前編のブログ記事にて「フォノイコライザー(フォノアンプ)が必要な場合とは?」というのを解説してきました。
簡単にまとめるとターンテーブルからの出力信号がPHONO出力のみの場合、フォノイコライザーかフォノ入力に対応したDJミキサーが必要という内容でした。お使いのターンテーブルによっては、PHONO出力とLINE出力を切り替えられる場合もあり、その場合には別途フォノイコライザーなどは用意しなくても、モニタースピーカーに接続すれば音楽を楽しめるというものでした。
さて、レコードを再生するときに必要なフォノイコライザーの機能ですが、そもそもなぜ必要なのでしょうか?これには、アナログレコードに音を記録する仕組み、音を出す仕組みが関係しています。
アナログレコードの音が出る仕組み
アナログレコード盤面をよく見ると、盤面に細かい線が同心円状に掘られていることがのがわかります。これは「音溝(おんこう)」「V溝」と呼ばれるもので、この線の全てに音声信号が刻み込まれています。そして、この溝にカートリッジの針先(レコード針)が触れることで針が溝の形状に合わせて小さく動き、動きによる振動をカートリッジが電気信号に変換しています。
低音や大きな音など振幅の大きい音をそのまま盤面に記録しようとすると、針の動きも大きくなりレコード針が溝から飛び出してしまいます。また振幅が大きい場合、音溝同士が干渉しないようにトラック(溝を掘る)間隔を大きくとる必要があり、結果的に盤面に収録できる時間が短くなってしまいます。これらを避けるために、低音は音量を下げて盤面に記録されています。一方で高音はというと、低音と比較して振幅が小さいために盤面のノイズと混じってしまいやすいという特徴があります。それを防ぐために高音は大きく記録されています。
レコードに記録されたままの音を再生しようとすると、低音はスカスカ。高音がシャリシャリ。しかも音量は小さい、ということになってしまいます。これを録音された時の元の音に戻してくれるのがフォノイコライザーの役割です。
さて、アナログレコードの音が出る仕組みが分かったところで、続いてはフォノイコライザーの2つの役割について詳しく説明していきます。
フォノイコライザーの役割 ①「出力レベルを上げる」
フォノイコライザーの一つ目の役割は『レコードに記録された溝から拾った音の出力レベルを上げる』ことです。出力レベルが小さいというのは、音量が小さいということです。
CDプレーヤーなどのオーディオ機器からの出力信号が2V程度であるのに対し、レコードプレーヤーからの出力はわずか0.1~5mVと非常に小さい信号です。そのため信号を十分な出力レベルまで増幅しなくてはなりません。市場によく出回っているレコードプレーヤーとCDプレーヤーの出力を比較してみると、いかにレベルが小さく、音が小さいかが分かります。
・Pioneer DJ / PLX-500の場合
- LINE出力
- 150mV/1kHz
- PHONO出力
- 2.5mV/1kHz
・audio technica / AT-LP7の場合
- LINE出力
- 280mV/1kHz
- PHONO出力
- 4.5mV/1kHz
・YAMAHA / CD-S300RK CDプレーヤーの場合
- LINE出力
- 2.0(± 0.3)V /1kHz
CDの出力(LINEレベル) | レコードの出力(PHONOレベル) |
---|---|
2V程度 | 0.1~5mV (CDの数百分の1程度) |
フォノイコライザーの役割 ②「レコードに記録された音を本来の音に復元する」
フォノイコライザーのもう一つの役割は、レコードに記録された音を本来の音に復元することです。その際のキーワードになるのが、「RIAAカーブ」です。
RIAAカーブってナニ?
レコードへの録音は、先ほどご説明したとおり、そのままの音の状態では低音は溝が大きすぎ、高音は溝が小さすぎるという問題があります。そのため、カッティング(溝を刻む)時に低音は小さく、高音は大きく記録しています。この「低音は小さく、高音は大きく記録する」という記録方法は 世界共通規格である「RIAAカーブ」という規格にのっとっています。ちなみにRIAAとはアメリカレコード協会(Recording Industry Association of America)の略称です。 レコードを再生する際、記録されたやり方と逆のこと、つまり低音を大きく、高音を小さくすることで、本来の音に復元します。その役割を果たしているのがフォノイコライザーです。
このフォノイコライザーによる本来の音への復元を、イメージ図を用いて解説してみましょう。
1.レコード盤からはRIAAカーブがかけられた音が再生されます。
先述のとおり、トラッキング幅に収まるように記録するために、溝の太い低音は音量が小さく、高音は大きく記録されます。
2.それに対してフォノイコライザーは逆RIAAカーブをかけます。
盤面に記録するために小さくされた低音は再生時には大きく、高音は再生時に小さくなるように音声信号を出力します。
3.RIAAカーブがフォノイコライザーによる逆RIAAカーブに相殺され、レコードに刻まれる前のフラット音が復元されます。
ターンテーブルから出力された音声信号は、フォノイコライザーを通ることで聴きやすい音量に増幅されるとともに、楽曲の持つ本来の音に復元されてスピーカーに伝わります。そして、最終的には私たちの耳に音として届くのです。
今回は、フォノイコライザーの機能や使い方をご紹介いたしました。
これから自宅でレコードを始めたい方や、より良い音でレコードを聴きたい方は「フォノイコライザー」にもこだわってみるというのが良いでしょう。
フォノイコライザーはMCやMMなど、カートリッジの種類によって対応しているかどうかもあるので、購入を検討しているレコードプレーヤーやレコード針、お手持ちのオーディオの仕様をご確認ください。それではまた次回!
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