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シンセサイザー鍵盤狂 漂流記 ~音楽を彩った電気鍵盤たちとシンセ名盤の数々~ その57

2021-12-20

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」

ハモンドオルガンの名プレイヤーと数々の名盤特集 パートⅢ
ラーセン・フェイトンバンドとフルムーン特集

今回の鍵盤狂漂流記はオルガンの名機と云われるハモンドオルガンの名盤をご紹介するパートⅢです。今回はラーセン・フェイトンバンドを取り上げます。ラーセン・フェイトンバンドはその名の通り、キーボーディストのニール・ラーセンとギタリストのバジー・フェイトンが結成したバンドです。
2人は72年にフルムーンというバンドを組み、アルバムをリリースしますがセールスには結び付きませんでした。78年にキーボーディストのニール・ラーセンがソロアルバム『ジャングル・フィーバー』を制作し、ギタリストのバジー・フェイトンが参加したのをきっかけにラーセン・フェイトンバンドは生まれました。
このバンドはニール・ラーセン(key,vo)、バジー・フェイトン(g,vo)、ウイリー・ウイークス(b)、アート・ロドリゲス(ds)、レニー・カストロ(perc)という強力な面子が揃っています。ロック的でありながらソウルフルなのは黒人ベーシストのウイリー・ウイークスとパーカッショニストのレニーカストロによるところが大きいのではと思います。
また、ラーセン・フェイトンバンドのアルバムは歌入りとインスト曲が上手い具合に配置されています。ニール・ラーセンはピアニストでもありますが、なんといってもオルガンプレイにその特徴があります。ハモンドオルガンを用いた楽曲には他のミュージシャンには無い、ワンアンドオンリーなメロディーラインがあり、キレのいいインスト曲も数多く書いています。またレスリースピーカーのスロー、ファストを上手く使ったプレイにはオルガニストとしての才能の高さを感じます。

■ 推薦アルバム:ラーセン・フェイトン バンド
『ラーセン・フェイトン バンド 』(1980年)

80年にリリースされたラーセン・フェイトン・バンドのファーストアルバム。ロック的でありながらブルージーでソウルフルで当時のクロスオーバー的要素も内包している。
それでいてバランスが取れているのは楽曲の良さとプロデューサーがトミー・リピューマということに尽きると思います。トミー・リピューマがプロデュースをすると、どうしてアルバムに「ある種の品位」が生まれるのかは謎です。
クインシー・ジョーンズとトミー・リピューマにはそういう能力があり、それが彼らの真骨頂なのだと思います。

このアルバムは音楽もさることながら、アートワークが最高です。ジャケット写真を撮影したのは写真家、ノーマン・シーフです。
記憶に残るレコードジャケットの写真の多くはノーマン・シーフによって撮影されています。
医師としてアフリカで働いていましたが、1969年29歳で写真家を目指し渡米、大成しました。
シーフの真骨頂はポートレートを手法にした写真撮影です。写真家の仕事としてはしごく当たり前の事ではありますが、これが簡単な事ではありません。ポートレートは写真の中でも難しいジャンルに属します。ポートレートは写真家と対象(この場合は音楽家)の距離を切り取るものです。撮影者と対象がレンズを通してグルーブしなければいい写真にはなりません。そして新しい対象像を引き出さなくてはなりません。また、ジャケットで音楽的魅力を発信する必要もあります。シーフの写真はレコードジャケットから音楽が聴こえると云われていますし、手に取りたくなるアルバムジャケットなのです。

このラーセン・フェイトンバンドのジャケットもシーフらしく、ハイキーな白黒ジャケットで当時、青山の老舗路面店の上に販促用のジャケット映像が大きく描かれていたのを記憶しています。

○ ノーマン・シーフ撮影のジャケット

 

推薦曲:『フール・ビー・ザ・フール・トゥナイト』

ラーセン・フェイトンバンドで1番知られている名曲。ブラスアンサンブルがソウルフルな楽曲を盛り上げている。オルガニストであるニール・ラーセンが2コーラス目にアコースティックピアノの8分の刻みを入れているのが印象的で効果的。
80年代にニール・ラーセンとバジー・フェイトンのライブを観た際、バジーが弾く音とディレイ(エフェクト)がこの楽曲と同じだったのに驚いた記憶があります。

■ 推薦アルバム:フルムーン『フルムーン』(1982年)

ラーセン・フェイトンバンドのセカンドアルバムと云える、フルムーンのセカンドアルバム。何故かバンド名を72年に戻し、「フルムーン」となっている。ウイリー・ウイークスは言わずと知れたセッション・ベーシストで、ダニー・ハサウェイやエリック・クラプトン、チャカ・カーンのセッションにも参加している。彼のプレイがこのバンドの音を黒っぽくしている印象が強い。

推薦曲:『訪問者』

ラーセン・フェイトン的なメロディを持つ名曲。ニールのオルガンソロが素敵だ。彼ら2人はテクニカルな面を表に出さずにロックよりでジャジーな楽曲を展開している。この匙加減がラーセン、フェイエトンバンドのいいところだと思っています。

■ 推薦アルバム:カジノ・ライツ ツインズ

先般、81年発売のジャズフュージョンの名盤、『カジノ・ライツ』にお蔵入りの名曲が入り、再リリースされました。プロデューサーは勿論、トミー・リピューマです。
このアルバムの中に「フルムーン」に入っていた楽曲、「訪問者」が新たに加わりました。ギターはバジー・フェイトンからロベン・フォードに替わっていますが、よりジャジーになり「カジノ・ライツ」愛聴者には素敵なプレゼントになりました。
他にもラリー・カールトンの名曲「ルーム335」がイエロージャケッツのバックで演奏されています。イエロージャケッツの演奏力の高さを再認識することができ、新たな感動を覚えました。

「ルーム335」ではイエロージャケッツのラッセル・フェランテがフェンダーローズピアノでソロを弾いています。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、 推薦曲、使用鍵盤

  • アーティスト:ニール・ラーセン、バジー・フェイトン 等
  • アルバム:「ラーセン・フェイトン バンド」、「フルムーン」「カジノ・ライツ」
  • 曲名:「フール・ビー・ザ・フール・トゥナイト」、「訪問者」
  • 使用機材:ハモンドB-3オルガン、フェンダーローズ・エレクトリックピアノ

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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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