私のコラムをご覧になられている方はご理解いただけるかと思いますが、私はストラトキャスターにしか興味がない。
確かに他のエレキギターのサウンドもライブや音源で聴くのは好きだ。ただ、テレキャスターで弾く自分は想像ができない。国産レスポールモデルも2本所有していたが、弾く時の「体との指板の角度」が馴染めず一年あまりで手放した。しかしラッカー塗装の虎杢、グレコのレスポールタイプは手放したことを今でも後悔している。
そのほか、Fender USAのLEAD1もケーラートレモロユニットを装備して高校生の時メインで使用していたが、ハンドメイドのワウペダルを買う資金を作るため手放してしまった。電装系はワンハムバッカーなのに3種類の音が出るように工夫がしてあって、機会があればまた使いたいと思っている。非常に重いアッシュボディでヘビィな楽曲に最適だった。
Aria Proのエクスプローラータイプも半年ほど所有していたが、マホガニー・ボディが私には合わなかった。
ストラトキャスター(以下ストラト)以外のギター遍歴はこれだけである。
アメリカの楽器業界の人にストラトの素晴らしさを「It has a beautiful shape, it's comfortable to play, and has incredible tone. It's perfect!」とコメントしたら、「まさにその通りだね。そのキャッチコピー何かの記事書く時に使わせて貰うよ」と言われた。

1981年日本のFender USAパンフレット。ストラトキャスター紹介ページ。私が初めて見た「本物」の写真。ちなみに左、カメラのフィルムに写っているのはレインボーのライブショット。日本のFender USAパンフレットに載ったアーティストは、単独写真としてはブラックモアが初めてである。(それまでの70年代カタログは女性モデルが載っていた)
前置きが長くなったが、本題。『私がサウンドハウスでストラトを買う』としたら、お世辞抜きに本気で買いたいモデルは何か?いくつか挙げてみたいと思う。
その1FENDER ( フェンダー ) / Made in Japan Traditional 60s Stratocaster, Black
ノーマルなストラトの中で一番「ロックする」機種。メイプルネックに平たく接着しているスラブ指板は太い粘りある音をアウトプットし、ネックも日本人には嬉しい細めのUシェイプ。ヴィンテージスタイルの指板でコードワークやカッティングに適するだろう。
オリジナルと違ってボディ材がアルダー材ではなくバスウッドだが、この材、あなどれない。万が一合わなかったら、パーツをモディファイしたら希望の音に近づける可能性がある、クセのない音響特性を持つボディ材なのだ。ピックアップを換えたり、振動系パーツを換えると望みの音に反映されやすい。よい意味でフラットなマテリアルだ。
聞くところによると、このモデルのギターと色違いのタイプをメインギターにしていたロリー・ギャラガーの(彼のストラトはサンバーストの塗装が剥がれボロボロだが)ストラトはバスウッドだったという説がある。彼も所々モディファイしている。アルダー材にこだわらない限り、このストラトはかなりのポテンシャルを秘めている。
その2FENDER ( フェンダー ) / Player Stratocaster Maple BLK
出来るだけ外観をオリジナルデザインにとどめ、さらに価格も抑え、現代にアップデートしたモデル。指板の平らな22フレットは現代のプレイスタイルには必須ポイントだ。ネックの反り調整もネックジョイント部を外すことなくできる。フレットもやや太め。チョーキングがしやすいだろう。ヴィンテージと比べてルックス・仕様が最も異なるのは2点支持のトレモロユニット。オリジナルよりシンプルな分、より正確なチューニングが保てて、アーミングのニュアンスも色付けがしやすいはずだ。
アルダー材のボディは深くコンター加工がされており、お腹に当たる痛さが軽減されてある。ピックアップは比較的パワーがあるシングルコイル。
テクニカルかつヴィンテージ感も備わったストラトだ。
また、ホワイト、サンバーストとともに飽きが来ず普遍的な人気を誇るカラーであるブラックという点も個人的にポイントが高い。
その3FENDER ( フェンダー ) / Player Stratocaster FR HSS MN
痛烈に欲しいシリーズ。激しいテクニカルな楽曲を演奏するなら、このスペックのストラトはサウンドハウスのラインナップでも筆頭機種ではないだろうか。まず、ハムバッカーがリアに搭載されていること。それもシングルサイズハムバッカーではなく、堂々とノーマルサイズのピックアップ。さらにフロイドローズ搭載。大胆なアーミングが出来るし、ルックス的にもオリジナルフェンダーよりメカニカルっぽい。指板もフラットでチョーキングや速弾きもしやすいはず。ネックもCシェイプでテクニカルな運指に適するだろう。
これだけロック向きに改良されている割には目が飛び出る程高くはなく、値段の高いエフェクターを購入するのを我慢しても、このギターを購入する価値はある。もしこの仕様に満足がいかなくなったら、パーツを徐々に変えていったら長く愛せる相棒となるだろう。
その4FENDER ( フェンダー ) / Made in Japan Heritage 70s Stratocaster Natural
一見、特に目立つ箇所のないノーマルなストラト。ところが他のストラトとは違い、木目のはっきりしたストラトだ。このギターのセールスポイントはボディ材がアッシュということ。楽器業界に詳しい方に伺うと、近年アッシュ材はアメリカ本土において伐採が激減していると語っていた。
その証拠にFender社は生産国に関わらずアルダー材、バスウッド材、または新しい材を中心にラインナップしており、アッシュ材のストラトは原則、CUSTOM SHOPの特注品を除き、ほとんど製品化されていない。
アルダー材とアッシュ材とでは、やはり音に違いがあるように思う。前者は比較的中域寄りで枯れた音だが、後者はパンチのある低域と煌びやかな高域が際立つ輪郭のある音だ。
日本製にしては高めの値段設定だがピックアップはグレードの高い物を搭載している。
メローなローズ指板とパワーあるアッシュ材が相互作用して独特な70sのサウンドを醸し出すだろう。サウンドハウスのストラトラインナップでも希少なスペックのストラトだ。
1970年代黄金期のロックを弾きたい人はぜひ!
その5FENDER ( フェンダー ) / Eric Johnson Stratocaster Sunburst
機材へのこだわりという点で尋常ではないエリック・ジョンソン。もちろん、素晴らしい楽曲を奏でる彼は、エフェクターの電池にまでこだわる聴覚を持ち、後のエレキギターの音質の向上に少なからず影響を与えた。
そんな彼が自分の名前を冠したモデルを発表するのに普通のありふれたギターである訳がなく、値段相応のハイグレード・ストラトだ。
ボディ材はアルダー。万人に好まれるこの材はUSA製レギュラー製品の中では最高のマテリアルを使用しているはず。またトレモロスプリングカバーをはずしているため、ネジ穴がない。よりオープンなエアー感あるサウンドになる。手間がかかるニトロセルロース・ラッカー塗装なのでボディも最大限に鳴るだろう。
ネックはフラットなメイプルネック。テクニカルなエリックの運指にぴったりであり、現代のギターに求められるラディウスだ。ヴィンテージな21フレット仕様だが最初からミディアムジャンボフレットが付いていることから、それなりの価格でも納得する。ヴィンテージタイプのフェンダーよりクラウンの高さがあるフレットなので寿命も長いと思う。
モデファイの中でも一番手っ取り早いピックアップ交換も、エリック用に設計した物なのでアップグレードしなくても満足するはずだ。
値段は流石に高いが、こだわり抜かれたギターと考えればこの位してもおかしくない。USAレギュラー製品では、最もCUSTOM SHOPに近いストラトであろう。
また仕様が違う数種類のモデルもあるため、要チェック。
スタンダードなルックスの中にも、こだわりが目一杯詰まった本格派シグネイチャー・ストラトだ。
以上、サウンドハウスで取扱いのあるストラトを中心に、私がコレクションにしたい機種を挙げてきた。学生でも買えるストラトから、玄人好みの高級機種まで紹介したが、値段にとらわれず自分が望むルックス、プレイアビリティー、音で考えて購入して欲しい。
ストラトは他の機種に比べてバリエーションが多い傾向にある。その分、自分にあった一本を見つけるのは難しいし、当たりを見つけた時の感激は計り知れない。誰でも知っているポピュラーなギターだが、じつに奥深い歴史とバリエーションがあると思う。一本一本出る音は全く違う。私もずいぶんメインギターが変わった。初めの一本から究極の一本に至る旅は楽しい。
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