ハモンドオルガンの名プレイヤーと数々の名盤特集 パートⅣ 日本人ハモンドプレイヤー金子雄太、名アルバム、名演奏の数々!
今回の鍵盤狂漂流記はオルガンの名機と云われるハモンドオルガンの日本人プレイヤー金子雄太さん(以下敬称略)と、そのバンドや関連アルバム等をご紹介します。 金子雄太は国内のハモンド奏者では傑出した演奏家の1人です。今回はハモンドオルガンプレイヤーである金子雄太にフォーカスを当てます。
■ 推薦アルバム:小沼ようすけ『nu jazz』(2001年)

ジャズギタリストの小沼ようすけの傑作ファーストアルバム。小沼ようすけは日本を代表するジャズギタリストであり、現代的感覚に溢れた音楽家です。 小沼はアクアピットと云うバンドに所属していました。アクアピットはジャズ系ジャムバンドでオルガニスト、金子雄太を中心に小沼ようすけ、ドラマーの大槻カルタ英宣というメンバーでした。
このアルバムは大槻カルタ、金子雄太の他、ゲストボーカルにケイコ・リーも参加しています。小沼のオリジナル曲の他、ジャミロクワイやジャネット・ジャクソン、エルビス・コステロの曲などもクレジットされています(コステロの「アリソン」は最高です!)。
このアルバム、演奏は元より楽曲が素晴らしく、テクニカルでありながらポップな曲が揃っています。発売当時はジャズの「今」を提示されたという感覚が強くありました。その後の活動はジャズというカテゴリーに囚われることなく、小沼ようすけミュージックを展開しています。
メンバーはアクアピットでありながら、あくまでジャズギタリスト小沼の一人称であり、アクアピットが小沼の楽曲に彩を加えているという云う表現が正しいと思います。それだけ小沼の存在が際立ったアルバムなのです。 金子雄太はハモンドB-3を使用。ハモンドの特徴を駆使した素晴らしいプレイが小沼の楽曲を鮮やかにしています。
推薦曲:「コーヒー・プリーズ」
ジャムバンド的というか、ジャムバンドミュージックへの小沼ようすけの回答が聴ける曲。変則フレーズにキメを入れ込んだ小沼ミュージックの傑作。ポップで分かり易く、聴き手にも上手くなじむ…この辺りが小沼ようすけミュージックの真骨頂なのかもしれません。
静岡の「ライフタイム」というジャズクラブでライブを聴きましたが小沼のギター、金子のハモンド、大槻カルタのドラム、メンバーのグルーブが素晴らしく、なにより各自が楽しんで演奏しているのが印象に残っています。金子雄太はハモンドB-3にレスリーというコンサバティブな機材と多彩な演奏技術を駆使し、聴衆を魅了していました。
推薦曲:「アリソン」
エルビス・コステロの名曲のカバー。美しいメロディに泣ける。小沼はこの楽曲が好みらしく、現在でも「アリソン」のカバーをライブなどで披露している。
■ 推薦アルバム:布川俊樹『Road To Jazz Jungle』(2007年)

私はギタリスト、布川俊樹を和製ジョンスコであると思っています。ジョンスコとはジョン・スコフィールドの事です。ジョン・スコフィールドはビリー・コブハム、ジョージ・デュークのバンドやマイルス・デイビスのバンドに参加キャリアのあるギタリストで、そのフレージングといい、サウンドといいワンアンドオンリーのギタリストです。グラミー賞も2回受賞しています。
布川俊樹のサウンドとフレーズはジョンスコを彷彿させ、時代を切り開くミュージシャンであると考えています。そんな布川俊樹が金子雄太(Org)、大槻“KALTA”英宣(Ds)という面子を招集し、このアルバムを制作。金子雄太、大槻カルタと云えば、小沼ようすけで、アクアピットです。小沼に代わり、「布川俊樹」・・・ネオアクアピットか?!と私は驚愕しました。ジャムからジャズに振れた素敵なアルバム!
推薦曲:「愚人の知恵」
金子のハモンド、カルタのドラムからミステリアスに始まる。うねうねとした布川俊樹のギターと小池修のサックスがテーマをとる。 ギタリストが替わると、こうなるのかという分かり易い楽曲。ジャムバンドからジャズ色がより強くなったイメージ。 布川と小池のソロの掛合いからテーマを挟み、ハモンドのコードワーク的ソロ~ドローバーを徐々に引き出し~レスリーをスローかファスト回転で応酬‼というオルガニスト、金子の閃きを感じるサウンドメイクに脱帽する。
■ 推薦アルバム:Akiko『A WHITE ALBUM』(2007年)

Akikoはジャズレーベル「ヴァーブ」から日本人初の女性シンガーとしてデビュー。小粋なアルバムを多数リリースしています。
このアルバムでは小西康陽とタッグを組み、Akiko流のクリスマスを演出し、クリスマスのお約束ナンバーをジャジーなアレンジで楽しむ事ができる。小西のアレンジも秀逸。
クリスマスソングのある種の古さを感じない設えになっている。また、メンバーも折り紙付きでギタリストはジャズギターの巨匠、杉本喜代志氏が参加。金子雄太のオルガンも秀逸。お洒落なアートワークも冴えている。
推薦曲:「サンタが街にやってくる」
キャッチーなブラスアンサンブルから、お約束の金子雄太のハモンドが入る。金子のハモンドソロはハモンドの美味しい抽斗をすべて出してしまったかのような数々のネタを駆使し、展開している。本当に素敵なソロ!!
今回取り上げたミュージシャン、アルバム、 推薦曲、使用鍵盤
- アーティスト:金子雄太、小沼ようすけ、布川俊樹等
- アルバム:「nu jazz」「Road To Jazz Jungle」「A WHITE ALBUM」
- 曲名:「コーヒー・プリーズ」「アリソン」「愚人の知恵」「サンタが街にやってくる」
- 使用機材:ハモンドB-3オルガン
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