
さる2022年9月27日、定番音源バンドルの最新作「KOMPLETE 14」が発売されました。
KOMPLETEには、全4段階(ハードウェア付属を含めれば5段階)のグレードがあります。単体で販売されている中で、一番安いのはKOMPLETE 14 SELECT(以下 SELECT)。
今回は、SELECTに含まれる音源・エフェクトについて、大まかな紹介と、実際の使用感、加えて、おすすめのプリセットをお伝えしようと思います。
長大な記事になってしまうため、記事を前後編に分けてお届けしていきます。
前編に当たる本記事では、KONTAKTライブラリ編と題し、業界標準サンプラー KONTAKT上で動作する音源を紹介します。
サンプラー・プラットフォーム
音源を使用するためのソフトウェアです。「KONTAKTライブラリ」と呼ばれる製品は、「KONTAKT」というプラットフォームを介して使用します。
Kontakt 7 Player
超有名ソフトサンプラー「KONTAKT」の機能制限版です。
NI社のライブラリであれば通常版と同じように読み込めますが、他社製のライブラリでは使用できないものが多くあります。SELECT内のライブラリはもちろん対応しているので、買い足す予定のない方はこのままでも大丈夫です。
Play Series
狙い通りのサウンドを簡単に出せる音源シリーズです。音作りをするよりも、すぐに演奏できることに重点を置いています。細かく音作りしなくてもそのまま使えるので、時短にもなりますね。ジャンル感を素早く出したいときには重宝しそうです。
Soul Sessions

KOMPLETE 14から新搭載の音源です。過去50年間のソウル・ミュージックで活躍した生楽器・シンセの音を奏でられます。
150のプリセットを収録していて、選ぶだけで簡単にソウルの雰囲気を味わえます。
とはいえ、決してソウルにしか使えないというわけではありません。多彩なプリセットの中から、即戦力のサウンドを選べる音源として非常に活躍してくれます。筆者は、マレット系の音が好きでよく使います。
個人的には、リバーブが深くかかっていたり、リリースの長いサウンドが多かったように思います。そのあたりを微調整すれば、より汎用性も高まりそうです。
☆おすすめプリセット:Luz Del Sol Vibes, The Bell Is Mine
ETHEREAL EARTH

シタールや銅鑼などの民族楽器を加工した、アトモスフィア系の音源です。なかなか使い所を選ぶとは思いますが、民族音楽的なスケールを演奏したり、パッドとして薄く入れたりなど、局所で効果的に使えそうです。
☆おすすめプリセット:Big Dumb Organ
HYBRID KEYS

鍵盤系、マレット系楽器の音を組み合わせたり加工して使える音源です。ピアノとして使うのは難しそうですが、音は良いです。
サンプルの組み合わせで音を作るので、自由度は低い反面、直感的に新たなサウンドを作り出せます。
内部のエフェクトの負荷が高いのが少々気になります。
☆おすすめプリセット:Bed Time
ベース
SELECTには、シンセサイザーを除くベース専用音源が1つしか収録されていません。その1つも、かなり個性的なサウンドです。
ベースのサウンドにこだわる場合は、上位バンドルや別製品が必要になってくるでしょう。
SCARBEE RICKENBACKER BASS

SELECT唯一の、エレキベース音源です。Rickenbacker公認のライブラリで、非常にロックに向いた音源だと思います。
ピック弾きによるアタックの強さが特徴で、他の楽器と混ぜても埋もれません。
ソフトウェア内部で音作りが完結できるよう、同社製のアンプシミュレーター「GUITAR RIG」が組み込まれています。アンプモデルは「JUMP」、マーシャル系のサウンドであることからも、歪みとの相性が良さそうですね。もちろん、DI音のみを書き出すことも可能です。
他の機能として、スライドやミュートなど各種奏法を再現する、キースイッチも搭載されています。筆者はまだ使いこなせていませんが……ピアノロール上ですべて編集できるので、使い勝手は良いと思います。
☆おすすめプリセット:The Raven
ピアノ・キーボード
4種類の鍵盤系ライブラリが収録されています。
鍵盤系の音源は、価格がクオリティに直結しやすいカテゴリです。その中で、比較的安価なSELECT収録音源は、ライバルの多いグランドピアノ以外の製品をラインナップし、差別化されています。
THE GENTLEMAN

アップライトピアノをサンプリングした音源です。SELECT内では唯一のアコースティックピアノ音源なので、必要になる場面は多いかと思います。筆者はアレンジにピアノを取り入れることが多いので、よく利用しています。
かなり細かくサウンドを調整することができ、エフェクトに頼らないアコースティック楽器らしい音作りを可能にしています。例えば、「TONE」セクションの「COLOR」つまみを調整することで、簡単に音の抜けやすさを変えられます。
グランドピアノに比べてアップライトは選択肢が少なくなりがちです。そんな中でも、THE GENTLEMANは入手しやすく便利なピアノ音源だと思います。
☆おすすめプリセット:The Gentleman
VINTAGE ORGANS

Hammond社のB-3をはじめとした、5種類のオルガンがサンプリングされた音源です。
オルガンの特徴であるドローバーでの音作りを再現しており、ロックやポップなどの音楽で使いやすい音源になっています。もちろんプリセットも充実しているので、慣れていない人でも簡単に楽曲へ取り入れることができます。
オルガン音源といえば、IK Multimediaの「Hammond B-3X」も有名ですが、VINTAGE ORGANSを持っていれば十分に満足できるのではないかと思います。
☆おすすめプリセット:Basic Rock 3, Keep Me Hangin On
SCARBEE MARK I

おそらくローズ・ピアノをサンプリングしたエレピ音源です。
音作りに不可欠なエフェクトも一通り搭載されているので、プリセットを基準に作り込んでいくのも良いでしょう。
古い音源ではあるので、最新の製品と比較すると見劣りする部分もあるでしょう。音量が小さめで強く弾かないと前に出てこない感じがあり、音量・ベロシティ等の調整は必須だと思いました。最初からMIDIで作り込むタイプの人にとっては、あまり気にならないかもしれません。
☆おすすめプリセット:Scarbee Mark I
RETRO MACHINES MK2

様々なシンセサイザーのサウンドをサンプリングした音源です。後編記事で紹介する「MASSIVE」などのソフトシンセと違い、音をゼロから作り出すものではありません。
とにかく膨大なプリセットが用意されていて、正直すべてを確認できませんでした。アレンジに困ったとき、一度ここを覗いてみると、良いアイデアが浮かぶかもしれません。
☆おすすめプリセット:Sub Bass 1, EP10 Piano
ドラム・パーカッション
本記事最後となる打楽器カテゴリですが、SELECTには純粋な生ドラム音源は収録されていません。ドラムのサウンドはジャンル感を左右する重大な要素なので、ここは少し痛いところ。王道ロックを作りたい人は、別の音源が必須かもしれません。
DRUMLAB

アコースティックドラムと、エレクトロ系のドラムサウンドをレイヤーできる音源です。UI内で簡単に混ぜ具合を変えられるので、他と違ったドラムトラックを作りたい人にはおすすめです。
また、タンバリン、シェイカー、クラップなどのパーカッションサウンドも収録されているので、使い勝手の良い音源だと思います。ただし、プリセットそのままではバンドもののロックには合わない印象です。
エレクトロ系ドラムの定番はドラムサンプラーのBATTERYですが、残念ながらSELECTには収録されていません。求めるサウンド次第では、DRUMLABを代用としてもいいかも?
☆おすすめプリセット:Drum Lab INIT, RnB Ballad
WEST AFRICA

民族楽器の音が手軽に使える、SPOTLIGHT COLLECTIONの音源です。26のパーカッション楽器と、8つの音程楽器が収録されています。
これらの音源は、個別に演奏できることはもちろん、パターンプリセットを用いて、指一本でアンサンブルを奏でることも可能です。パターンは、内臓のシーケンサーで簡単にカスタマイズできます。
ビートを任せて民族音楽の雰囲気を出すもよし、ドラムの裏でうっすら鳴らしてグルーヴを強化するもよし。個性的でありながらも、使い方次第では柔軟性の高い音源になると思います。
☆おすすめプリセット:Baga Gine
ここまで、KOMPLETE 14 SELECTに収録されている、KONTAKTライブラリのレビューをしてきました。
後編記事では、残りのソフトシンセやエフェクトプラグインについてのレビューに加え、実際にSELECTの収録音源を使って制作した楽曲も掲載できればと思っています。しばらくお待ちください。
今回もありがとうございました。