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蠱惑の楽器たち 81. u-he Filterscape VA レビュー1

2024-02-20

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 楽器

Filterscapeはu-he製品の中でも2004年から存在するかなりの古株プラグインですが、2023年9月に1.5へとバージョンアップされました。最新技術が投入され、UIやフィルタ、オシレータなどが一新されました。驚くべきことに20年前に購入した人も無料でバージョンアップすることができます。これがu-he製品の素晴らしいところのひとつです。古い製品を見捨てず、古い顧客も大事にしています。また管理マネージャー不要のシンプルなライセンス方法もユーザーに寄り添っているように思います。

対応OSはWin、Mac、Linuxで各種プラグイン規格版が同梱されています。さらにu-heとBitwigで策定された新しいプラグイン規格であるCLAP版もあり、これは高パフォーマンスと機能強化の点で優れています。まだ対応しているDAWが少ないのが残念ですが、注目すべきオープン規格です。

Filterscapeはu-he製品の中では、やや影が薄い存在でした。バージョンアップされた現在でも、何に使うべきプラグインなのかピンとこない人も多くいると思います。このコラムで、そのとっつきにくさを多少なりとも払拭できたらと思っています。

u-he ( ユーヒー ) / Filterscape

u-he ( ユーヒー ) / Filterscape

Filterscapeのパッケージには、FX(エフェクト)、VA(音源)、Q6(エフェクト)という独立したプラグインが3つ入っています。モーフィングするEQという共通点はあるのですが、これらを連携させて使うわけでもないので、セットである必要性はあまりなさそうです。u-heとしてはFXが中心的存在で、VAとQ6はFXの一部機能を流用したオマケという扱いなのかもしれません。しかしオマケも強力すぎて、オマケに見えないという印象になっています。

FX エフェクト(フィルター、EQ、ディレイ、LFO、シーケンサー)

Filterscapeの中で主役であり、超強力でありながら用途不明という謎の立ち位置です。これは基本的にエフェクトなので、何かの音を加工するプラグインとなります。ただし補正用というよりは、サウンドを積極的に作るタイプのエフェクトです。モジュラーシンセのフィルタ部分という説明が分かりやすいかもしれません。通常プラグインシンセはオールインワンなので別途フィルタを必要としていませんが、あえてFXに置き換えることで全く違った音作りが可能になります。またシンセ以外の音にもフィルタは使えますが、あまり一般的ではありません。しかしエレクトリックギターなどの電子楽器との相性はよいので、FXを使うことで新たな発見があるかもしれません。

VA 音源(減算式バーチャルアナログシンセ)

バーチャルアナログシンセ音源に独自EQが内蔵されています。シンセなので役割として迷いはないと思います。u-heにしては珍しく理解しやすい部類のシンセだと思います。

Q6 エフェクト(ダイナミックEQ)

基本的にダイナミックEQなので補正用としても使えますが、どちらかというと積極的な音作りにフォーカスしています。

■ Filterscape VA 減算式バーチャルアナログシンセ

ここからはシンセ音源VAの紹介です。名前のVAは、おそらくVirtual Analogの略だと思われます。名前の通りのバーチャルアナログシンセ音源部と、Filterscape独自のモーフィング可能なEQとの組み合わせとなっています。シンセ部分は特定の実機をエミュレートしたものではなく、一般化された減算式シンセとなります。さらにアナログ時代特有のベーシックな機能を一通り網羅した内容になっています。VAは独自過ぎない機能で構成されているので、これで学習したことは他のアナログシンセにも応用可能な知識になるはずです。

VAはモジュラーシンセほどの柔軟性はありませんが、あらかじめ結線されたMinimoogやARP Odysseyなどを参考にしてポリフォニック化したような使いやすい構成となっています。機能を詰め込み過ぎずコンパクトにまとめたため、減算式シンセの学習にも向いています。逆に機能が膨大にあったり自由度が高すぎるシンセは、学習コストが高く作業にはまってしまうことがよくあります。そういう意味では、VAぐらいが作業効率がよくバランスが取れているように思います。

UI ユーザーインターフェース

機能を絞り込んだことでアルペジエータ、エフェクタまで含めた全てのパラメータが一望できるUIは快適です。面積的にもEQの割合は大きく、主役であるのが見て取れます。

OSC 2 15種のウェーブテーブル、Sync、PWM、Ring、FM(クロスモジュレーション)
SUB 1 低音補強用オシレータ
NOISE 1 ホワイトノイズジェネレータ
LFO 3 2個の汎用LFOと1個のグローバルLFO
ENV 3 Fall / Rise time付のADSR。ベロシティ調整もここで行います。
Filter 1 15種類から選択可能 アナログエミュレート
EQ 1 独自モーフィング可能なEQ
Arpeggiator 1 Zebraスタイルのアルペジエータ
Chorus 1 フランジャー的にも扱えるコーラス
Delay 1 テンポ同期のディレイ
AMP、Setting 1 基本設定とPANやレベルの調整

信号の流れ

モノラル信号としてOSC、SUB、ノイズジェネレータから発振された信号はミックスされFilterを通りEQへ向かいます。その後AMPへ入り、ステレオ信号化され、PANが適用できるようになります。その後ステレオ信号のままコーラス、ディレイという順番で処理され、最後にCliperとマスターボリュームで調整され外部に出力されます。LFOやENVは各ブロックの信号を変調するために使われます。アルペジエータはシーケンサーとして演奏データをVA内に出力します。

OSC オシレータ

まずは音を発振するメインのOSCから見ていきます。VAのメインOSCの数は2個で、標準的なアナログシンセと同等です。さらに各OSCには15種類のウェーブテーブルがあり、切り替えられるようになっています。この部分はアナログシンセというよりも、デジタル・ウェーブテーブル・シンセです。それぞれのウェーブテーブルは、数種類の波形で構成されていてスムーズに遷移します。ハードのアナログ回路の場合は、波形ごとに回路が違うために、スムーズな変化には限界があります。デジタルでは、そういう制約がなくなってしまいます。これはVAの強みと言えます。いずれの波形もアナログ波形をエミュレートしたような魅力的な音となっています。ただし独自にウェーブテーブルを作成することはできません。

OSC搭載の15種類のウェーブテーブルを視覚的にも確認できるように動画にしてみました。動画では低いAの音110Hzを鳴らしています。そしてWARPを0から100へ回し、フレームを切り替えています。またデフォルト値が50なので、その位置で一時停止しています。

冒頭のV Analogは、ノコギリからサイン波、そしてINVを兼用することで矩形波(デューティ比可変)にもなります。アナログシンセに必須の波形を網羅していますので、使い勝手の良いウェーブテーブルです。これだけで大抵の往年アナログシンセサウンドを実現できます。

他にもオルガン的なもの、ロボットボイス的なもの、FM的なもの、硬質なものなど、V Analogだけで作るのが難しい音があります。これらを駆使することで幅広いサウンドバリエーションを生むことができます。

SUB サブオシレータ

重厚な音を作り出す場合に威力を発揮する低音補強用オシレータです。波形の種類はサイン、矩形波、ノコギリとなっています。メインのOSCと比較すると理想的な波形に近くなっています。通常は1オクターブ下の音を使いますが、設定で0、1、2オクターブ下が選択できます。

NOISE ノイズジェネレータ

ノイズの種類はホワイトノイズですが、周波数スペクトラムで確認すると若干高域が落ちています。ノイズの音量はOSCとは別に、独立してモジュレーションをかけられます。用途は様々ですが、単体で使うことで効果音も作れますし、OSCと組み合わせることで存在感や表現力を高めることも可能になります。シンセの音作りには欠かせない重要なジェネレータです。

次回は各部の説明と合わせて減算式アナログシンセの代表的な使い方を紹介していきたいと思います。


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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あちゃぴー

楽器メーカーで楽器開発していました。楽器は不思議な道具で、人間が生きていく上で、必要不可欠でもないのに、いつの時代も、たいへんな魅力を放っています。音楽そのものが、実用性という意味では摩訶不思議な立ち位置ですが、その音楽を奏でる楽器も、道具としては一風変わった存在なのです。そんな掴み所のない楽器について、作り手視点で、あれこれ書いていきたいと思います。
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