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シンセサイザー鍵盤狂漂流記 ~ブラジル/ラテン音楽名曲レビュー!日本人アーティストのポップス名曲集~その99

2022-10-19

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 音楽全般

ボサノバ由来Jポップ、笑いと感心の交錯する名曲も! 第5巻

1970年代から1980年代のポップスというカテゴリーの中に突然現れたニューミュージック。その中からボサノバをベースにした音楽を検証する最終回です。
日本のボサノバポップス、捨てたものではありません。是非、聴いてみて下さい!

ボサノバ素材は外れ無し?

ボサノバという音楽はジョアン・ジルベルトやアントニオ・カルロス・ジョビンによる創世記があり、世界中にそのサウンドが知れ渡ります。そして現在に至るまでボサノバが支持されているのはその音楽的構造と形態にあると私は考えています。
今回のボサノバ特集でも多くの局面で取上げたのが、その独自なリズムとサウンドです。
リズムは多くの人に2ビートで一聴して分かり易く、メロディがその上に乗ることで更に受け入れられやすい音楽形態にトレースされます。しかも少し洒落た演出にしたければ、テンションコードを効かすことでお洒落なサウンドに仕上がります。更にブラジル特有のサウダージ(哀愁)を含んだメロディが加われば、皆が大好きになるマジックが起きます。多くの作家がこの旨味を見逃す筈はありません。
ボサノバというフォーマットに楽曲を落とし込むことは音楽制作の大きな担保になっているのだと思います。それほどボサノバという音楽は洗練された音楽的なスタイルなんですね(^^♪

■ 推薦アルバム:シュガー『シュガー・ドリーム』(1981年)

シュガーは3人の女性コーラスグループ。キーボード、ギター、ベースというバンド形態で活動をしていた。「ウエディング・ベル」でのテレビ出演の際は3人それぞれで楽器を演奏し、歌っていた(口パクの時もありました笑)。女性3声によるコーラスワークに秀でていた為に3人による4ビートアレンジのジャズ風コーラス曲も歌うこともあった。

推薦曲:「ウエディング・ベル」

ふられた女性がふった男性側の結婚式に招待され、式場における女性の心情をユーモラスに吐露した歌詞。
冒頭の♪~ウエディング・ベル~という女性3声コーラス(実際はもっと多く、ダビングされている)から洒落たボサノバギター風バッキングにより幕をあける。
この冒頭部から既に洒落た楽曲であることを想起させる。
そこに加わるのがユーモラスな結婚式でのシチュエーションと「くたばっちまえ、アーメン」というキメ台詞…。最初、この曲を聴いた時には大笑いしてしまいました。
しかしその背景にあるのは計算しつくされたボサノバフォーマットに女性コーラスパートの確信的アサイン。そこにスタン・ゲッツ張りのサックスのオブリガートが花を添える。歌詞のキメ処と完璧なコーラスワークの設定など、今聴いても凄い曲だな~と感心してしまいます。
聴いていない方は是非、一聴を!絶対に笑えます。そして感心できます。制作者のセンスに脱帽です。
インパクトが余りに強すぎたのでしょうか?残念ながらシュガーのヒット曲はこの楽曲のみですが、82年には歌詞のシチュエーションを変え、結婚後の想定外を綴った「ウエディング・ベルⅡ」もリリースしている。

■ 推薦アルバム:尾崎亜美『ザ・プレミアムベスト尾崎亜美』(2013年)

2013年発売の2枚組のベストアルバム。「オリビアを聴きながら」「春の予感」など、尾崎亜美さんの代表曲がパッケージされている。

推薦曲:「マイ・ピュア・レディ」

1977年発売。尾崎亜美さん、3枚目のシングル。ボサノバをベースにした爽快な歌唱と同時に曲作りの上手さが際立つ。
フロントガラスにかかる水とワイパーの動きに小林麻美さんの映像が浮かび上がる…というクリエイティブなCMの1シーンが今も記憶に新しい。それを鮮やかにしたが、この楽曲だった。アレンジは松任谷正隆さん。

■ 推薦アルバム:南佳孝『サウス・オブ・ザ・ボーダー』(1978年)

Jポップ系での〆をどのアルバムにしようかといろいろと悩みましたが、このアルバムしかないという結論に至りました。
Jポップのアルバムではベスト3に入ると考えているのが、南佳孝さんのこのアルバムです。
ブラジル色をアルバム全体に散りばめ、楽曲、アレンジ、演奏…全てにおいて素晴らしいアルバムです。
アレンジとキーボードは坂本龍一さん。コルグのポリシンセPS-3100でのブラスアンサンブルを模した音色と演奏は他に類を見ません。端正なローズピアノのプレイも印象的。
ジャケットは池田満寿夫さんの「愛の瞬間」。楽曲、演奏、アートワークに至るまで南佳孝さんのダンディズムを演出する要素が揃っている。

推薦曲:「日付変更線」

楽曲は南佳孝さん本人。作詞は松任谷由実さんが提供。『日付変更線』はJポップのボサノバ楽曲として景色や感情の描き方、演奏など最高位に位置すると思います。
それに加え、メンバーも凄い。Drums:林立夫さん、E.Bass:細野晴臣さん、E.Guitar, A.Guitar:鈴木茂さん、Fender Rhodes、 Korg PS-3100:坂本龍一さん、Percussion:浜口茂外也さん、斉藤ノブさん、コーラス:大貫妙子さんなど、Jポップ最高人脈を揃えている。
鈴木茂さんのツボを押さえたギタープレイや各メンバーの珠玉の演奏がこのアルバムには詰まっている。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲

  • アーティスト:シュガー、尾崎亜美、南佳孝、坂本龍一、松任谷由美など
  • アルバム:「シュガー・ドリーム」「ザ・プレミアムベスト尾崎亜美」「サウス・オブ・ザ・ボーダー」
  • 曲名:「ウエディング・ベル」「マイ・ピュア・レディ」「日付変更線」

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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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