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シンセサイザー鍵盤狂漂流記 ~音楽を彩った電気鍵盤たちとシンセ名盤の数々~その54

2021-11-26

テーマ:sound&person

マイケル・フランクスの音世界 最終回にて最新編

今回の鍵盤狂漂流記はマイケル・フランクスの最終回です。マイケル・フランクスは1975年のメジャー・デビューし、(それ以前にファースト・アルバムをリリース)2021年まで音楽活動を続ける、息の長いミュージシャンです。その音楽性は洒脱でインテリジェンスに溢れています。18枚ものアルバムをリリースしているにもかかわらず、高い音楽レベルをキープし続けているのは称賛に値することです。優れた楽曲を描き出す高い技術を持ったミュージシャンの演奏に加え、優れたプロデューサー達のプロデュース力の結晶がマイケル・フランクスミュージックの正体です。今回はこれまでで一番新しい2作品を取り上げます。

■ 推薦アルバム:マイケル・フランクス『タイム・トゥギャザー』(2011年)

マイケル・フランクス2011年のアルバム。チャック・ローブがプロデュースする楽曲が骨格となり、「ベアフット・オン・ザ・ビーチ」での盟友キーボーディスト、チャールズ・ブレンジング、ピアニストであるギル・ゴールドスタインらがプロデューサーに名を連ねている。チャックプロデュースの曲はギターが際立つ楽曲に仕上がっており、キーボードはシンセパット音程度しか入っていない。また、ギル・ゴールドスタインのプロデュース曲はピアノが中心で音の隙間を生かしたアレンジがされている。イエロージャケッツのラッセル・フェランテ(Kb)、ジミー・ハスリップ(B)のプロデュースよりも、更に音数をそぎ落としたアレンジになっている。
アルバムは異なるプロデューサーによる楽曲をバランスよく配置し、マイケル特有な品のあるサウンドに仕立てている。
また、楽曲の味付けという意味ではホーン奏者にティル・ブレナー、エリック・マリエンサルといった新メンバーが加わり、楽曲に新しい彩を加えている。

推薦曲:『ナウ・ザット・ザ・サマーズ・ヒア』

マイケル・フランクスお得意のボサノバタッチの楽曲。チャック・ローブがプロデュースを担当している。ティル・ブレナー(Tp)とエリック・マリエンサル(Sax)が参加。ティル・ブレナーのトランペットとソロが涼しい!

推薦曲:『サマー・イン・ニューヨーク』

プロデューサーであるチャック・ローブがギター、ドラムプログラミング、キーボードを担当するという八面六臂の活躍をしている。ベーシストにギル・エバンス・マンデイナイト・オーケストラ、パットメセニーグループのマーク・イーガンが参加をしている。この辺りのアレンジはマイケル・フランクス印と云っていい程、マイケルの音楽を理解しつくしたプロデューサー、チャック・ローブの手腕が光っている。

■ 推薦アルバム:マイケル・フランクス『ミュージック・イン・マイ・ヘッド』(2018年)

前作、「タイム・トゥゲザー」から7年越しに制作された現時点でのマイケル・フランクスの最新アルバム。プロデュースは最近のマイケルのスタイルである複数のプロデューサーが担っている。チャック・ローブ(G)、ギル・ゴールドスタイン(Kb)、スコット・ペティート(B)、チャールズ・ブレジンング(Kb)、ジミー・ハスリップ(B)といったおなじみの面子。ミュージシャンはプロデューサー達に加え、デビッド・スピノ(G)、レイチェルZ(Kb)、ジェイ・アンダーソン(B)ら、ファーストコールが参加している。
驚愕すべきはマイケル・フランクスのボーカルでアルバム18枚目に至っても、全く衰えを感じさせない。 自身の肩肘張らないスタイルを頑なに続ける事が持続力の証なのかもしれません。ボーカルはフィジカルと直結しているだけに声を張ってシャウトするスタイルでは40年以上、自身のコンディションを維持することは不可能です。ミュージシャンは往々にして放蕩な生活や薬などで身体を壊すことがありますが、マイケルはそういった音楽家でない事は彼の詩や音楽スタイルからも推察することができ、そのボーカルスタイルを維持できるのだと思います。

推薦曲:『As long as We’re both together』

ギタリスト、チャック・ローブプロデュースのアルバムトップをかざるボサノバ曲。洒落たイントロテーマからメロディアスな楽曲で弦とソプラノサックス、ギターが程よい味付けをしている。ジャズ感溢れるギターソロはチャック・ローブ。

推薦曲:『ウォーターホール』

美しいアコースティック・ピアノとアコースティック・ギターのデュオからスタートする抑制されたバラード。アコースティック・ピアノの背景に薄く、フェンダーローズ・エレクトリックピアノが添えられている。
楽曲中のギターソロを受ける、淡水画のようなピアノソロはプロデューサーであるギル・ゴールドスタインによるもの。こういったボーカル曲の中に優れたミュージシャンのソロが聴けるのもマイケル・フランクスミュージックの素晴らしいところです。
余談ですが、私が静岡市出身のトロンボーン奏者の番組を取材した際、そのトロンボーン奏者は当時、小野リサさんのプロデュースをしていました。そのレコーディングメンバーの一人がギル・ゴールドスタインでした。
バリ島のとあるホテルの一室。リリース直前の小野リサさんのDATテープを聴かせてもらっている時、ジョビンが弾くピアノそっくりな音が聴こえてきました。ジョビンは既に亡くなっていました。「ジョビンですか?」と尋ねたところ、「ギルはジョビンそっくりにピアノを弾く事ができるんです」と教えられました。蒸し暑いホテルの部屋にジョビンを彷彿する素敵なソロが響いていたのを昨日の事の様に思い出します。

今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲、使用鍵盤

  • アーティスト:マイケル・フランクス、ギル・ゴールドスタイン、チャック・ローブ、ジミー・ハスリップ等
  • アルバム:「タイム・トゥギャザー」、「ミュージック・イン・マイ・ヘッド」
  • 曲名:「ナウ・ザット・ザ・サマーズ・ヒア」、「サマー・イン・ニューヨーク」、「As long as We’re both together」、「ウォーターホール」
  • 使用機材:アコースティック・ピアノ、フェンダーローズ・エレクトリックピアノ等

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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音楽ライター / シンセ鍵盤卿

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 

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