
このパンデミックの時代においては、多くのライブ会場や施設がライブストリーミングによるイベントの開催を行っています。そんな中、ライブストリーミングの世界に初めて足を踏み入れる方にも、放送の音質を高める方法を模索している方にも、この記事は有用になるはずです。
まずライブストリーミングにおいて、ミキシングは、会場の様子をできるだけ忠実に再現するために重要な要素です。ライブストリーム・ミキシングの最も効果的な方法を紹介しましょう。
ライブストリーム・ミキシングをつくる5つのベストプラクティス
その1 – 聴衆に聞かせるなら、全ての音源にマイクを設置するか、ケーブルを接続しましょう
ブロードキャスト・ミックスのすべてを集音する場合、「聞かせる全ての音源にマイクを立てるかケーブルを接続します」
各ドラムキット、エレキギターアンプ、パーカッション、アコースティックピアノにマイクを立てます。観客の声を拾うマイクも忘れずに。アコースティック・ギターやキーボードなど、ダイレクト・ボックス(DI)を使い、すべての機材を接続します。

マイクとダイレクトボックスは、ブロードキャスト・ミックスに必要な機材です。会場に存在している音源が全てマイクに拾われ、ミックスに入るとは限りません。
その2 - ライブストリーム用のブロードキャスト・ミックスを作る
メインのハウスミックスをライブストリームに送らないでください。メインのミキシングでは、会場の音響を考慮する必要があり、また、すべての楽器を同じ音量で出力する必要はありません。メインミックスをそのままライブストリームに送ると、オンラインリスナーにとってはアンバランスなミックスになってしまいます。
代わりに、ミキサーのAux/バスを使って、ライブストリーム専用のミックスを作成してください。ステレオAux/ バスミックスの作成方法については次のビデオをご参照ください。
How to Create a Stereo Aux/Bus Mix - YouTube
その3 - ステレオフィールドを活用する
楽器別に音をステレオフィールドの左右にパンニング(定位振り分け)します。こうして、楽器間の境界がはっきりし、よりワイドで豊かなサウンドのミックスになります。一般的に、放送用ミックスをパンニングする場合、ステージ上のミュージシャンの位置に合わせて楽器を配置します。MCは常に中央にミックスします。放送用のパンニングについては次のビデオをご覧ください。
Panning for Your Broadcast Mix - YouTube

その4 - ブロードキャスト・ミックスに含まれるFX(エフェクト)の量に注意しましょう
リバーブやディレイのようなエフェクトは、適切に使用すると、観客と同じ空間にいるような感覚を作り出します。もしFXなしのミックスにすると、とても不自然(ドライ)で、相手の顔を近くで見ているような感じになってしまいます。
ライブストリーム専用のミックスを聴きながら、ブロードキャスト用のFXリターンを調整するときは実際に音を聴きましょう。適度なFXにより、臨場感のある音空間を作ることができます。
その5 - 放送機器のメーターを監視し、放送全体を通じて音量を同じレベルに近づける
ネットリスナーに音量調整をさせてはいけません。エンジニアが、放送機器のメーターをモニターし、放送中に適切な調整を行います。
ブロードキャスト・ミックスの出力メーターを常に目の前に配置し、確認できるようにしてください。コンソールのフェーダーバンクをカスタマイズして放送用メーターを含めたり、iPadやタブレットを使って最前に表示させるなど、メーターと放送用マスターフェーダーは、常に視界に入るようにしておく必要があります。
ブロードキャスト・ミックスの4つのオプション
オプション1 - ブロードキャスト・ミックスを別のミキシング・・コンソールで行う
インプットチャンネルの全処理をコントロールするには、ハウスミックスとは別のミキシング・コンソールでブロードキャスト・ミックスを実行すべきです。このシナリオでは、フロント・オブ・ハウスとブロードキャスト・ミキシング・コンソールに、ステージからそれぞれに入力信号が送られます。
アナログで処理する場合、オーディオ信号を2つに分配するオーディオ・スプリッターを使用します。
多くのデジタル・ミキサーは、デジタル・ステージ・ボックスからのプリアンプ信号を、Danteやその他のデジタル・プロトコルで送受信し、共有する機能を持っています。
フロント・オブ・ハウスとブロードキャストを2台のミキシング・コンソールを使用してミキシングするシステムは大きな施設によくみられます。機材を揃えて音響担当者を雇うのにかなりの投資を必要とするからです。
中規模の施設では、1台のメイン・コンソールだけで、ライブストリーム・ミックスも制作しなければならないプレッシャーがあります。そこで、1台のコンソールで素晴らしいライブストリーム・ミックスを行うためのオプションを見てみましょう。
オプション2 - ポストフェーダーでブロードキャスト・ミックスを実行する
一人でFOH、モニター、ブロードキャスト・ミックスを同時に管理する場合、この方法が最適です。ポストフェーダーでは、メインミックスのチャンネルフェーダーにレベル変更を加えると、ブロードキャスト・ミックスのそのチャンネルにもレベル変更が反映されます。ポストフェーダーのビデオをご覧ください。
How Post Fader Works - YouTube
ブロードキャスト・ミックスで作業を始める前に、ハウスミックスのバランスを整えてください。ポストフェーダーのブロードキャスト・ミックスは、ハウスミックスのフェーダー配置に基づいて設定されます。
ブロードキャスト・ミックスをポストフェーダーで運用する場合、ブロードキャスト・コンペンセーションを実装する必要があります。ブロードキャスト・コンペンセーションは、メインミックスから送られるレベルの不足をブロードキャスト・ミックスで補う機能です。ドラムのように大きなアコースティックノイズを発生する楽器や、エレキギターやベースのように大音量のアンプを使用する楽器には、ブロードキャスト・コンペンセーションを適用するでしょう。ブロードキャスト・コンペンセーションについてのビデオをご覧ください。
Broadcast Compensation - YouTube
オプション3 - ブロードキャスト・ミックスをプリフェーダーで流す
このオプションは、ブロードキャスト・ミキシングに専念する人がもう一人いる場合に有効です。
プリフェーダーとは、メインフェーダーを変更してもブロードキャスト・ミックスに影響を与えません。このため、メインミックスから生じた音を補正する必要はありません。ブロードキャスト・ミックスのボリュームレベルは、メインミックスから完全に独立します。
プリフェーダーを使用したブロードキャストでは、ミキシングする人は、音を参照するためのスタジオ・モニターを備えた隔離された空間に配置します。これにより、オンラインリスナーが体験している音をより忠実に感じることができます。ミキシング担当者は、メインスペースからの余計な音から解放されるため、ミックスのレベルを微調整できるようになります。

Wi-Fi経由で複数のタブレットやiPadをFOHコンソールに接続すると、バーチャル・ブロードキャスト・コンソールを作れます。
オプション4 - DAWからブロードキャスト・ミックスを実行する
例えば、Garage Band、Logic、Pro Tools、Reaperなど。
これは、ブロードキャスト・ミックスを制作する方法として、急速に普及しつつある手頃な方法です。FOHと同じミキサーからブロードキャストをミックスする場合、チャンネルのEQや音がメインミックスとブロードキャスト・ミックスの間で共有されるのとは異なり、DAWからミックスして、ブロードキャストのあらゆる側面を完全にコントロールできます。つまり、ブロードキャスト・ミックスのためだけの専用のコンソールが持てます。
しかし、このような優れた柔軟性とコントロールには複雑さが伴います。すべての人がDAWで素晴らしいサウンドのミックスを作れるわけではありません。SundaySounds.comのような会社から素晴らしいDAWテンプレートのリソースが提供されており、これを使用すると、初心者でも素晴らしいサウンドのミックスを作れます。ユーザーはミキサーからの入力チャンネル信号をDAWのチャンネルに接続し、フェーダーを好みに合わせて調整するだけです。ミキサーのチャンネルをDAWにアサインするビデオをご覧ください。
Assigning Mixer Channels to Your DAW - YouTube
DAWのブロードキャスト・ミックスは、専任の担当者が行うのがベストです。
施設音響におけるライブストリーム・ミキシングの重要性
オンラインリスナーは、魅力的でバランスの取れたメッセージだけを集中して聴きたいはずです。施設に対する第一印象は、ソーシャル・メディアでたまたまスクロールしていたときに偶然見聞きしたライブストリームが伝えた内容で決まるといっても過言ではありません。以上、すべての施設がライブ配信するためには、素晴らしいサウンドのライブストリーム放送ミックスを作る能力を持たなければならない理由を説明してきました。
私が行ったブロードキャスト・ミックスの例をいくつか紹介します。最初のクリップはコンテンポラリーサービスで、2つ目はカリフォルニア州ニューポートビーチにあるSt Andrews Presbyterian Churchでのクラシックサービスです。
Broadcast samples SAPres - YouTube
その他のリソースはこちら。
How to Optimize Your Worship Service Mix for Broadcast and Live Streaming Class Outline - Google ドキュメント