Symphony Desktopは、プロフェッショナルなレコーディングスタジオ等でも多数採用されているSymphony I/O mkIIと同等の性能を持つデスクトップ・オーディオインターフェイス。
個人的に導入してこちらの記事でも詳細レビューを書きましたが、その後もアップデートが頻繁に行われ、2022年2月にも「Release 1.2.0 PHASE 2」として待望のアップデートが公開されました!
→ 関連記事 【徹底検証】Apogee / Symphony Desktop 究極のデスクトップ・インターフェイス!
発売当初から基本機能は一通り使えるものになっていましたが、タッチスクリーンを活かしたSymphony Desktopの本懐とも言えるような機能は、アップデートにより徐々に実装されていっている状況でした。
これまでのアップデートは以下のような経緯でした。
Symphony Desktopアップデート履歴
■ 2020/10 公開:Release 1.0
- アナログおよびデジタル入出力機能
- タッチスクリーン制御ソフトウェア
- タッチスクリーン・コントロールによるmacOS、Windows 10、iPadOSの互換性能
- タッチスクリーン・コントロールによるAP-66、AP-57プリアンプ・エミュレーション
- ECSチャンネルストリップ、ClearmountainのSpacesプラグイン付属
■ 2020/11 公開:Release 1.1
- タッチスクリーン・コントロールによるECSプラグイン制御、ファクトリープリセット選択
- Apogee FXラックプラグイン - Windows 10互換
- macOS BigSurへの互換性
■ 2021/6 公開:Release 1.1.9
- macOS(M1アップルシリコンを含む)&Windows 10 PC用のApogee Control 2ソフトウェア
- Apogee Channel FX (ACFX)プラグイン内でSymphony ECS Channel Stripプラグインのフルコントロールが以下のデバイスから可能に
→Symphony Desktopのタッチスクリーンディスプレイ、Apogee Control 2ソフトウェア、DAW - ACFXプラグインのラッパーで「プリント」「モニター」「デュアルパスリンク」の3つのワークフローで動作可能
- その他バグフィックス、レイアウトの微調整、および全般的な改善など
■ 2021/12 公開:Release 1.2.0 PHASE 1
- Pultec EQP-1A、MEQ-5 ハードウェア DSP対応
- Apogee Channel FXプラグインのオプティカル・インプット対応
そして今回のアップデートはこちら!
■ 2022/2 公開:Release 1.2.0 PHASE 2 公開
- 下記のApogeeプラグインがApogee Channel FX ラッパープラグイン上で「Print」「Monitor」「DualPath Link」3つのワークフローで動作可能に
- ModEQ 6 / ModComp / Opto-3A
- Symphony Desktopのタッチスクリーン・コントロールからすべてのApogee Native/Hardware DSP DualPathプラグインをフルコントロール
- 以下すべてのApogeeハードウェアDSPプラグインが8*のオプティカル入力(*ADAT使用時8、SMUX使用時4、S/PDIF使用時2)で使用可能に
- Symphony ECS Channel Strip / Pultec EQP-1A / Pultec MEQ-5 / ModEQ-6 / ModComp / Opto-3A
- Apogee FXのすべてのハードウェアDSP版プラグインは、既存ユーザーおよびSymphony Desktopの新規購入者には、今回のアップグレードで無償で提供されます
*Symphony ECS Channel Strip ネイティブ・プラグインもSymphony Desktopに含まれます。
各種対応が拡充していたり、次々とできることが増えていることがわかりますね。特筆すべきは本体タッチスクリーンによるエフェクトなどの操作が次々と充実してきていること!
2021/12のアップデートでは、元々操作することができたECSチャンネルストリップに加え、PultecのEQP-1A、MEQ-5がインターフェイス上でコントロールできるようになりました!
そして今回のアップデートではさらにエフェクトが拡充され、ModEQ 6、ModComp、Opto-3Aまでタッチスクリーンで操作できるようになっています!
個人的に嬉しいのは光学式コンプレッサーOpto-3Aが追加されたこと!Teletronix LA-3Aをエミュレートしたものと思われますが、有名なLA-2Aがウォームで太い、スムーズなコンプレッションを得意とするのに対し、LA-3Aはパンチのあるスピーディーなコンプレッションを特徴としています。ボーカル録音はもちろん、ギターやベース、ドラムなどにも幅広く活用できそうです。
他にもPultecのEQで特徴的な抜けのいいサウンドを得られる一方、ModEQ 6のような現代的なEQで緻密な音作りも可能。
入力の前段に入れるエフェクトとしては完璧と言えるぐらい充実しています。
ルーティング
そして、エフェクトのルーティングも本体から操作できるようになっています。
モニターのサウンドにのみエフェクトをかけたい、録音は素の音でしておきたい、という場合には「Monitor FX」からエフェクトをかけることで実現できます。
また、エフェクトをかけたサウンドをそのまま録音したい、という場合には「Print FX」から適用することでエフェクトのかけ録りが可能となります。
本体ではなくDAW上でプラグインを操作する感覚でモニターやかけ録りをコントロールする「Monitor+DualPath Linkモード」も用意されており、全てPC上で操作を行いたい場合にも非常に便利です。
本体で直接エフェクトを操作するのはペダルのエフェクターをいじっている感覚にも近く、パラメーター調整による音の変化をダイレクトに感じられるため、迷いなく音作りができます。
オンボードDSPエフェクト
では実際の操作画面を見ていきましょう。
○ Symphony ECS Channel Strip
ヴィンテージなEQに、伝説的なエンジニアBob Clearmountain氏によって調整されたコンプレッサー、調整域の広いサチュレーションがパッケージされたチャンネルストリップ。 微調整から積極的な音作りまで、フットワーク軽く理想のサウンドに近づけていくことができます。
○ Pultec EQP-1A
言わずと知れたチューブイコライザー・ハードウェアのエミュレーション。 同じ帯域にブーストとカットを同時に行うことで生まれる特徴的なサウンドも健在です。 レンジを広げたり、魔法とも言われる艶のある質感を加えたり、クセになるサウンドがしっかり再現されています。
○ Pultec MEQ-5
上述のEQP-1Aとセットで語られることも多いですが、こちらはミッドレンジの調整に特化したEQです。 サウンドに少しエッジを加えたいという時などに最適です。 EQP-1Aと合わせてPulse Techniquesにより公式に認可されています。
○ ModEQ 6
6バンドの現代的なUIのパラメトリックEQ。スムーズな操作感で直感的に操作できるため、広い用途で活躍してくれそうです。各バンドをソロでチェックすることができたり、ローパス/ハイパスフィルターをサクッと入れられるのも実用的で便利です。
○ ModComp
機能が充実したモダンスタイルのコンプ/リミッター。 Punch / Easy / Levellerの3モード、2バンドのサイドチェインEQ、オート・メイクアップゲイン、Dry/FXのミックス調整など多彩な機能が用意されています。 急なピークに対して保険程度に入れておくのもいいですし、透明度の高いコンプなので深めにかけても破綻しないため、音作りにも積極的に活用できます。
○ Opto-3A
前述の光学式コンプのエミュレーション。パンチを加えつつもスムーズなコンプレッションが絶妙なさじ加減です。本家と同様にVUメーターもしっかり付いています。 高域を強調するHF ContourやDry/FXのミックス、サイドチェイン・ハイパスフィルターなど現代的な機能も備わり、ガッツリ音を作り込める仕様になっています。
これだけのエフェクトが全て本体上でタッチスクリーン操作できるようなオーディオインターフェイスは他にはないと思います。
プリアンプ・エミュレーション
これに加え、エフェクトの前段となるプリアンプを3種選べるようになっているのも非常にユニーク。 最大75dBのゲインを実現するSymphony Desktopマイクプリに加え、NEVE 1066をエミュレーションした「British Solid State」とAmpex 601をエミュレーションした「American Tube」が用意されています。アナログ入力回路と内蔵DSPによるハイブリッドなプロセッシングで、リッチなサウンドを再現しています。 オーディオインターフェイスひとつで様々な組み合わせで理想のサウンドを作り出せる、夢のあるデバイスとなっています!
British Solid State

American Tube

今後のアップデート
そして、Symphony Desktopの進化はこれだけにとどまらず、今後はMIDI over USB機能、Logic Pro Xでのデバイスコントロールの統合を予定しています。
MIDI over USB機能はクラスコンプライアントのMIDIデバイスをUSBケーブルで接続するだけでMIDIの送受信を可能とする機能。
また、Logic Pro Xでは、DirectボタンやAudio Device Controlビューなどにより、DAWとインターフェイスがシームレスにコントロールできるようになる予定です。
音質や現場対応力など確かな実力を誇る一方、新しいワークフローを実現する新時代のインターフェイスとして、さらなる可能性を秘めたデバイスとなっています。音楽制作にも大きく影響することが容易に想像され、今後もしばらく本製品から目が離せません!