はじめてのお買い物:CD・レコード編
クイーン / 愛にすべてを(Somebody to Love)

クイーンがボヘミアン・ラプソディを発表した年。私はまだ小学生だった。同級生にシングル・レコードを貸してもらい、その場面展開の多さとキャッチーなメロディに圧倒され、すぐこの得体の知れないバンドのファンになった。アカペラから始まり、バラード調になったかと思えば、泣きのギターを挟んで、オペラチックなパート。そしてハードロックな展開を経て、ドラマチックなエンディングへ。これだけ詰め込んでも曲は6分間。それでも「曲が長いのでラジオ局でかけてもらえない」と言われたらしいが、そんな心配をよそに、各国でヒットチャート1位を獲得。一気にクイーンは有名バンドの仲間入りを果たした。そんなことは知る由もない小学生。次に知りたくなるのは、歌詞の内容だった。英詞しか歌詞カードには書いていない。英語が堪能な親父に訳をお願いすると「これは人を殺す話だから、イイ歌じゃないね」と訳してくれなかった。私がまだ子供だったからだろう。B面はドラマー、ロジャー・テイラーの書いた「アイム・イン・ラブ・ウィズ・マイ・カー」だった。正直、同じバンドなの?と思える曲でピンとこなかった。このカップリングが後にバンド存続の危機をもたらす。あまりにも売れてしまったシングルの印税はB面作曲者へも支払われ、バンド内で収入の格差が生まれてしまったという。

話が横道にそれたが、初めて小遣いをためて購入したレコードはボヘミアン・ラプソディの次に発売されたシングル・レコードだ。中学生になっていたが、500円というお小遣いを一気に使うのは、勇気のいることだった。季節は秋。よく覚えている。というのは、店員に「後、2ヵ月待てば、アルバム出るよ。待てば?」と言われたからだ。「アルバムを買うお金がないんです。」何かとても恥ずかしくて悔しかった記憶がある。初めて買ったレコードを抱いて自転車に乗った。自転車のカゴに入れたら割れてしまうかもと思ったからだ。家に帰り、親父のオーディオ機材で「Somebody To Love」を聴いた。「凄い!凄い!」合唱団のようなボーカルとコーラスが波のように押し寄せてくる。しかも今回の歌詞はわかりやすい(笑)。親父も訳してくれた。「私に愛すべき誰かを探して!」なんだかわからないけど「愛だよ愛!」。よくレコードが擦り切れるほど聴いたという言葉があるが、このシングル・レコードは本当に良く聴いた。1枚しか持っていなかったから、擦り切れるほどとにかく聴いた。でも擦り切れなかった。擦り切れるとどうなるのだろう?B面が逆回転で聴こえるのだろうか?そういえば、B面は「White Man」というハードロック・ナンバーだ。これも良く聴いた。なぜなら、このレコードしか持っていなかったからだ。次に何のレコードを買ったかはまるで記憶にない。中学生になり図書館でレコードを借りることが出来るようになったからかも知れない。ただ、このレコードは未だに持っている。この曲の収録されたレコードも後になって買った。CD時代に入り、CDも手に入れた。それでも、初めてこの曲を聴いた瞬間は忘れられない。今は跡形も無くなったレコード屋さんのどこにこのレコードが売っていたか?いじわるに思えた店員の兄ちゃんの顔も鮮明に覚えている。たった500円だけど、色々なものが詰まったレコードだ。