どうもこんにちは。
三国志では関羽推しの者です。
日頃より弊社をご利用いただいているギタリスト&ベーシストの皆様の、人気アイテムで上位に食い込んでいるであろうピックアップ。
ご自身のギター、ベースをさらなる高みへと昇華させるべく交換を考えている方、あるいは実際に購入して付け替えたよ!!なんて方も少なくないのではないでしょうか。
ピックアップの交換はギター&ベースのカスタムとしては定番で、選べる種類も多いですからね。
その反面、弊社にご相談いただくギター&ベース関連の修理案件の中でも特に件数の多いのがこのピックアップなのです。
ピックアップは構造が単純なため初期不良も少なくなく、また、付け替えにはんだ付けなどの専門的な知識や技術を要するため、関連パーツまで破損させてしまう事例もあります。
本来はワークショップやリペアショップなどで付け替え作業を依頼するのがベターですが、ご自身で付け替えを行いたい方も一定数いらっしゃるかと思います。
かくゆう私も後者側の人間で、現在こうして楽器のお仕事をしているわけですし。
ということで今回から[ピックアップ交換のために知っておきたいこと]をシリーズ化して、かなり初歩的なことから具体的な取り付けまでを説明していこうと思います。
さて、弊社のホームページでギター、ベース用のピックアップのカテゴリを見てみるとこんな感じです。


たくさんの種類がありますね。
プレイヤー目線ならば各種ピックアップの音の特性がなにがしと語りたいところではありますが、今回は技術者目線です。音の特徴などの解説は割愛します。
この画像で注目していただきたいのはピックアップの形です。
というのも、きちんと寸法の合ったモノを選ばないと、そもそもボディに取り付けができないからです。
例えばこちら……


極端な例ですがこれじゃ当然のごとく取り付けは不可能ですね。
『いやいやそんなの形が違っているから当たり前じゃん』とお思いの方。次の写真ではどうでしょうか?


こちらはジャズベースのネックポジションにブリッジポジション用を当てた写真ですが、若干寸法が異なるため取り付けることができません。
ピックアップは同じ形でも各ポジション用で寸法が異なる場合があるのです。
写真の場合では、交換したいポジション用のピックアップをきちんと購入していただければ問題ないのですが、安価なギター、ベースではコストカットのためにネックポジション、ブリッジポジション共に同じピックアップを使い、ザグリ(ピックアップをいれるための空間)も同じ大きさで掘っているものもあります。
これが少々厄介で、同ポジションのピックアップを購入してもザグリが狭く取り付けられない場合もあったりするのです。
そのため購入の前にはピックアップ、ご自身のギター&ベースのザグリの寸法をそれぞれしっかり測っておくことが大切です。
計測はスケール(ものさし)でも行えますが、ノギスがあるとより正確な寸法を測ることができて便利ですね。

次に、こちらの写真をご覧ください。


どこか変ですよね?
左のピックアップは弦間ピッチとポールピースのピッチがずれているんです。
ギターやベースは使用されているブリッジによって弦間ピッチが異なるため、使用しているブリッジとピックアップのポールピースのピッチが合っているのかも購入前にしっかりと確認すべきポイントです。
一見同じように見えるブリッジでも測ってみると……(1・2弦間)



全然違いますね。
新しいギターの購入の際などにも弦間ピッチは非常に重要なので、気にしたことのない方は一度測って確認してみるのもよいですね。
次はピックアップのマウント方式による違いです。


写真左がエスカッションマウント、右がダイレクトマウントです。
マウント方式が違うと何が問題なのかと言いますと、ピックアップ本体の穴の径とザグリ内部の取り付け部分の穴の位置です。
まずご理解いただきたいのは、基本的にギター用のピックアップの取り付け穴の径はエスカッションマウント用のビス基準であけられているということです。
そしてエスカッションマウントとダイレクトマウントでは使用するビスが異なります。
メーカーによって多少の違いもありますが、基本的にダイレクトマウントではエスカッションマウントより径の大きいビスを使用します。
ということは、新品のギター用ピックアップをダイレクトマウントする場合、取り付け穴の拡張が必須となるのです。


これがどういうことかと言いますと、一度ピックアップをダイレクトマウント仕様にするとエスカッションマウントでの流用ができなくなるのです。
つまり、ギターA(ダイレクトマウント)とギターB(エスカッションマウント)を所持していてAの方が弾きやすいけどBのピックアップ音の方が好きだからと言ってピックアップ交換した場合、Aは取り替えできますがBには取り替えができず胸にぽっかり穴があいた状態に。そして残されたピックアップは行き場を失い途方に暮れることとなるのです。
そして、次が大切ですよ!!
新品を購入してダイレクトマウント用に穴を拡張しその後ピックアップの不良が発覚した場合、ほとんどメーカー、販売店で返品対応が不可能です。
取り付け穴の拡張という行為は製品本来の形ではなく改造したとみなされる事が多いためです。
ですので、ダイレクトマウントではエスカッションマウントに比べ多少リスクがあることをご理解ください。
次にザグリ内部の取り付け部分の穴の位置についてです。
これはベース用のピックアップ交換でよく起こることなのですが、ベースはエスカッションマウントが極めて少なく、ほとんどがダイレクトマウントのため当然ザグリに取り付け穴があいています。
しかし、ベースのピックアップは似たような形のものでも取り付け穴の位置や本数が違っていたり、推奨とされるビスの径や長さが異なっていることがしばしばです。
こちらの2つの商品、似たような見た目ですがよーく見てみるとEMGはビス穴が2個、DELANOはビス穴が3個となっていますね。
交換の際にザグリとピックアップの寸法を測って『大丈夫だ!!』と思い購入しても、穴の位置や数が異なる場合は新たにザグリ内に穴を開けなくてはいけませんし、穴位置や数が同じでも推奨のビスの大きさや長さが異なる場合は最初にあいている穴を一度埋めて新たに開けなおす作業が必要となります。
このようなことを避けるためにも、ベースでピックアップの交換をお考えの際はこのあたりもしっかりと調べておく必要がありますね。
最後に今回のまとめです。
- 購入予定のピックアップの寸法をしっかり調べておく。
- ピックアップザグリの寸法をしっかり測っておく。
- ギター、ベースのブリッジの弦間ピッチを調べておく。
- ピックアップのマウント方式による違いを理解しておく。
いかがでしたでしょうか。
今回はかなり初歩的なお話でしたので、すでにご存じの方や既にピックアップ交換の経験がある方からすると少々薄味だったかもしれませんね。
ですが今後少しずつ内容を濃くしていき、お客様により良いお買い物をしていただくための手助けになればと思います。
それではまたサウンドハウススタッフブログで会いましょう。