『PINK FLOYD 隠れた名盤「雲の影」〜 50 周年 〜+「Animals」』
2022/12/30(金)六本木 EX THEATER

木暮"shake"武彦氏率いる、ピンク・フロイドのトリビュートバンド、原始神母。2022年12月30日、六本木EX THEATERに多くのフロイド好きが集結したというじつにディープなライブの様子を、先日公開した第一部のブログに続いてお贈りします。
第二部は今回のメインテーマでもある、フロイドの隠れた名盤『雲の影』再演の様子をお伝えします。

1972年にリリースされたアルバム『雲の影』は、映画「ラ・ヴァレー」のサウンドトラックとして制作されたもの。サントラ盤ということでポップかつ親しみやすい曲が並びながらも、ギルモア節のギターが炸裂する楽曲あり、大胆なシンセサイザーの導入が『炎』を予感させるインストもあり、はたまた『アニマルズ』や『ザ・ウォール』を彷彿させるソリッドなロックナンバーもありと、フロイドの様々な面を味わえる素晴らしいアルバムです。そんなアルバムを再演するというディープな空間をバンドとオーディエンスが一体となってトリップする再演ライブ。果たしてどんな一夜になるのでしょうか。
1. 雲の影 - Obscured By Clouds

オープニングはサントラ盤らしくインストでスタート。初期『神秘』の頃のサイケ感を彷彿とさせる、三國義貴さんのオルガンサウンドによるリラックスしたムードに、木暮"shake"武彦さんのギターサウンドが襲い掛かる様がスリリングです。


これをライブ・バンドによる再演で楽しめる日が来るとは夢にも思いませんでしたね。冨田麗香さんのパーカッションがよりモンドミュージックな雰囲気を出しているところが実に微笑ましいです。
2. ホエン・ユーアー・イン - When You're In

再演ライブは、そのまま1曲目の続編の様なインストに雪崩込みます。オリジナル以上にヘヴィーなサウンドで、どんどんアルバムの世界に引き込まれていきます。決して大きくアレンジを変えている訳でもないのに、フロイドのレコード以上のダイナミズムを味わえるのはライブならではの醍醐味でしょう。それにしても、このウルトラ・ニッチなナンバーを、大人数のオーディエンスを前にして大音量で演奏する圧巻の光景。近年、フロイドのセルフ・トリビュートバンドをやっているニック・メイソンも驚愕する事でしょう。
3. 炎の橋 - Burning Bridges

お次は一転してアルバム3曲目のソフトサイケ・チューン。心地良いオルガンとケネス・アンドリューさんのささやくようなボーカル、そこに優しく絡んでいく木暮"shake"武彦さんのボーカルがソフト・ロック心をくすぐります。加えて、浮遊感溢れるスライドギターでフロイド・トリップ・マナーを守っているところが、原始神母ならでは。やはり、このフロイド愛と熱量は半端じゃないです!

4. ザ・ゴールド・イッツ・イン・ザ… - The Gold It's In The?

珍しい(?)フロイド版パワー・ポップチューン。ガンガンロックしていく感じが理屈抜きで楽しい楽曲です。強烈なギター・ソロを含め、オリジナル以上にエナジー漲る演奏に聴こえるのは、ライブだからという理由だけではないと思います。ぜひ原始神母には、スタジオ録音したバージョンをシングルで出してほしい!リリースされたらクラブイベントでスピンしたいです、本当に!この曲を待っていた原始神母ファンも多かったのか、じつに盛り上がっていました。

5. ウォッツ - Wot's... Uh The Deal

再びソフト路線なナンバーに戻りますが、木暮"shake"武彦さんのアコースティック・ギターと、大久保治信さんのピアノによるイントロ、そしてピアノソロがじつに美しい!美しいと言ってもあくまでもUKロック的なピアノソロなのが原始神母らしいところですね。

ピアノソロに続くように――いつの間に持ち替えたのでしょうか――木暮"shake"武彦さんがエレクトリック・ギター・ソロで追いかけていくところも素晴らしいです。エンディングではさらに三國義貴さんのオルガンと大久保治信さんのピアノによる、掛け合いの様なアンサンブルが実に楽しい。冨田麗香さんと高樹リオさんによるコーラスは実にソウルフルで、少しサバービアな感じも楽しめます。アルバム『雲の影』。隠れた名盤だけに、長年のフロイドファンの方にも、『狂気』などの名作の様にヘビーローテーションで聴いている訳ではない方も少なからずいるかとは思います。しかしこのドリーミーな演奏を聴いて、久々にアルバムのレコードやCDを取り出したくなった方もいたのではないかと感じた瞬間でした。
6. 泥まみれの男 – Mudmen

『雲の影』愛が高まる中、ソフト路線なインストがはじまります。オルガンやシンセがモンドチックに響くなか、木暮"shake"武彦さんのギター・ソロと大久保治信さんによるニック・メイソン度の高いドラムサウンドがアンサンブルを先導します。『おせっかい』のA面や『原子心母』のB面を聴いている時にも似た幸福感です!フロイド愛を感じる至福の時です。

7. フリー・フォア - Free Four

アルバム『雲の影』の中のもう一つのアッパー・チューン。T.REXの「メタル・グルー」風に始まる前半は、冨田麗香さんがアコギで加わった事によりさらにT.REX風に響きます。途中デビッド・ボウイの「円軌道の幅」を彷彿とさせるブギーに代わっていくギターは、ギルモア愛に加え、ミック・ロンソン愛もブレンドしているようで、shake"武彦さんのプレイが実に泣けます。デビッド・ボウイを彷彿とさせる感じがあるケネス・アンドリューさんも、扇田裕太郎さんと踊ってみたりと、じつに再演を楽しんでいる様子です。これも理屈抜きで楽しい!原始神母が「ザ・ゴールド・イッツ・イン・ザ…」をシングルで出す時は、ぜひこの曲をカップリングでお願いします!
8. ステイ – Stay

1970年代前半のロッカバラードの良いところを詰め合わせにしたような、まさに隠れた名曲です。こんなナンバーの再演をライブで聴ける機会なんて二度とないかも知れません!ピアノのプレイとワウのギターもスリリングですが、ケネス・アンドリューさんのボーカルと冨田麗香さん、高樹リオさんによるコーラス・ワークの絡みが実に素晴らしく、こういったナンバーでもディープに再演できるトリビュートバンドはそうそういないのではないかと思います。
9. アブソルートリー・カーテンズ - Absolutely Curtains

アルバムのラストを飾る幻想的なインスト・ナンバー。原始神母による再演はアルバム『ウマグマ』のレコーディング現場に入り込んだかのような錯覚すら起こします!オリジナルを凌駕する程ヘヴィーにフロイド・トリップしていく瞬間!!
「太陽賛歌」のライブバージョン張りに襲い掛かる柏原克己さんのドラムサウンド、そしてシャーマニックに響くマントラの様な大音量SEを浴びて、全てのオーディエンスが見事に『雲の影』の洗礼を受けた事でしょう。

以上ライブレポートの第二部をお贈りしましたが、かつてないディープな再演ライブに驚愕しているのも束の間、余韻に浸る隙もなくライブは進行していきます。
日本のフロイドファンの2022年を締めくくる、圧巻の終盤戦の模様は第三弾にてお届けいたします。
第一部同様、第二部ブログのペンを置く前に、当日配られてフライヤーでも告知されていた2023年06月18日のライブの情報について再度触れてみたいと思います。

1973年の名作『狂気』のリリース50周年を記念し、アルバムの全曲再現を含むライブイベント、その名も『THE DARK SIDE OF THE MOON 50th ANNIVERSARY 狂気50周年記念イベント 日比谷野音でPINK FLOYD TRIPS』。
『狂気』の再現に加え、ライブ映像作品『ライブ・アット・ポンペイ』の再現も含まれるという事で、『雲の影』の再演を全身で浴びた私としては、こちらも本当に楽しみです。『ライブ・アット・ポンペイ』はアルバム『狂気』発表前のフロイドがイタリア・ポンペイにある遺跡で行った無人ライブを収めた映像作品。原始神母による「神秘」、「太陽讃歌」、「エコーズ」といった名曲の再演を日比谷野音という格別の場所で、夕陽を浴びながら体感できるという夢の様なイベントです。今から楽しみにしながら第三部のレポートを書いていきたいと思います。
原始神母、「PINK FLOYD 隠れた名盤『雲の影』~ 50周年 ~ 『Animals』」
原始神母 メンバー(敬省略)
木暮"shake"武彦(Guitar)
三國義貴(Keyboards)
大久保治信(Keyboards)
扇田裕太郎(Bass, Guitar, Vocals)
柏原克己(Drums)
ケネス・アンドリュー(Lead Vocals)
冨田麗香(Chorus)
高樹リオ (Chorus)
最後に!サウンドハウスで取り扱っているフロイド心をくすぐるアイテムをここでもひとつ!
80年代にピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアが使用していたBig Muffに影響を受け作られたファズ/ディストーションペダルです。「YOUNG LUST」を弾きたい。