■ ギターのチューニング
今回はギターのレギュラーチューニングの謎について、歴史的、楽器の構造的な側面から考察してみたいと思います。ギターの弦と弦の音程差は基本的に4度となっていますが、3弦と2弦の間だけ長3度となっていて、多くの人は、ここに違和感を持ちます。その由来については諸説ありますが、曖昧で適当にぼかした解説が多いです。中にはコード進行と紐づけた解説もあり、ちょっとどうかと思います。個人的な考えとしては、コードを重視したためという、よく言われている理由と同じなのですが、ある程度納得してもらえるように具体的に掘り下げてみました。なるべく簡単に説明しようと思ったのですが、長くなったので2回に分けて解説します。

■ 5度、4度チューニングが基本
バイオリンやチェロは5度チューニングとなっています。その理由は、単音主体で弾くということと、弦が4本しかないため、同一ポジション、もしくは楽器全体において、広い音域を確保するためです。また音階の成り立ちからしても5度はオクターブの次に調和するという合理的な面もあります。昔は電子チューナーに頼るわけにはいけませんので、調弦の意味でも5度チューニングは何かと素直な印象があります。次にバイオリン属の低音担当のコントラバスですが、チューニングは4度となっています。これは弦が長くなったことで5度では弾くのが困難という面と、ベースという役割から広い音域は必要ないため、4度になっています。そもそもバイオリン属ではなかった助っ人のような楽器なので、チューニングの発想も違うところから来ている可能性もあります。ではバイオリンとコントラバスのチューニングを比較してみます。

図のように、各弦の並びが逆になった感じです。5度上は4度下でもあるので、とても似ているとも言えます。実際弾く上でも、ダイアグラムが逆になっただけなので、あまり混乱はしません。西洋楽器の弦楽器は、歴史的にも5度チューニングか、その裏返しの関係の4度チューニングが基本ということでよいかと思います。
■ ギターを4度チューニングしたら?
上記の流れから考えると、ギターは、それなりの弦長があり、和音を弾くことから4度チューニングでもよいように思えてしまいます。ギターを4度チューニングした場合の弦の並びは以下のようになります。レギュラーチューニングの1、2弦を半音上げたかたちになります。

すべての弦が4度で張られます。何が都合が悪いのでしょうか? 実際エレクトリックベースも多弦化し、6弦ベースなどがありますが、これらは4度チューニングを採用しています。大きな違いとしてはベースは和音ではなく単音弾きが基本ということです。4度チューニングに関しては次回触れたいと思います。
■ ギターを5度チューニングしたら?
またギターはチェロと弦の長さが近いので5度チューニングでも大きな問題はないように思えます。違いとしては楽器の構え方が違うのでギターでは指を開くのが不利ということです。これはスケールを弾くのが苦手ということになりますが、その代わりフレットがあるので、大きな問題ではないかもしれません。5度チューニングにしない理由は、何よりも和音でのメリットがあまりないからでしょう。オープン過ぎるボイシングは使い方が難しいと思います。また6本で5度チューニングをすると音域が広いのはよいのですが、低音域に拡張するとベースのように低い音になってしまうので、アコースティック楽器として、ちゃんと響かせるのは巨大なボディが必要になります。逆に高域側に拡張すると弦が細くなりすぎて切れやすいなど、いろいろ問題が発生します。5度チューニングにするなら4~5本が適当そうです。

■ リュートのチューニング
次にギターの先祖と思われるリュートという楽器を見てみます。ギターの先祖候補はいくつかあるのですが、今回は、とりあえずリュートだけに触れます。リュートは6、8、13コースなどいくつかの種類があります。ここではギターに近い6コース取り上げます。コースというのは一度に弾く弦のセットを意味していて、1コース当たり、1~2本となっています。古典楽器は音量も音の輝きも現在の楽器に及びません。そこで弦を2本セットにすることで、ゴージャスな音を演出していました。

チューニングはギターに近いといえます。ギターでこれを再現するには3弦を半音下げて、3フレットにカポをすれば、気分はルネサンスです。主に高域側半分がメロディー担当の弦、低域側半分が伴奏担当の弦となり、きれいに2つの組に分かれているように見えます。演奏スタイルはクラシックギターと同様で、メロディと伴奏を同時に1台でこなします。ただフレットは8フレットとプラスアルファ程度で、基本的に開放弦を多用した演奏となります。多弦化しているリュートの存在からもそれは明らかです。ここから見えることは、4度チューニングが理想だということです。仕方なく長3度の部分が出てしまったわけで、なぜそうなったかを考えてみます。
■ 長3度が必要になった理由
リュートの場合、開放弦を多用し、和音を出す楽器です。また、その楽器が出せる最低音というのは重要で、その部分をアピールしたいものです。ギタリストやベーシストが好むキーはEやAであったりして、その理由も開放弦が出せる最低音ということです。開放弦の鳴りというのは、フレットを押さえたときの響きと違って、より輝いた響きとなり、音量も稼げる方向になります。そして演奏は楽になります。特に響きの悪い生音勝負の古典楽器の場合は、開放弦を利用した演奏を重視するのは自然なことです。つまりリュートでは開放最低音であるGとCをベースとした和音を重視した結果GCFADGというチューニングが生まれたということになります。ギターで言うとEとAをベースとしたコードが重要ということです。このときにコードはテンションなどを含まない基本和音というところもポイントです。仮にギターを4度チューニングをした場合、EとAのコードを押さえてみます。

コードEの場合6弦ルートで、2弦開放のCと1弦開放のFは不協和音となってしまうため、押さえ方に苦労します。開放弦もルートしか使えません。コードAの場合は5弦ルートで2弦は問題ないのですが、1弦開放のFが厄介になります。こちらも開放弦はルートしか使えません。セーハしたときも同様で、6弦ルートか5弦ルートかによって1、2弦の音がネックとなるのです。そこで完全4度チューニングを諦め、1弦と2弦を半音下げるわけです。リュートの場合は、さらに3弦も半音下げて1、2弦の仲間にして、きれいに半々にしています。メロディを弾く弦は、やはり4度チューニングでありたいのでしょう。メロディ弦3本と考えるとリュートはメロディを重視していたように感じます。これで開放和音もそつなくこなし、メロディも弾きやすくなるわけです。
ギターとリュートのチューニングの違いは3弦の半音差ですが、これは最低音が大きく関与しているように見えます。最低音Eを持つギターでリュートと同じチューニングをすると3弦がGbとなってしまって、鍵盤でいうと黒鍵になってしまいます。これを嫌って半音上げたのかもしれません。もしくは完全楽器ではなく、伴奏楽器を重視した結果かもしれません。考えようによってはギターの最低音を現在のEよりも1音低いDにしていたら、DGCEADとなり、リュートと同じチューニングになっていたかもしれません。
以上のような理由でレギュラーチューニングが浸透していったのだと考えられます。音量と音色を優先し、開放弦を多用し、多くの弦で基本和音を弾きたかったわけです。しかし、当てはまるのは響きの悪い古典楽器で生音の場合です。現在は楽器も、弦も、演奏スタイルも変化し、エレクトロニクスも大きく関わるようになりました。そんな状況においてもレギュラーチューニングは便利なチューニングと言えるでしょうか? 次回に続きます。

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