Filterscape VAはu-he社にしては珍しく、標準的なアナログシンセの構成となっています。 記事では主にアナログシンセ共通の部分を取り扱いますので、他シンセでも応用できる内容となっています。今回はシンセサイザーには欠かせないLFOについて解説します。
LFOとは?
Filterscape VAには上記のように、LFO1、LFO2、LFOG(グローバル)合わせて3個のLFOがあります。 LFOはLow Frequency Oscillatorの略で、日本語では低周波発振器となります。 LFOが扱う周波数は0.2Hz~30Hzぐらいが一般的で、人間の耳では聞き取れない周波数です。 音というよりは、振動もしくは揺れという感覚のものです。 Filterscape VAでは、時間、もしくは音符で周期を設定できます。 LFOG(グローバル)は、ボイスごとにリトリガーしないLFOです。
LFOは変調(モジュレーション)に使う
聞こえないほど低い音程を作り出すLFOですが、各モジュールをLFOで変調することによって様々な効果を生み出すことができます。変調は、あるパラメータをLFOの周期で揺らすイメージです。 1個のLFOで複数個所を変調することが可能です。 以下サンプルはサイン波のLFOを使ったものとなります。
OSCのピッチをLFOで変調
ピッチにLFOをかけた場合はビブラートになります。下図はTUNEにLFO1を5ぐらいかけています。

Filterscapeの場合、専用のVIBRATOがあるので、上記よりも、こちらの方が手軽です。 VIBRATOではLFO1が接続されていて、変更することはできません。 VIBRATOを最大100(プラスマイナス50セント揺れ)にしたとき、 OSCでTUNEを使う場合の0.5が同等となります。

OSCのパルスウィズをLFOで変調
パルスウィズにLFOをかけると音色が変化します。 下のように設定することで、アナログ的な矩形波のデューティー比が変化します。 LFOはサイン波で、かなりゆっくりした周波数に設定しています。

実行すると下図のように、矩形のデューティー比がLFOによって、周期的に変化するのが分かります。

AMPのVOLUMEをLFOで変調
AMPは音量を制御するので、音量の周期が変化し、トレモロ効果となります。

FILTERのCUTOFFをLFOで変調
カットオフ周波数がLFOの周期で変化します。結果的にワウ効果になります。

AMPのPANをLFOで変調
LFOの周期で左右に揺れます。

LFOの波形とその特徴
Filterscape VAのLFOは下図のような波形が選択できます。 sine、triangleはスムーズな変化を得たいときに使います。 saw up, down(ノコギリ波)は、上昇、下降が得られるので、効果音などによく使われます。 sqr(矩形波)は、ON/OFFのようなスイッチ的な扱いができます。

以下サンプルはピッチを saw up および sqr で変調し、人工的な音を模してみました。
rand hold、rand glide
上記のような周期的な波形ではなく、ランダムな波形を作り出すことができます。 rand holdは、一定間隔でランダムに変化しますので、雨や、人工的な音に適しています。 下は音量を変調したときの波形です。 オリジナルは一定音量の波形ですが、LFOで変調することで一定の間隔でランダムな音量になっているのが確認できます。

以下はピッチをLFO rand holdで変調して、昔のSF映画に出てくるコンピュータのような音にしてみました。
rand glideは、連続的に変化していく違いがあり、風や波などの自然な音に向いています。

以下のサンプルでは不安定で不気味な響きを作ってみました。
LFOまとめ
以上がLFOの基本的な使い方で、アナログシンセらしいサウンドを作る上で、欠かせない機能となります。 多くのアナログシンセの場合は、上記の範囲で使われることが多いですが、中にはLFOが通常のオシレータのように扱えるシンセもあり、FMシンセサイズのようなことまで可能な機種もあります。
次回はシンセの要ともいえるフィルターについて解説したいと思います。
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