
最近はDSPチップを搭載し、オーディオインターフェイス側でプラグイン負荷を受け持つという商品も増えてきました。
なかでもハイエンド・オーディオインターフェイスとして名を馳せるANTELOPE AUDIOは、そのソフトウェアの種類が複数に分かれており、よくご質問をいただきます。
そこで今回は、そんなANTELOPE AUDIOソフトウェアの種類を、個別に詳しく解説していきたいと思います!
目次
- ANTELOPE AUDIOとは?
- エミュレーション技術 (モデリング技法)
- FPGA?DSP?
- リアルタイムエフェクト
- afx2daw
- ネイティブプラグイン (Synergy Core Native)
- ネイティブマイクエミュレーション
- まとめ
ANTELOPE AUDIOとは?
ANTELOPE AUDIOと言えばマスタークロック、マスタークロックと言えばANTELOPE AUDIO、というようにクロックメーカーとして常に世界のプロの現場で求められているANTELOPE AUDIOですが、その理念には「原音に忠実である」ということがあります。スローガンとして掲げている「Digtal Clarity, Analog Warmth」の言葉は、それがデジタルの利点を最大限に活かしてアナログの良さを忠実に再現することを意味し、このこだわりはマスタークロックに限らず、ANTELOPE AUDIO製品全てに通じているところです。
エミュレーション技術 (モデリング技法)
ANTELOPE AUDIOのアナログモデリングの方法は、単にその音に似せるというものではありません。実際にその実機を分解し、基盤に組み込まれている部品の一つ一つから電気信号の流れを全てデータ化し、それをデジタル領域(FPGA)で組み上げることで部品レベルから基盤そのものが丸ごとデジタル化されており、これにより入力信号に対しての挙動が実機に忠実なものとなるわけです。つまり、劣化も故障もしないデジタル化されたヴィンテージ機材ということです。
FPGA?DSP?
ANTELOPE AUDIO製品に含まれるソフトウェアを動作させる際、そのエフェクトを動作するために使用されるプロセッサは2種類存在します。
それ「Digital Signal Processor」通称DSPと、「Field Programmable Gate Array」通称FPGAです。
DSPは、信号処理専用として使われるチップのことを指します。CPUに比べると素早く信号を処理できますが、PCのメモリーを介してロードを行うソフトウェアベースの処理であるため、その速度にも限界が存在します。
一方、FPGAはハードウェアベースで信号を処理する特別なチップ。細かな説明は省略しますが、DSPよりも多くの信号を、同時に処理することができるうえ、本体に搭載されたFPGAチップ自体がロードを行うため、PCのCPUに対しては一切負荷を掛けず、ほぼレイテンシーなくエフェクトを適用することが可能になります。そしてこのDSPとFPGAが連動して動作するプラットフォームこそがSynergy Coreと呼ばれるものです。
現在のモデルとそのチップ数は以下の表をご参照ください。
※FPGA×1個あたり同じエフェクトを最大8つまで同時に使用可能
モデル名 | DSP | FPGA |
---|---|---|
Zen Go Synergy Core | 1 | 1 |
Zen Q Synergy Core | 1 | 1 |
Zen Quadro Synergy Core | 1 | 1 |
Zen Tour Synergy Core | 4 | 2 |
Discrete 4 Pro Synergy Core | 2 | 1 |
Discrete 8 Pro Synergy Core | 2 | 1 |
Orion Studio Synergy Core | 6 | 2 |
Galaxy 32 Synergy Core | 6 | 2 |
Galaxy 64 Synergy Core | 12 | 2 |
Axino Synergy Core | 1 | 1 |
それでは改めてANTELOPE AUDIOが提供するソフトウェアの種類を解説していきましょう。
リアルタイムエフェクト (Real-Time Effect)

ANTELOPE AUDIOオーディオインターフェイスに内蔵されたオンボードのリアルタイムエフェクトで、コントロールパネル(ソフトウェアミキサー)から設定、操作を行います。
メーカーのソフトウェアページから追加のエフェクトを購入し、使用することが可能。また購入情報はアカウントに紐付いているため、元々持っているANTELOPE AUDIOオーディオインターフェイスから上位機種に乗り換える場合など、譲渡を行ったとしても継続して使用できます。
ネイティブプラグインと違い、DAW上では起動できず、あくまでハードウェア内部で動作するプラグインであるというところに注意が必要です。ただしルーティングの設定によっては、ダイレクトモニタリングだけではなく、リアルタイムエフェクトを掛けた音声をDAWへ掛け録りことも可能ですし、DAWからハードウェアインサートをすることで、このオンボードエフェクトを、実際のアウトボードエフェクトをインサートするような感覚で使用することも可能です。
詳細なルーティング方法については、以下のメーカー動画をご参照ください。
afx2daw

ANTELOPE AUDIOオーディオインターフェイスのコントロールパネル(ソフトウェアミキサー)から操作できるオンボードのリアルタイムエフェクトを、DAWから直接呼び出し、操作できるようにするブリッジプラグイン。VST3/AAX/AU規格に対応し、ほとんどのDAWで使用可能です。
信号処理はインターフェイス側で行うため、CPUの負担はプラグインのGUIだけという驚異の仕様。実質的に外部ハードウェアを持っているのと同じであり、スタジオの拡張にも役立つこと間違いなしです。
afx2dawプラグインに対応しているオーディオインターフェイスは以下の通り。
Zen Go Synergy Core USB |
Zen Q Synergy Core USB |
Zen Q Synergy Core Thunderbolt |
Zen Tour Synergy Core |
Zen Tour (旧モデル) |
Discrete 8 Pro Synergy Core |
Discrete 8 Synergy Core (旧モデル) |
Discrete 8 (旧モデル) |
Discrete 4 Pro Synergy Core |
Discrete 4 Synergy Core (旧モデル) |
Discrete 4 (旧モデル) |
Orion 32 + | Gen 3 (旧モデル) |
Orion Studio Synergy Core |
Orion Studio (旧モデル) |
Orion Studio 2017 (旧モデル) |
ハードウェアインサートとafx2dawの違い
これらの説明から、それぞれ似たエフェクトであるハードウェアインサートとafx2daw。
ハードウェアインサートは、デバイス内部ミキサーのルーティングを使って、Synergy Coreリアルタイムエフェクトをハードウェアインサートするもの。通常DAWでプラグインを使うとなると、プラグイン自体を立ち上げる動作が必要ですが、これは音の流れを分断してその間にプラグインを挿入しているという作業が行われています。
同様にルーティング中に音を一度デバイスに流し、また同じポイントにルーティングして戻す作業を行えば、これがハードウェアインサートとなります。
これを簡略化させ、DAW上で起動するだけで使用できるようにしたのがafx2dawです。個別の環境が異なることから、ルーティング詳細はいわば玄人向けの機能になるため、基本的にはafx2dawを使うことを推奨しています。通常エンジニアが行うような複雑なルーティング作業を行うことなくそれができるようにするのがafx2daw、AFX(オンボードエフェクト)to DAWというプラグインです。
ネイティブプラグイン (Synergy Core Native)

ANTELOPE AUDIOが開発するプラグイン・ソフトウェア。もともとは前述のリアルタイムエフェクトとして、Synergy Coreプラットフォーム上で動作するものでしたが、それをプラグインとして動作できるソフトウェアにした(VST/AUプラグイン化した)ものがこのSynergy Core Native。つまりオーディオインターフェイスを接続していない場合でも、DAWから直接起動して使用することが可能です。
往年の名機を忠実にモデリングしたイコライザーやコンプレッサーなど、即戦力となる強力なプラグインが豊富にラインナップされています。
ただし利用には月もしくは年ごとのメンバーシップ登録が必要。キャンペーンで半年メンバーシッププレゼントなど行っていることがありますので、その際にはぜひ加入してお試しください!通常時でも14日間のトライアルを実施していますので、まずは使ってみて、その音の良さを体感して欲しいです。
なお使用する場合はiLokキーが必要になります。iLokアカウントのみでは使えませんのでご注意ください。
ネイティブマイクエミュレーション (Native Microphone Emulations plug-in)

ANTELOPE AUDIOのモデリングマイク専用のプラグインであり、これもDAWから直接起動することが可能。世界中で愛される象徴的なビンテージマイクから、スタジオ定番のあのマイクまで、周波数特性とカラーを精密に再現します。
オーディオインターフェイス購入により、マイクエミュレーションコードを獲得することができ、対応するマイクを登録していれば使用することが可能です。反対に対応するモデリングマイクを登録していない場合は使うことができませんのでお気を付けください。
また、対応インターフェイスを所有していない場合でも、対応マイクを所有していれば、DAWからプラグインとしてマイクエミュレーションを使用することもできます。
ネイティブマイクエミュレーションに対応しているモデリングマイクは以下の通り。
まとめ
それぞれの仕様を一つの表にまとめると、以下のようになります。
ネイティブプラグイン (Synergy Core Native) | ネイティブマイクエミュレーション (Native Microphone Emulations plug-in) | リアルタイムエフェクト (Real-Time Effect) | afx2daw | |
---|---|---|---|---|
対応オーディオインターフェイスの接続 | 不要 | 必要 | 必要 | 必要 |
対応モデリングマイクの接続 | 不要 | 不要 | 必要 | 不要 |
使用権利購入 | 必要 | 不要 | 不要 | 必要 |
メンバーシップ登録 | 月 / 年ごと契約 | 不要 | 不要 | 不要 |
DAW上での起動 | 〇 | 〇 | × | 〇 |
コントロールパネルから起動 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
今回はANTELOPE AUDIOが提供するソフトウェアについて一通り解説してみました。
これまでレイテンシーが多くエフェクトの掛け録りは敬遠してた......というそこのアナタ!この機会にぜひANTELOPE AUDIOのSynergy Coreシリーズをご検討ください!