欄で「エレクトリックバイオリン アンプ」と調べても、求めている情報や商品は今一つヒットしなかったことかと思います。そんなネットにもほぼ情報が少ないエレクトリックバイオリンのアンプについて、今回は実際にアンプにつなげて音を出してみましたので、その音の紹介を交えておススメのアンプを紹介していきます。
エレクトリックバイオリン用のアンプは存在するのか
最初に結論から言ってしまいます。エレクトリックバイオリン用のアンプという商品はありません!
「エレクトリックバイオリン専用のアンプって販売してないの?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、現時点で私の知る限りでは、エレクトリックバイオリン用のアンプは見たことがありません。(もしかしたら世界中を探せばアンプを作っているところもあるかもしれないですが…)やはりこういうところでも、バイオリンのプレーヤーが少ないことが影響しているのかもしれません。どなたか開発してください(笑)
ではどうするのかというと、他のアンプで代用するしかありません!
となると、どんなアンプで代用できるかを考えていきます。
エレクトリックバイオリンに使えるアンプ

代用で使えるアンプを考えるうえで、そもそもバイオリンというのはどんな楽器の分類とされているのか、構造上近い楽器はどんなものがあるのか知る必要があると思い調べてみました。
バイオリンは「弦楽器」という種類に分類されるのは皆さんご存じかと思いますが、調べてみると実は弦楽器という言葉は下記の表のようにさらに細かく分類することができるようです。
弦をはじいて演奏する 「撥弦楽器」 |
弦を擦って演奏する 「擦弦楽器」 |
弦をたたいて演奏する 「打弦楽器」 |
ギター・エレキベース・チェンバロ・箏・三味線など | バイオリン・ビオラ・チェロ・コントラバス | ピアノなど |
この中で気になったのはやはり「ギター」でした。ピアノにも「キーボードアンプ」というものがありますが、ギターの方が木のボディで製作されている点などバイオリンと似ている部類だと思い、エレクトリックバイオリンのアンプの代替品としては「ギターアンプ」で考えていくことにしました。
またギターアンプといってもいくつか種類がありますが、ここは生音が特徴の「アコースティックギター用アンプ」で絞っていきます。
アコースティック用ギターアンプを調べてみた
エレクトリックバイオリンのアンプをアコースティックギター用アンプから探すにあたって、事前にあったらいいなと思うエフェクトを考えてみました。
① イコライザー
音作りに必須なものです。大抵のギターアンプにはTREBLE(高域)/ MIDDLE(中域)/ BASS(低域)は備わっていることが多いです。バイオリンはギターと違い弦を擦るため、どうしてもこの弦を擦る音をピックアップが拾ってしまいます。そのためイコライザーでどれだけこの擦れる音をカットできるかが重要となります。
あとエレクトリックバイオリンを弾いたことがある人はわかると思いますが、とにかく音がこもります。そもそも代替で使っているので当たり前ですが、楽器の帯域が合っていないので、TREBLE(高域)をブーストさせて音をはっきりさせる必要があります。よってイコライザーは必須です。
② リバーブ
バイオリンはその音質の性質上、リバーブのエフェクトとの相性が抜群です。音にリバーブをのせるだけで、コンサート会場にいるようなきらびやかな音に変化します。そのためリバーブも必須として考えてみます。
この2点を踏まえて、今回はアンプにどちらもこの機能が備わっているアコースティックギターのアンプをいくつか見繕ってみました。
VOX ( ヴォックス ) / VX50-AG アコギ用ギターアンプ
YAMAHA ( ヤマハ ) / THR30IIA Wireless アコースティックギター用アンプ
BOSS ( ボス ) / ACS-LIVE Acoustic Singer Live
どのアンプもユーザーから人気のある、アコースティックギター用のアンプです。
ひと通り見比べてみて、どれがエレキバイオリンに一番向いているのかと言われると……やっぱり実際に弾いてみないと分からないのが正直なところ。そして、比較しているうちに1つあるギターアンプが目に留まりました。
それが…YAMAHA「THR30IIA Wireless」です!
この商品は他のアコースティックギター用のアンプにはないエフェクトがありました。それは「TONE SELECT(トーンセレクト)」です。
YAMAHA製品ならではのこのトーンセレクト、中でも「NYLON STR」を項目から見つけた時、これが一番合うかも…と思いました。
● トーン一覧
トーン | 解説 |
---|---|
FLAT | 入力された信号をそのまま出力します。[TONE BLEND]つまみはゲインとして機能します。 |
NYLONSTR | クラシックギターやエレクトリックナイロンギター演奏に最適なサウンドです。 |
TUBE | アコースティックギターの音を真空管マイクで拾ったようなサウンドを再現します。 豊かなミッドレンジが特徴です。 |
DYNAMIC | アコースティックギターの音をダイナミックマイクで拾ったようなサウンドを再現します。 芯があって引き締まった音が特徴です。 |
CONDENSER | アコースティックギターの音をコンデンサーマイクで拾ったようなサウンドを再現します。 自然で明瞭な音が特徴です。 |
※YAMAHA / THR30IIA Wirelessリファレンスマニュアルより
ポイントはバイオリンもクラシックギターもナイロン弦を使用しているという点。バイオリンもクラシックギターやエレクトリックナイロンギター(エレガットギター)と同様に、ナイロン弦を使用するのが一般的です。そのため、どちらも音色が暖かみのある似た傾向の楽器なので、このトーンセレクトの「NYLON STR」とエレクトリックバイオリンの相性がいいのでは?と思ったわけです。
そうと決まればさっそくお試し!というわけで、実際にこのアンプを使って音作りをしてみました。
アンプにつなげて実際に音を出してみた
今回使用した楽器はYAMAHAのエレクトリックバイオリン「YEV105」、アンプは前項目で紹介したYAMAHA「THR30IIA Wireless」です。実際の音も録音しましたので、併せてお聴きください!



サンプル 1
サンプル 2
結構いい感じではないでしょうか!エレキギター向けのアンプで鳴らした時にありがちなモコモコ感がなく、明瞭な音になったと思います。リバーブもきれいにかかっていていい感じです!
参考までに、エフェクトの設定は下記のように行いました。アンプの操作は専用アプリ「THR Remote」で行っています。トーンセレクトは「NYLON STR」です。
イコライザーは下記のように設定しました。TREBLEをブーストすることでE線の高音がはっきりと出てくれたので限界までブーストしつつ、弓の擦る音をカットするためにMIDDLEは抑えめ、BASSはカットしました。リバーブは気持ち多めにかけています。



いかがでしたでしょうか?結果としては非常に満足できる音が作れたと思います!
エレクトリックバイオリンをアンプで演奏したことがある人は分かっていただけると思いますが、音がモコモコすることが多いです。そのためYAMAHA「THR30IIA Wireless」は、かなりはっきりとした明瞭な音を作ることができたので、今後もおススメしていきたいと思います。かなり使える優れもの!!
YAMAHA ( ヤマハ ) / THR30IIA Wireless アコースティックギター用アンプ
なかなか競技人口が少ないエレクトリックバイオリンですが、この記事を読んで興味を持っていただける方が増えたらうれしいです!皆さんもぜひチャレンジしてみてください!