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ホームスタジオにおけるベストなスピーカーセットアップ

2020-04-28

テーマ:How to

世界的な感染危機により、多くの方がリハーサル、作曲、レコーディングなどをホームスタジオで行っていることでしょう。この記事では、理想的な制作環境を作るために、ホームスタジオのセットアップにおける最も重要な点について実用的なアドバイスとヒントを紹介しようと思います。

まず始めに、みなさんの中にはライブ等で、QSC K.2スピーカーを既に使用している方もいるでしょう。K.2シリーズには11種類のプリセットが用意されていて、その中の1つに「Studio Monitor」というのがあります。このプリセットはQSCのエンジニアがホームスタジオを考慮して開発したもので、スタジオモニターに必要とされる完全にフラットな周波数特性と、非常に明瞭な低域を実現します。このプリセットを使用すると、何もせずともモニターしている音を忠実に再現することができるリファレンス・スピーカーになります。

さて、さっそくみなさんの部屋の状態を見て、セットアップを行い、いくつかのステップに従って制作環境を最適化していきましょう。思い出してほしいのは、私達が聴いている音は、私達の聴く能力とスピーカーの性能、そして部屋の音響特性の組み合わせであるということです。

リスニングエリアの設定

  1. 部屋の長い辺に沿って機材の向きを決めます。
  2. リスニングポジションが左右対象の中心線に沿っていることを確認します。
  3. 部屋を1/3ずつ、3つのエリア(「前」、「中央」、「後」)に等分割し、機材を「前」のエリアに置きます。「中央」前方にリスニングポジションを配置します。
  4. 部屋の硬い表面との間に起こる反響を定常波、またはルームモードと呼びます。音圧は表面で常に最も高くなります。この高い音圧ができるエリアを避けるために、リスニングポジションをどの壁からも1m以上離してください。
図1:ホームスタジオにおける最適なリスニングポジションとスピーカーの配置

スピーカーを設置

  1. 正確なステレオ再生を実現するには、左右のスピーカー角度をリスニングポジションに向かって60度に設置する必要があります。
  2. スタジオモニターを設置する位置は、通常、耳の高さ(1.2m~1.4mの間)にします。床からの反射を最小にするため、少し前に傾けて高めに設置します。K.2シリーズ3機種では、標準装備である、デュアル・カップマウントと7.5度ティルト機構があるため、簡単に実現できます。ただし、スピーカー近くの表面からの反射を防ぐため、特に吊り下げなどの場合、ティルト角(縦方向の傾き)は15度を超えないように気をつけてください。

不要な反射を防止する

硬い壁、屋根、床は音を反射します。そして反射する音が元の音と同位相になると、リスニングポイントにおける音圧が増加します。反対に、位相がずれると音圧は減少します。

  1. もし、ホームスタジオの壁や床の表面が音のエネルギーを回り込ませたり、または吸収するように設計されていなければ、ほとんどの音のエネルギーは入射に対して同じ角度で1度だけ反射します。リスニングポジションへ音が反射するのを最小にするために、スピーカーを壁や天井近くに設置することを避けてください。
  2. 部屋の大きさが音の波長と合致すると、音のエネルギーは増幅し、共振が起こります。共振は、共振周波数に依存する特定の場所に、最大音圧と最小音圧を伴った定常波を作ります。この難しい現象へは、スピーカーの位置を少し動かして、対応してみてください。これにより定常波共振の条件を回避できる可能性があります。
  3. リスニングポジションが原因であることもあります。リスニングポジションが音圧の最小値の所にある場合、特定の周波数が聞こえなくなり、ミックスはパンチとダイナミックさに欠けるようになります。この場合、リスニングポジションを前後に移動してみてください。
図2:硬い壁は、音のエネルギーを反射します。この反射を最小限にするために、吸収材を使用したり、異なる形状の壁を試したりすることを推奨します。部屋の両サイドで同じような反射があるときのみ、最も正確なステレオイメージが得られます。両側の壁に対して同じ距離を保ち、左右のスピーカーを同じ高さ、左右対称に置く必要があります。

低域ブーストと音の拡散空間

音の物理学の基礎を思い出してみてください。まず最初に音は周波数により伝わり方が異なります。下図に示されているように、低域における無指向性拡散から非常に指向性が強い高域拡散まで幅があります。

図3:音は周波数により伝わり方が異なります。

次に「Radiation Space」と呼ばれている指標について説明します。「Radiation Space」は簡単に言うとスピーカーが音を拡散する体積のことです。低域において(200Hz未満)、硬い壁が音の拡散を抑制するとき、音圧レベルは増加することを理解する必要があります。スピーカーが置かれた壁によりRadiation Spaceが半分になる度に、音圧レベルは2倍になります。

200Hz未満においてもフラットな低域レスポンスを持つ自由空間に置かれたスピーカーは、硬い壁を背にして置かれた場合、6dBサウンドレベルが高くなります。部屋の角では12dBまで上がります。

図4:Radiation Spaceはスピーカーが音を拡散している体積として定義されます。

Radiation Spaceを変えると、200Hz未満のスピーカー出力に影響します。ではどうしたら良いのでしょうか?ホームスタジオにあるスピーカーが壁に背を向けて置かれている、または角に置かれている場合、低音再生がクリアでタイト、そしてパンチのある音に戻るように、低音の出力レベルを数dBレベル、200Hz未満の出力レベルを下げます。過度の低音域は共振を生み、不明瞭なミックスを作ります。低域レスポンスを減少させるには、スピーカーに搭載されたEQを使用したり、ミキサーから設定します。

背面キャンセルとスピーカー設置

200Hz未満で起こる他の現象も見てみましょう。スピーカーと壁の間にある程度の距離がある場合、距離が音の波長の1/4に等しいときの周波数では、壁からの反射はスピーカーから前方向に向かう音の拡散と位相がずれています。これにより、この特定の周波数における壁からの反射音は同じ周波数の前方向に向かう音をキャンセルします。この周波数では、音のレベルは著しく減少します。これを櫛形フィルターキャンセルと呼び、スピーカー出力のEQ調整では対応できません。

図5:スピーカーの背面にある硬い壁による音のキャンセル現象

さて、この問題に対して何ができるでしょうか?この強いキャンセル現象を防ぐために、まず最初にスピーカーを壁にできるだけ近づけてみてください。しかし先述した通り、スピーカーを壁に近づけて置いたときは、低音が増幅されるため、低域の周波数特性の適切な調整が必要となります。

別の選択として、スピーカーを壁から少し離して置くこともできます。このとき、スピーカーの前面から後ろの壁までの距離が0.6m以内になるようにしてください。こうすると、低域は元のままに再生されます。広い部屋でスピーカーを壁から離すと目立つようになるかもしれませんが、音響的に考えると、背面壁のキャンセル効果との兼ね合いで妥協が必要だと言えます。

結論

ホームスタジオで音楽制作を行うなら、ホームスタジオでの音響環境が音楽制作の音質全体に影響を与えます。壁、天井、床の他に、ミキシングコンソール、テーブル、機材収納ラック、家具などが音の反射を引き起こします。その反射はできるだけ最小限にしなければなりません、狭い部屋でのスピーカーの配置は簡単ではありませんが、スピーカーを最大限に活用するためのアドバイスを紹介しました。

最後になりますが、QSCを含む、高品質のスピーカーは、非常に高いレベルでオーディオを再生することができます。これを計り、調整する良い方法は、サウンドレベルメーターを使うことです。キャリブレーショントーン(ホワイトノイズ、またはピンクノイズ)により、リスニングポイントで、バランス良くリスニングレベルが86dBになるようにスピーカーをセッティングします。ではみなさんが、ホームスタジオを見直し、スピーカーを正しく設置できるよう願っています。

この記事はQSCによるHow to Best Setup Your Loudspeakers in Your Home Studioの翻訳です。

Christophe Anet

Christophe Anetは、電気音響エンジニアであり、QSC Live Soundのシニア・プロダクト・マーケティング・マネージャーです。長年にわたり音響への情熱を持ち、世界中のレコーディングスタジオの設計、音響心理学の講義、レコーディングスタジオのコントロールルームの調整などを行ってきました。ギターを弾いていない時は、スイスアルプスでロッククライミングをするか、大自然の中で水彩画を描いています。

 
 
 
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