■ 私の入ったポリフォニックアナログシンセサイザーの迷宮
私は先日、サウンドハウスさんより、コルグ ポリフォニック アナログシンセサイザー PROLOGUE8ボイスを購入しました。
このPROLOGUE8の購入理由は後回しとして、8ボイスのシンセサイザーを気軽に購入できるというのは時代も変わったものだと思います。
アナログシンセサイザーの「音」のファンである私はこの40年以上、アナログポリフォニックシンセサイザーの紆余曲折をつぶさに見てきました。アナログポリシンセは時代と共に金額やスペックなど、アメーバのように変化を続けてきました。
私はアナログポリシンセの変化はシンセサイザーの迷宮ではないかと思っています。そして私はその迷宮をさまよい続けました。
今回、購入したコルグのPROLOGUEは私の入った迷宮からの1つの回答ではないかと考え、筆を取りました。
■ 当時は高価だったポリフォニックアナログシンセサイザー
1981年、ローランドのフラッグシップシンセサイザージュピーター8(8ボイス)は98万円でした。アマチュアの我々には手が出せない価格でした。シーケンシャルサーキット社のプロフィット5(5ボイス)は170万円、ヤマハのCS80(6ボイス)は128万円、オーバーハイムの8ボイスは450万円、その後のオーバーハイムOB-X(8ボイス)は240万円など、アナログのポリフォニック(和音)タイプの価格は非常に高価でプロのミュージシャンしか購入できない機材でした。
私があこがれたプロ仕様の高価なポリシンセは当時、手の届かない遥か彼方に存在していました。
当時の日本のメーカーの比較的購入しやすいかったローランドのジュピター4(4ボイス)で38万5000円位でした。それでもアマチュアには高嶺の花でした。
■ テクノロジーの最先端にあったアナログポリシンセ
40年の時間が流れ、アナログのポリシンセがアマチュアにも手が届く価格になったことには隔世の感があります。
アナログポリシの迷宮は暗く深く、一度入った者はこの迷宮から出ることができません(笑)。なぜならシンセサイザーは時代のテクノロジーと常にシンクロし、そこからこれまでにない新しい音や仕様が生まれてくるからです。そういう意味でシンセサイザーは時代を映す鏡なのです。
いい音を求めるのはプロもアマチュアも同じです。今回はこれまでの私が購入したアナログポリシンセやアナログモデリングポリシンセを交え、シンセサイザーを検証できたらと考えています。先ずは最新機種のレビューです。
■ コルグ PROLOGUE-8 アナログシンセサイザー
私は先月、このアナログシンセサイザーを購入しました。その理由はセール価格11万8,000円だったことと国内で発売された純然たるアナログポリシンセであったということ、コルグのフラッグシップシンセであったこと、国内製の鍵盤であること、重量が10キロ以下だったことなど、多くの理由がありました。
コルグは数年前からモノシンセの名機、アープオデッセイの復刻に端を発し、ミニローグ4ボイス、モノローグ、そしてプロローグといったアナログシンセの開発に熱心であり、その集大成としてプロローグに辿り着いたという認識をもっていました。アナログシンセの開発に力を注いだコルグの最終章であるアナログポリシンセを使ってみたいという想いに駆られました。
プロローグの前の機種であるミニローグがコルグから発売された時にはクラッときて思わず購入ボタンを押しそうになりました。
KORG ( コルグ ) / PROLOGUE-8 アナログシンセサイザー
■ ミニ鍵盤と通常鍵盤との違い…もっと大きな理由は?
私はアナログシンセフリークであると書きましたが、ミニローグを購入しなかった理由はミニローグがミニ鍵盤だったからです。
ミニ鍵盤はライブや練習で使う場合、小さくて軽いというメリットがあります。
一方、通常鍵盤で弾いた後にミニ鍵盤を弾くといささか弾きにくいのです。ヤマハ、リフェイスというミニ鍵盤のキーボードはとても弾きやすいのですが、他社のミニ鍵盤は決して弾きやすいものばかりではありません。私はヤマハ以外にもミニ鍵盤のシンセを購入しましたが売却をしたものもあります。これらのミニ鍵盤は演奏に特化したものばかりではなく、PCなどへの入力用として使われるものもある為、一概に演奏用として評価するのは難しい気もしますが…。
購入者はミニ鍵盤を装着している楽器に何を求めるのかを一度、検証する必要があると思います。
私の結論は鍵盤はミニではなく、「通常鍵盤」ということになりました。
プロローグの鍵盤は国内製ですのでとても弾きやすい鍵盤でした。安価なシンセサイザーの鍵盤はフカフカでタッチ感も悪い為、この鍵盤の良さはとても好感が持てました。
■ コルグのアナログポリフォニックシンセ購入はPolysix以来!
私にとってコルグ製のアナログポリフォニックシンセサイザーは1981年に発売されたPolysix以来です。Polysixは6音ポリで作った音がメモリーできる当時としては画期的なアナログポリフォニックシンセサイザーでした。100万円前後という価格ではアマチュアは購入することが難しくなりますが、25万円以下で購入できるとなれば話は別です。私は給料の殆どをつぎ込み、このPolysixを購入しました。

Korg Polysix, CC BY-SA 3.0 (Wikipediaより引用)
■ Polysixの音を聴いて…
しかし、少しあてが外れました。
シンセサイザーといえば当時の私の基準は「音が太い事」これが一番の要素でした。その背景にはミニモーグシンセサイザーという極太の音がでるモノシンセの存在がありました。太い音が好きでしたし、ミニモーグの音がポリフォニック(和音)になったことをイメージした強力なブラス音を考えていました。
しかし、Polysixの音は違いました。音が薄かったのです。というよりもパッドやストリングス系が得意分野で太いブラス音という感じではありませんでした。
Polysixにはアンサンブルというエフェクターが内蔵され、そのアンサンブルをかけるとコーラス的な音の厚みが加わりました。しかし、私の納得する音ではありませんでした。
当時、ポリシンセには空間系のリバーブやディレイは内蔵されていませんでした。当然、音を良くするためにヤマハのデジタルリバーブREV7(22万円)、数年後にはローランドのDEP-5にはリバーブ、ディレイ、モジュレーション系のコーラス、フェイザーなどが入ったエフェクターを購入。それでなければ納得のいくシンセサイザーの音作りはできませんでした。私は給料の殆どをシンセやエフェクターにつぎ込んでいました。
こういったシンセサイザーに空間系エフェクトが内蔵されるまでには更に時間が必要でローランドのD-50 (1987年)の出現まで待つことになります。
少し位相がズレましたが80年代のシンセサイザー業界はデジタル化というキーワードと共にあり、そこにシンセサイザーだけでなく、エフェクターも加わり、各メーカーの熾烈な競争の中でユーザーもそれに巻き込まれ、果ての無い音への探求、迷宮の渦に入っていきます。
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