
クラブで生演奏を聴いているときも、映画館で映画のサウンドトラックを聴いているときも、音はスピーカーから再生されています。そのスピーカーには、いくつかの種類があります。パッシブスピーカー、アクティブスピーカー、パワードスピーカーです。ここではスピーカーに関する用語を明確にしておきましょう。
この記事では、オーディオソースからラインレベルの信号(プロ用機器では最も一般的なレベルは+4 dBu、民生用機器では-10 dBV)が、これから説明する各スピーカーに供給されていることを前提としています。以下の図では、ラインレベルは緑色で示され、スピーカーを駆動させるのに十分なスピーカーレベルの信号(数十dB)は茶色で示されています。
パッシブスピーカー
デンマークのエンジニアPeter L. JensenとEdwin Pridhamは、1915年にカリフォルニア州ナパで実用的なムービングコイル式スピーカーを最初に製造しました。一般的にパッシブスピーカーと呼ばれるものです。この設計は現在も使用されており、QSCを含む多くのブランドで製造されています。
パッシブスピーカーは、1つまたは複数のトランスデューサー(ドライバーとも呼ばれる)、パッシブ・クロスオーバー・ネットワークで構成されています。トランスデューサーは、主電源(コンセントから供給される電力)を必要としません。トランスデューサーは、単体のパワーアンプから増幅された信号(下図の茶色)を受け取ります。パワーアンプは、オーディオソースやプリアンプからのラインレベル信号を、適切なトランスデューサーの信号レベルにまで増幅します。次にこの信号は、筐体内に搭載されたパッシブ・クロスオーバー・ネットワークによって、異なる周波数帯域(通常は2~3)に分割され、適切なトランスデューサーに送られます。

最適なパフォーマンスを得るためには、パワーアンプの出力定格とパッシブスピーカーの許容入力をマッチさせる必要があります。出力が小さいアンプは、スピーカーの性能を十分に発揮させる前に、オーディオ信号を歪ませてしまいます。逆に出力が大きすぎるアンプは、パッシブスピーカーのクロスオーバーやトランスデューサーに過大な負荷をかけ、歪みの発生やトランスデューサーの故障の原因となります。
アクティブ・スピーカー
最初のアクティブスピーカーは、60年代半ばに初めてJBLやKlein & Hummelにより設計され、その後すぐにAltecとMeyer Soundも追従しました。アクティブスピーカーは、1つまたは複数の筐体、1つまたは複数のトランスデューサー、アクティブクロスオーバーネットワーク、分割された周波数帯ごとに独立した専用パワーアンプから構成されます。
アクティブスピーカーは、オーディオソースやプリアンプからラインレベルの信号を受信し、その信号を内部で増幅するように設計されています。そのためには、電源が必要です。まず、ラインレベル信号は、アクティブ・クロスオーバー・ネットワークによって異なる周波数帯域に分離されます。次に、各帯域はスピーカーレベルまで個別に増幅され、それぞれの適切なドライバーを駆動します。


アクティブスピーカーを用いることで、アクティブクロスオーバーネットワークは、信号のパワー管理の問題から独立できるため、オーディオ信号を最適化し、明瞭かつ正確に分離することができます。さらに、設計者がすべてのコンポーネントを完全にコントロールできるため、各要素を最適化して、最高のオーディオ性能を実現できます。例えば、各パワーアンプの出力とトランスデューサーの入力インピーダンスを完璧にマッチングできます。
また、QSC K.2、KLA、KW、CPシリーズに搭載されているように、アクティブ設計にはいくつかの技術的な利点があります。ドライバーの最適化、高度な保護回路、デジタル信号処理(DSP)などです。
パワードスピーカー
パワードスピーカーとアクティブスピーカーはよく混同されますが、厳密には異なります。
大きな違いは、パワードスピーカーは各トランスデューサーに個別のパワーアンプを持っていません。技術的に見ると、パワードスピーカーは、パッシブスピーカーに似ているか、パッシブとアクティブの技術を組み合わせています。また、パッシブ・クロスオーバー・ネットワークが設計に含まれていても、純粋なアクティブスピーカーの設計とは異なります。
下の図4で示されているパワードスピーカーの設計は、スピーカーの筐体内にシングルチャンネルのパワーアンプが内蔵されていることを除けば、パッシブスピーカーと同じように動作します。この「パワード」スピーカーは、電子的・音響的性能の面では、従来のパッシブスピーカーと変わりません。このような設計は、携帯用デジタル音楽機器の増幅に使用されるような、コンパクトなパーソナルスピーカーによく見られます。

次の図5にあるパワードスピーカーの設計には、ラインレベル信号を2つの異なるバンドに分離するアクティブ・クロスオーバーがあります。ウーファーのトランスデューサの前に専用のパワーアンプを持っていますが、2つ目のチャンネルはパッシブクロスオーバーネットワークを介してさらに分割され、ツイーターとミッドレンジの周波数帯を取り出します。このような3ウェイパワードスピーカーは、技術的には部分的にしかアクティブではありません)。

スタジオモニターやHi-Fiスピーカーの多くは、2台のパワーアンプチャンネルで済むため、主にコスト削減を目的にこのような設計になっています。
まとめ
スピーカーとその内部のパッシブ・クロスオーバーがコンセントに接続されていない場合は、パッシブスピーカーということになります。大規模な会場や複雑なPAシステムを除いて、スピーカーがコンセントに接続されている場合は、そのスピーカーが、アクティブ設計なのか、それとも「ハイブリッド」パワード設計なのかをチェックすべきです。
要約すると、電源を必要とするスピーカーは「パワード」ですが、すべてのパワードスピーカーを「アクティブスピーカー」と呼ぶべきではありません。製品仕様を確認し、必要なスピーカーを正しく購入するようにしてください。
※メーカーやWEBサイトによって、アクティブスピーカー・パワードスピーカーをどう定義しているかは異なります。各製品の仕様をご確認ください。