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Rock’n Me 26 洋楽を語ろう:ラッシュをこよなく愛するアーティストたち(その1)

2023-07-31

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 音楽全般

こんにちは。洋楽を語りたがるジョシュアです。
第26回は、カナダの国民的ロック・バンド、ラッシュ(Rush)をこよなく愛するアーティストたちについて紹介していきます。

ラッシュは、1974年のデビューから2014年の活動休止までの間、ひたすらオリジナリティあふれる音楽を追求した3人組です。その結果、3人とは思えないような超人的なテクニックや曲展開などで、唯一無二の音楽性を築いてきました。

ラッシュの音楽性をあえてジャンル分けすると、「ハード・ロック」「プログレッシブ・ロック」と括られがちです。しかし、そのサウンドは常に進化し、ポップやオルタナティブ・ロック、さらにはレゲエまで取り入れながら「ラッシュ・サウンド」としか言えないものとなりました。それゆえに、彼らへの敬意を表し、影響を間接的・直接的に表すアーティストたちが後を絶ちません。そんなラッシュ・ラブなアーティストたちを、前後編にわたって紹介していきます。<その1>となる今回は、自他ともに認めるアーティストたちを取り上げます。

フー・ファイターズ

フー・ファイターズ(以下、フーファイ)といえば、元ニルヴァーナのデイヴ・グロール(Vo / Gt / Dr)が率いてきたバンドで、今やロック界の最大級となっています。昨年には、ドラマーのテイラー・ホーキンス(Dr / Vo)が急死するという悲劇に襲われましたが、セッション・ドラマーの名手ジョシュ・フリースを招いて新作を発表し、フジ・ロック・フェスティバルに出演予定です。

さて、デイヴとテイラーは、幼少時からラッシュを聴いてきたことが音楽性確立に役立ったと語ってきました。そんなフーファイのラッシュ・ラブを感じられる瞬間はたくさんあります。私の記憶が正しければ、フーファイ「タイムズ・ライク・ディーズ」(2003年)における7/8拍子のイントロ(動画0:07~)はラッシュ「ザナドゥ」のイントロ(やはり7/8拍子、動画1:50~)にインスパイアされた、とデイヴがインタビューで語っていました。2000年のフジ・ロック・フェスティバルでのコンサートでは、何らかの曲のエンディングで「ザナドゥ」のエンディング・フレーズを弾いていました。また、「ロープ」(2011年)のコーラス部分のドラム・パート(動画1:10~)は(ラッシュのドラマー)ニール・パートが「ザ・スピリット・オフ・レイディオ」などでよく使うフレーズ(動画0:38~)をテイラーがそのまま使っていて、「ニールに印税を払わないと」と、テイラーがインタビューでバラしていました。

■ フー・ファイターズ「タイムズ・ライク・ディーズ」

■ラッシュ「ザナドゥ」

■フー・ファイターズ「ロープ」

■ラッシュ「ザ・スピリット・オブ・レイディオ」

2人は、次第にラッシュのメンバーたちとも交流を深めました。2013年には、ラッシュが「ロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)」に殿堂入りを果たしました。この際、デイヴとテイラー(とプロデューサーのニック・ラスクリネクツ)は、前座としてラッシュ『西暦2112年』を演奏しました。しかも、アルバム裏写真でのラッシュの白装束まで再現したのでした。彼らは曲を途中まで披露して、そこからラッシュの3人が加わって本編に入る……という、ファン号泣の展開でした。亡くなったテイラーに対して、フーファイは盛大なトリビュート・コンサートを2回、ロンドンとロサンゼルス)で開催しました。このときには、どちらにもラッシュのゲディ・リー(Vo / Ba / Key)とアレックス・ライフソン(Gt)が出演しました。

■ デイヴ・グロール、テイラー・ホーキンス、ニック・ラスクリネクツ(+ラッシュ)「西暦2112年」

プライマス

1989年にデビューした3人組、プライマスは、その奇妙奇態なサウンドで独自路線をひたすら突き進んできました。その不思議な音楽性は説明しづらいですが、代表作『セイリング・ザ・シーズ・オブ・チーズ』(1991年)の1曲「レース・カー・ドライヴァー (Jerry Was A Race Car Driver)」では、その変態ぶりが見事に表されています。フロントマンのレス・クレイプール(vo, b)はラップを唱えながら、6弦フレットレス・ベースをタッピングし、盛り上がる部分ではベースをガンガンに歪ませてスラップしています。

■ プライマス「レース・カー・ドライヴァー(Jerry Was A Race Car Driver)」

前置きが長くなりましたが、レスたちもラッシュからの影響を隠すことなく語っています。デビュー・アルバムのオープニングナンバー”John the Fisherman”では、ラッシュ「YYZ」のイントロをそのまま用いています。1990年代には、そんなラッシュのオープニング・アクトとしてツアーで共演し、ラッシュのメンバーたちとも親しくなりました。さらには、2021年にはラッシュの5作目『フェアウェル・トゥ・キングス (A Farewell To Kings)』(1977年)をまるごとトリビュートするツアーまで開催しました。原盤ではゲディのハイトーンヴォーカルが驚異的ですが、レスはそこから1オクターブ下げて歌っていて、それだけがちょっと違和感がありました。

■ プライマス「John the Fisherman」

■ラッシュ「YYZ」

ドリーム・シアター

ドリーム・シアター(以下、ドリムシ)はデビュー当時から「ラッシュの再来」とか「ラッシュとメタリカの合体」と表現され、何かとラッシュと比較されてきました。それもそのはず、当時のリーダーだったドラマー、マイク・ポートノイ(後に脱退)は無類のラッシュ・マニアです。ドリムシの前身バンドはマジェスティ(Majesty)という名前でした。このバンド名は、ラッシュの「バスティーユ・デイ」(1975年)をみんなで聴いていたときにマイクが「壮大だ!(majestic!)」と言ったことが由来になっています。そんなラッシュに敬意を払うべく、1985〜1986年当時のデモテープでは、先に紹介した「YYZ」のカバーも収録されていました。この音源は、後にドリムシ名義で発表されました。

■ ドリーム・シアター(マジェスティ)「YYZ」

時は変わって2004年。ドラマーたちのイベントで、マイクは壮大なイベントを企画しました。それはラッシュの完コピ・バンド、シグナス&ザ・シー・モンスターズ (Cygnus and the Sea Monsters)としての出演で、ギターはミスター・ビッグのポール・ギルバートでした。ニール・パートのドラムセットといえば、パーカッション各種が本人を取り囲む「360度ドラムセット」がトレードマークです。マイクはこれを忠実に再現し、「YYZ」では、ライヴ盤のドラム・ソロも含めて演奏しました。

■ シグナス&ザ・シー・モンスターズ「YYZ」

さらには2007年。マイクがドラム雑誌で「インタビュアーとして好きなドラマーにインタビューしていいよ」というオファーを受けたとき、マイクは迷うことなくニール・パートを指名しました。それがきっかけで、マイクとニールは家族ぐるみの付き合いへと進展しました。2010年にマイクはドリムシを脱退しましたが、他のメンバーたちもラッシュ愛を隠すことはなく、『ドリーム・シアター』(2014年)のアルバム・デザインは、ラッシュの作品を手がけたヒュー・サイムでした。さらに、同作の「ザ・ルッキング・グラス」は、ラッシュ「ライムライト」をモロに意識した作品であることを、ギタリストのジョン・ペトルーシが明らかにしました。

■ ドリーム・シアター「ザ・ルッキング・グラス」

■ ラッシュ「ライムライト」

第1編はこの辺でいったん筆を置きます。近日公開の第2編では、よりマニアックなラッシュ・マニアたちを取り上げますので、引き続きお付き合いください。


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ジョシュア

1960年以降の洋楽について分かりやすく、かつマニアックに語っていきます。 1978~84年に米国在住、洋楽で育ちました。2003~5年に再度渡米、コンサート三昧の日々でした。会場でのセットリスト収集癖があります。ギター・ベース歴は長いものの永遠の初級者です。ドラム・オルガンに憧れますが、全く弾けません。トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズに関するメールマガジン『Depot Street』で、別名義で寄稿しています。
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