
Photo by Koichi Morishima Photography
プロフェッショナルなミュージシャン達によるピンク・フロイドのカバーバンド、その名も原始神母。4/3に行われたライブ「PINK FLOYD TRIPS 2021」は怒涛の3部構成で行われました。
第一部ではフロイドの代表曲を圧巻のパフォーマンスで見せつけてくれました。私たちを含むオーディエンスの興奮も最高潮に達した中、ついにあの名作『原子心母』を全曲再演する第二部が始まります!

『原子心母(Atom Heart Mother)』。1970年にリリースされた、ピンク・フロイドの代表的なアルバムです。
サイケリックなデザインのジャケットが渦巻く当時のミュージック・シーンにおいて、原っぱに牛がいるだけという、デザイナー集団ヒプノシスによる牧歌的で斬新なカバーアートも、大きな話題となったそうです。
アナログのA面に収録されたタイトル曲は、チェロやブラス・バンド、コーラス隊などを大胆に使った大作で、A面まるまる23分を支配したものです。初来日の際はバンド4人だけのシンプルな演奏で披露されていた様ですが、それでも来日公演における最大のハイライトだった事は、さまざまな書籍からも伝わってきます。
そんな日本のファンが一度は体感したいと憧れていた「原子心母」のアルバム同様の楽器編成による再演。ついにそれを身体ごと味わえる時がやってきたのです!
第一部が終わり、転換/休憩の時間となると、ブラス隊、チェロ奏者の座席、コーラス隊マイク等が次々と設置され、その光景に早くも場内にどよめきが起きます。
転換が終わり、原始神母のメンバー、10人のブラス隊、コーラス隊9人、チェロ奏者、そして指揮者もステージに登場。ゴージャスな光景にテンションあがります。

Photo by Koichi Morishima Photography
そして静かに鳴りはじめたゴーという低音オルガンサウンド、高貴なブラスの響き。本当に聴けるんだという実感が湧いてくるオープニング……。いよいよアルバムA面の大作「原子心母」の始まりです!
1、原子心母 Atom Heart Mother

1) 父の叫び - Father's Shout

Photo by Koichi Morishima Photography
メインテーマといもいえるこの雄大なパートが始まった途端場内は大興奮の渦。ここに集まったファン達にとって、アルバム『原子心母』、そして楽曲「原子心母」に抱いていたさまざまな想いが噴出した様な忘れられない瞬間と言えるでしょう! 本物のブラス・サウンドは勿論、ハモンドの響きもこの時代のロックが好きな私には鳥肌ものでした。
2)ミルクたっぷりの乳房 - Breast Milky
生演奏だとさらに深く聴こえるチェロの音色が、キーボードのアルペジオとともに幻想的に絡んでいきます。続いてドリーミーなギター・ソロが入り、まさにトリップ状態。と思えば一転して激しくなる部分を完璧に再現。さすが木暮"shake"武彦さん!そしてコーラス隊が本パートを更に盛り立てていき、今、正に「原子心母」を聴いているんだという感動を覚えます。

Photo by Koichi Morishima Photography
3)マザー・フォア - Mother Fore

Photo by Koichi Morishima Photography
オルガンサウンドと印象的なベースラインではじまるこのパート。ラヴリー・レイナさんのボイスと、追いかける様に重なっていく冨田麗香さんの声。そしてコーラス隊が加わり荘厳なムードの中、静かに、とても静かに盛り上げていく様は、筆舌に尽くしがたいスリリングさです。またドラムとベースのサウンドが入ったあとの音響バランスも、プロフェッショナルというだけで容易にできるものではないと思います。このパーツの醍醐味を解っている人々だけにしかできないセンスと尽力にただひたすら感動します。
4) むかつくばかりのこやし - Funky Dung

Photo by 畔柳ユキ
「原子心母」の中で最もロッキンなパートです。魅力的なギター・ソロを大フィーチャーしたナンバーですが、こうやってライブで聴くと、木暮"shake"武彦さんによるギター・サウンドがさらにギルモア風といいますか、ロッキン&ブルージーな音色に聴こえて実にカッコいいです。同時に扇田裕太郎さんのベースと柏原克己さんのドラムからなるリズム隊、そして大久保治信さんによるホットなエレピが醸し出すグルーヴがギター・ソロを盛り上げます。第一部で聴けた「SHEEP」での演奏に通じるホットなグルーヴ。これもまた原始神母が第一級のトリビュート・バンドたりうる重要なキーでもあると感じます。グルーヴに耳を奪われると同時にフロイドのトリビュートを楽しんでいるというよりも、原始神母というバンドのサウンドを楽しんでいる自分に気づきました。パート後半になると三国義貴さんのシンセ、コーラス等、細部にわたっての「原子心母」再現を満喫。まさに至福の時。
そして再びメインテーマに戻ったあと、前衛的なパートに突入します。
5)喉に気をつけて - Mind Your Throats, Please

Photo by 畔柳ユキ
同曲中もっとも再現が難しいのではとも思ったこのパート。メロトロンはじめ幻想的なサウンドを繰り広げる三國義貴さんと大久保治信さんによる鍵盤バトル。そして交差するように鳴り響く高域の声はボーカルのケネス・アンドリューさんが担当。手に汗にぎります……。見事に最後までやってのけてしまいました。
6) 再現 – Remergence

Photo by 四海尚子
「原子心母」最後のパートである「再現 - Remergence」。これもライブ演奏となると非常にバランスが難しそうですが、完璧にやってのけた後、メインテーマとBreast Milkyに再突入。

Photo by Koichi Morishima Photography
そして最後のバンド、コーラス、ブラス全体による最後のメインテーマ大円団は、ライブでしか味わえない圧巻のフィナーレ。またもう1回聴きたい!オリジナルのアレンジを担当したロン・ギーシン本人に聴かせたら、原始神母ならではのグルーヴ感と再現度に驚く事でしょう。

Photo by 畔柳ユキ

Photo by Koichi Morishima Photography
興奮と大きな拍手が止まない中、バンドとブラス隊がステージに残りB面曲がはじまりました……。
2、もしも - If

ロジャー・ウォーターズによるアコースティックな作品。第一部で「Pigs on the Wing 1」を歌い上げた扇田裕太郎さんが、実に味わい深い歌を聴かせてくれます。歪んだギター・ソロの響きはギルモアのプレイの再現度も然る事ながら、歌の中にあるロジャーの苦悩も表現している様にも聴こえてきます。またピアノとエレクトリック・ギターの響きがオリジナル以上に、この時代のロック感が出ている様に感じたのは私だけでしょうか。このきめ細かさは日本のトリビュート・バンドのライブでしか味わえないサウンドの妙だと思います。

Photo by Koichi Morishima Photography
3、サマー'68 - Summer '68


Photo by 畔柳ユキ
リチャード・ライトによるポップなナンバー。ステージにいたブラス隊が再び大活躍します。生演奏が加わることでフロイドのレコードで聴いている以上に気品溢れる英国風なサウンドに感じます。同時にピアノとハモンドサウンドを聴かせる二人の鍵盤奏者によるアンサンブル。本当に68年にタイムスリップしたかの様に感じます。
4、デブでよろよろの太陽- Fat Old Sun

デヴィッド・ギルモアによる緩やかなフォーク・ロック。ギルモアのソロのライブでも演奏されているナンバーですが、アルバムに忠実なアレンジを再現するだけでなく、ギター・ソロから響いてくるギルモア愛がここでも炸裂。

Photo by 畔柳ユキ
5、アランのサイケデリック・ブレックファスト
- Alan's Psychedelic Breakfast
ライズ・アンド・シャイン - Rise and Shine
サニー・サイド・アップ - Sunny Side Up
モーニング・グローリー - Morning Glory

アルバム『原子心母』の最後を飾るもうひとつの組曲。ミュージックコンクレートを含んだ内容のこの曲をまさかの再現!この曲に限った事ではないのですが、各楽器の音の厚みが凄まじく、身体にまるごと響きます。効果音もバンド側で制作していたのでしょうか。実にリアルです。ブレックファストの部屋に入ってしまったかのような感じはまさに「PINK FLOYD TRIPS」の名にふさわしいものでした。
第二部、アルバム『原子心母』全曲再演。
1曲目の「原子心母」の再現だけでも、相当なエネルギーを注いでいた事は想像に難くないこの名演。ピンク・フロイドへの愛情だけでは、実現できなかった事でしょう。まさに日本のロック史、洋楽史に残る奇跡の瞬間を体験したひと時でした。

Photo by Koichi Morishima Photography
そしてライブはまだまだ続きます。
第三部ではどんな驚きが待っているのでしょうか。
PINK FLOYD TRIPS 第二部 2021年4月3日川崎クラブチッタ
原始神母 メンバー(敬省略)
木暮"shake"武彦(Guitar)
三國義貴(Keyboards)
大久保治信(Keyboards)
扇田裕太郎(Bass, Guitar, Vocals)
柏原克己(Drums)
ケネス・アンドリュー(Lead Vocals)
ラヴリー・レイナ(Chorus)
冨田麗香(Chorus)
原始神母ホームページ
http://pinkfloydtrips.com/
Facebook:@pinkfloydtrips
Twitter:@genshi_shinbo
Instagram:@genshi_shinbo
最後に!サウンドハウスで取り扱っているフロイド心をくすぐるアイテムをここでもひとつ!
CHANDLER LIMITED ( チャンドラーリミテッド ) / RS124
1960年代、アビー・ロード・スタジオにおける録音で活躍した RS124 真空管バリアブル・ミュー・コンプレッサーの公式復刻モデル。
ALTEC 436を当時のEMIのエンジニアが独自に改良し、新たなコンプレッサーとして開発した製品がRS124。
英国アビー・ロード・スタジオで1960/70年代に行われた、ほとんどの録音で使用されました。
ピンク・フロイドやビートルズなどに代表されるあの歴史的ロックサウンドが、プラグインの擬似的なサウンドではなく、当時のままのハードウェアで再び鳴らされるという、「EMI」、そして「ABBEY ROAD STUDIO」のオフィシャル・ハードウェア・イクイップメントです。