
このブログでは、サブウーファーアレイにより指向性を実現するいくつかの試みについて説明し、なぜQSC指向性サブウーファーが素晴らしい性能を発揮するのかを解き明かしていきます。
まず、サブウーファーの定義から始めましょう。サブウーファーは低音(低周波数領域)専用のスピーカーです。メインスピーカーがカバーする領域より低い20Hz~120Hzを扱います。
サブウーファーの歴史
1950年代中期、複数のスピーカーメーカーが音飛びが良い密閉型ウーファーを作り始めました。サブウーファーが一般的になったのは、1970年代、映画「大地震」に使われたSenSurroundの登場からです。1980年頃から、カセットテープ、CDの登場によりレコードの針飛びから解放され、サブウーファーは広く使用されるようになります。1990年代に入ると、ホームステレオ、カーオーディオ、PAシステムにも採用され、2000年代からは、ナイトクラブやコンサート会場で広く使われるようになりました。
一般的なサブウーファーの音響エネルギー分布
一般的なサブウーファーの音響エネルギー分布は、球状になっています。一般的なサブウーファーから出力される200Hz以下の音響エネルギーは指向性がありません。低域の波長はサブウーファーの本体のサイズより長く、音響エネルギー分布は全方向に広がります。
図に一般的なサブウーファー2台を並べて、出力される音響エネルギー分布を示しています。無指向性であることが分かります。
X軸は周波数、Y軸は指向角度を表しています(0degはセンターです)。信号強度は色分けして表されています(各周波数に対して最大強度のとき0dB)。

指向性サブウーファーを使用
1950年代以来、サウンドエンジニアは問題を解決するべく、最小2台構成でサブウーファーアレイを作っていました。ディレイ、位相、出力レベル、スピーカー間の距離を細かく調整し、サブウーファーにも指向性を持たせるように調整しました。
上記の方法で正しい指向性パターンを作るには、音響物理学の法則を理解し、パラメーターを調整しなければなりません。これは多くのサウンドエンジアとプロダクション会社にとって時間がかかる困難な仕事でした。
サブウーファーアレイにより指向性を作る
2台のサブウーファーを使って指向性パターンを実現するには、複数あるパラメーターから1つずつ着目して調整する必要があります。
1. 極性反転とディレイ
下図にある、グラフから140Hz(破線)より上の高域ではサブウーファーの指向性が乱れ、機能していないことが分かります。さらに、指向性を生む背面域の減衰は、70Hzでのみ有効であることも分かります(青い領域)。


2. ディレイが短い場合
ディレイ時間を短くした場合、前方向の指向性は改善されています。しかしながら、音のキャンセル効果がコントロールされず、拡散しています。側面の低音は減衰できていますが、真後ろ方向では音が大量に拡散しています。このセットアップでは不完全です。


3. ディレイを長く設定
ディレイを長く設定すると、横方向の減衰には効果が薄く、サブウーファーの比較的高音域は、ほとんど無指向性になっていて、大量の低音が後ろ側に拡散しています。


指向性サブウーファーに対するQSCの解答
サブウーファーアレイによる設定の難しさを解決するため、QSCは常に良好な指向性を持つサブウーファーとユーザーが設定しやすいセットアップ方法を開発しました。QSCの高機能DSPを使用して、背面方向にはウーファー2台による理想的なキャンセル効果を生むようにし、同時に、前方向では2台による完全な指向性を実現しています。結果、放射パターンは理想的な指向性を示し、前後の音レベルの差は15dBとなっています。
QSCが提供する指向性サブウーファーは2機種あります。軽量コンパクトなKS212Cは、1台で指向性を実現できるように1800WクラスDアンプと12インチ・ロングエクスカーション・ドライバー(ウーファー)を2台搭載。複数台により指向性を実現するKS118は、3600WクラスDアンプと18インチウーファーを1台搭載。DSPコントロールメニューからサウンドを調整します。
高機能DSPの効果は素晴らしく、適切な設置方法、極性、出力レベル、ディレイが設定され、効果的に指向性を実現しています。このシステムにより、ステージ上に低音を適切な場所に届けます。


結論
実際に設置してテストした結果、サブウーファーアレイでも指向性を作ることは不可能ではないことがわかりました。しかしながら、設置スペース、ディレイ、極性、出力レベルなどのパラメーターを精密に調整できないと、満足な結果は得られません。
QSCは、複雑なセットアップを簡単にし、全てのユーザーが満足するように、いつでも良好な指向性が得られる使いやすい、多くの用途で使用できる製品を開発しました。
この記事はQSCによるInsights into QSC Cardioid Subwoofer Solutionsの翻訳です。