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ストラトキャスター1954年製誕生秘話Part3

2021-12-17

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」

1954年製ストラトのPart3と言うことで細部について述べたい。一応今回で1954年製ストラトの話しは締めくくろう。

【ヘッド】

ストラトと言える所以。とても美しくスマートな形状だ。1954年製は特別に面取りがあり、滑らかであるが、以後のモデルは若干角ばっている(写真参照)。今後、54年製のヘッド形状は、再生産されないであろう。1965年製までの所謂スモールヘッドは上品である(写真参照)。1966年頃からはラージ・ヘッドとなる。
後に発表される『ザ・ストラト』の様なスモールヘッドはオリジナルの復刻とは言えない。プリCBSの様なデリケートなラインではなく、どこかしら拙い。特にこの頃は丸みを帯びるはずのヘッドのラインが崩れている。昔からこの形を整えるのは大変であったがストラトよりも廉価であったLEADシリーズのスモールヘッドと共に、ザ・ストラトはオリジナルのカーブではない。

昔はラージヘッドを嫌うプレイヤーも多かったが現代は、新しい会社になっても未だに新製品が発表される、ジミ・ヘンドリックスを挙げるのは勿論、イングヴェイ・マルムスティーン、時代を遡るとリッチーブラックモアの仕様でラージヘッドは市民権を得ているといえよう。特にイングヴェイ・モデルは長年フェンダー・ジャパンのカタログ上に載っていた。少なからず需要があったのだろう。

ではこのヘッドの形状がオリジナルか?というと疑問が残る、何故かと言うと、カスタムギター製造のビグスビー社から、似た様なヘッドで先に製作していたからだ。しかしレオは『民族楽器からヒントを得た』と語っている。たしかに昔の古い楽器にフェンダー・スモールヘッドに似た様な形状の物がある。昔からこの論争は絶えなく、真実は迷宮入りである。
しかし、上品で尚且つ人間工学に優れた、片方一列に並んだ弦巻き。ヘッドはレス・ポールの様な角度が無い。ネックから先端までストレートだ。従って1、2弦また3、4弦もの張力を稼ぐためにテンションピンでバランスを取るなど、『世界中でこの形を広めたのはレオ以下スタッフ達が最初だ。』これだけは間違いない。

ストラトヘッド
1955年製から65年製まではだいたいこのような形。

【ジョイント部の形状】

ここも1954年製にだけ見られる仕様がある。向かって右側のジョイント部のボディ側は角ばっている。直角だ。しかし55年製
以降はなだらかな形になっている(写真参照)。ここまで最初期のストラトは手間をかけるほど完成に至らなかったのであろう。特に音質には変わりないだろうが。

ネックジョイント部
55年製以降はなだらかなボディ部分。黒い所。私のカスタム・ショップは54年モデルだが角ばってはいない。

【ドットポジション】

私の2002年製1954年タイプのモデルに一つだけ不満に思う点がある。それは12フレットのドットの間隔が狭いのだ(写真参照)。オリジナルはもう少し幅がある。惜しい!!しかし米国のビルダー達は「そこまでやるか!」と思ったに違いない。我ながら日本人らしいクレームと言えよう。マスタービルダーに注文すれば解決するかも知れないが、ビルダー物は値段が・・・。

2002年製カスタム・ショップ・54年モデル レリック仕様。12フレットの黒いドットの間隔がオリジナルと比べて狭い。

【コントロールノブ】

1954年製のボリューム、トーンノブは恐ろしく脆い。オリジナルの54年製に使用されたつまみは殆ど割れている。もし割れていなくて形が残っていたら迷わず外して、リプロ品に交換すべきだ(サウンドハウスで御取り扱い中)。オリジナルを重視するVINTAGE業界内でこれらのパーツの状態次第で更に高く売れると思うのだ。リプロ品は決して安くはないが、次世代にこのストラトを渡して行く際の責任が少なからずあるので、ここはマストだ。まだ現役で奏でたいのなら是非とも交換しよう。
またピックアップカバーも素材が脆くストラト最初のヒーロー『バディ・ホリー』カスタム・ショップ・ シグネチャーモデルは、ピックアップカバーの1弦側が少し加工してある。

コントロール部
私はここは拘らず、現行の丈夫なパーツを使用している。ボリューム、トーン共にCTS製を使用。

【ジャック】

プラグインする際の使い心地良さ、審美的な形状、利便性。まさしくオリジナル。設計したのはジョージ・フラートンと言われている。彼は奥様との会話の中で生まれたと、語っている。究極のパーツだ。これをそのまま他のギターには使用せずストラトだけに長年使用したのも偶然か?。この仕様だと床に置いてもシールドのジャック部分はまず傷つかない。『宇宙船の排気パイプ』と感じるほど前衛的な形だ。オリジナルヘッドから、最後のジャックまで素晴らしい。

1954年製ストラトはまだ細部まで試行錯誤の段階であり、以後の年代のモデルと違う仕様が多い。ヘッド形状然り、ピックアップのアルニコ3然り、極初期のトレモロバックプレートの製造番号然りである。勿論、トレモロカバーに製造番号が刻印されている、状態のよい物なら、そう容易く世界市場に出回っていないはずだ。

現代は市民権を得たストラトだが、実質上の輝かしい人気はそれほど続かない。1959年のフェンダー社のカタログには表紙がローズ指板のシャズマスターに代わられていることからも察しが付く(写真参照)。

ストラトも後にローズ指板に変更されるが、爆発的に人気が出たのは、ジミヘンドリックスの功績以後と言って間違いはないであろう。その間10年弱待つ事に。なんとか耐えた。

今後は、1955年~1982年までの変遷を辿って行きたい。
改めて言うが【STRATOCASTER】と言う商品名は1982年製までだ。以後『スタンダード・ストラトキャスター』、『エリート・ストラトキャスター』と言うように商品名+ストラトキャスターとなる。

次回から1955年以後のモデルを検証しよう。メイプルからローズ指板になった理由など、毎年と言ってよいほどの変更がある。

お楽しみに♪

1959年 フェンダーカタログ
ストラトよりも早くローズ指板仕様にした、ジャズマスターが堂々表紙に君臨してる。

同じく1959年 フェンダーカタログ
ジャズマスターが一番上に鎮座してストラトは降格している。
一番左下のアーティストの小さい写真、リビングのテレビに登場していたバディ・メリル。
ストラトではなく、ジャズマスターを手にしているのが興味深い。
ストラトだけではなく、新製品のジャズマスターを売りたかったからだろう。


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Realize

リッチーブラックモアのアルバム『Diffcult to Cure』の『第9』アレンジを聴いてファンになり、『Spotlight Kid』を聴いてストラトキャスターに目覚める。以後様々なストラトを手にし、20年以上ストラトオンリーで毎月ライブ活動を行っている。
ストラトに対するこだわりは強く、『ギターマガジン』、米国誌『VINTAGE GUITAR MAGAZINE』に所有ストラトが掲載されたことがある。翻訳書として、2002年Fender Accessories Catalogue等に掲載されている『The Fender Stratocaster』第4版がある。
ストラトへの改良は外見からみたら何処を変えたかわからないのがポリシーである。

 
 
 

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