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もしもヘッドホンでMixをするなら ― スピーカーが使えない環境での実践ポイント

2025-12-31

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 音響機材

Mixを行う上で、モニタースピーカーを使って音を確認することは非常に重要です。音の広がりや低域の量感、左右の定位など、スピーカーでなければ判断しにくい要素も多く存在します。しかし、すべての人が常に理想的なモニター環境を用意できるとは限りません。
自宅では大音量が出せなかったり、集合住宅のため夜間の作業が難しかったり、あるいは外出先や移動中の隙間時間を使ってMix作業を進めたいという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、「ヘッドホン」や「PC・スマートフォンの内蔵スピーカー」「小型Bluetoothスピーカー」といった、比較的手軽に使える再生環境を前提に、Mix作業を行う際のポイントをご紹介します。
モニタースピーカーが使えない環境でも、工夫次第で完成度の高いMixに近づけることは十分可能です。この記事が、限られた環境でMixに取り組む方の参考になれば幸いです。

01 複数のヘッドホンで比較試聴をする

ヘッドホンでMixを行う際に最も注意したい点は、「特定のヘッドホンの音に最適化されすぎてしまう」ことです。
ヘッドホンは機種ごとに音のキャラクターが大きく異なり、低音が強調されているもの、高域がシャープに聴こえるもの、全体的にフラットなものなどさまざまです。1つのヘッドホンだけを基準にMixしてしまうと、その特性に引っ張られたバランスになり、別の再生環境で聴いた際に「思っていた音と違う」と感じる原因になります。
そのため、可能であれば特性の異なる複数のヘッドホンやイヤホンを使って比較試聴を行うことをおすすめします。

たとえば、モニター用途として比較的フラットなヘッドホンと、一般的なリスナーが使いそうなヘッドホンを併用することで、「制作側の視点」と「聴き手の視点」の両方から音を確認できます。
筆者自身は、モニターヘッドホンを2種類(Audio-Technica ATH-M50x、AKG K240)と、ノーブランドの安価なヘッドホンを使い分けています。

左から、K240、ATH-M50x、ノーブランド品

ATH-M50xは低域が比較的はっきりしており、リズム隊のバランス確認に向いています。一方、AKG K240は開放型で空間の広がりが把握しやすく、全体のバランスを見るのに役立ちます。そこに加えて、あえて音質の良くないヘッドホンで聴くことで、「一般的な環境でもきちんと伝わるMixになっているか」を確認しています。

02 スマホやBluetoothスピーカーで確認をする

ヘッドホンやイヤホンである程度バランスを整えたら、次はスピーカーでの確認です。
ただし、本記事では「大音量が出せない環境」や「出先での作業」を想定しているため、ここで言うスピーカーとは、モニタースピーカーではなく、スマートフォンやPC内蔵スピーカー、小型のBluetoothスピーカーを指します。

これらのスピーカーは音質的には決して理想的とは言えませんが、スピーカー再生では左右の音が空間上で混ざるため、定位や音量バランスの違和感に気づきやすいというメリットもあります。ヘッドホンでは問題なく聴こえていたパンニングが、スピーカーでは不自然に感じることも少なくありません。
車を運転される方であれば、車のオーディオで確認するのも非常におすすめです。車内は独特の音響環境ですが、実際に音楽を聴く場所として利用している人も多く、「実用的な再生環境」の代表例とも言えます。

これらの再生機器で確認する理由のひとつは、一般リスナーの多くが必ずしも高価なオーディオ環境で音楽を聴いているわけではないという点にあります。
むしろ、スマホやイヤホン、簡易的なスピーカーで聴かれるケースのほうが圧倒的に多いため、それらの環境でも破綻しないMixを目指すことが重要です。

03 アナライザーを使って視覚的に確認する

ヘッドホン中心のMixでは、どうしても聴感だけに頼りすぎてしまう場面が出てきます。そこで役立つのが、スペクトラムアナライザーなどの解析系プラグインです。

※Logic Pro内蔵のMulti Meter

アナライザーを使うことで、音源全体の周波数バランスを視覚的に把握することができます。
たとえば、低域が過剰に溜まっていないか、高域が不足していないか、特定の帯域だけが極端に強調されていないかといった点を客観的に確認できます。
また、自分が目指しているサウンドに近いリファレンス音源を用意し、その周波数分布と比較するのも効果的です。
もちろん、アナライザーの表示がすべて正解というわけではありませんが、「なぜこの曲は自分のMixよりクリアに聴こえるのか」といった疑問を考えるヒントにはなります。

注意点として、アナライザーはあくまで補助的なツールとして使うことが大切です。
視覚情報に頼りすぎると、本来の音楽的なバランスを見失ってしまう可能性もあるため、必ず自分の耳で確認しながら活用しましょう。

04 モノラル音源にしてチェックする

Mixした音源を一度モノラルに変換して再生してみるのも、非常に有効なチェック方法です。
ステレオでは問題なく聴こえていても、モノラルにすると急に音が引っ込んだり、特定のパートが消えてしまったりする場合があります。
これは、位相の問題や、パンニングに頼りすぎたMixになっている可能性を示しています。
バランスがしっかり取れているMixであれば、モノラル再生でも大きな違和感なく聴こえることが多いです。
特に、スマートフォンのスピーカーや一部のBluetoothスピーカーでは、実質的にモノラルに近い再生になることもあるため、事前にチェックしておくことでトラブルを防ぐことができます。

※Logic Pro内蔵のDirection Mixer

※iPhoneの場合、設定からモノラルにできる

まとめ

今回ご紹介したポイントを押さえて作業を進めれば、モニタースピーカーがない環境でも、ある程度Mix作業を進めることは可能です。
複数の再生環境で確認し、聴感と視覚情報をバランスよく使いながら調整することが、ヘッドホンMixの完成度を高める鍵となります。
とはいえ、もし大型のモニタースピーカーで最終チェックができる機会があるのであれば、それに越したことはありません。
最近では、Mix作業が可能なレンタルスタジオや時間貸しのリスニングルームなども増えていますので、仕上げの段階でそうした環境を活用してみるのも良いでしょう。


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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航平

千葉県出身。ギタリスト兼ベーシストとしてロックを中心に様々なジャンルを演奏するマルチプレイヤー。またDTMにも精通しており、ドラムプログラミングやBGM制作、カラオケ音源制作なども手掛ける。
Twitter https://twitter.com/ike_kohei
Instagram https://www.instagram.com/ike_kohei_gt/
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