Greetings! 新米ライターのMarkです。
本日は「指板潤滑剤」についての詳しい解説と裏技的な使い方をお話したいと思います。
指板潤滑剤はいまだに誤解や誤用が多いメンテナンスアイテムです。この機に適切な使い方を覚えてみてください。
■ 指板潤滑剤とは
指板潤滑剤とはギターやベースの弦に塗ることで指のすべりを向上させる液剤のことです。
塗布する面が指板側であるため【指板】潤滑剤という名称が定着していますが、正確には【弦】潤滑剤ということですね。
成分は人体に害の少ないシリコーンオイルやミネラルオイル(鉱物油)が主として採用されます。
前者は食品加工機の潤滑剤やリンス、後者は化粧品やベビーオイルにも使われるほど身近なもの。過度に危険視する必要のないオイルといえます。
■ 指板潤滑剤の役割
前述の通り指板潤滑剤は弦をツルツルにして指のすべりをよくするためのアイテムです。
ギターの弦というのは意外にも摩擦係数が高く、開封後は酸化によってさらにザラザラとした質感へと劣化しています。
弦の摩擦はフィンガリングに大きな影響を及ぼします。横方向の動き……スライドやグリッサンドがやりにくくなるだけでなく、コードチェンジや速弾きの際の弦離れの快適さも損なわれる。
上級者のテクニカルなプレイはもちろん、基礎を覚えていく段階の初心者にとっても都合の悪い存在です。うまくいかない原因は弦にあるのに「自分は練習してもうまくできない」なんて思い込んでしまうことも少なくないですからね。
指板潤滑剤はそういった不要な摩擦を解決するために存在します。手触りの好き嫌いはあれど、プレイヤーなら一度は試しておくべきアイテムです。演奏後に塗布すれば防錆効果の恩恵も得られますし。
■ 指板潤滑剤の種類と使い方
指板潤滑剤の容器にも様々なタイプが存在するのですが、ここでは主流2タイプを紹介します。
まずは古くから親しまれてきたスプレータイプ。年配のプレイヤーにとって指板潤滑剤といえばこのタイプでしょう。
TONE ( トーン ) / FINGER EASE ギター弦クリーナー 指板潤滑剤
弦に向かってシューと吹きつけてから余剰分をクロスで拭うだけの簡単ケアが売り…のアイテムですが、その使い方だと指板やボディ、吹き付けた部屋の床までオイルまみれになってしまいます。
(私はライブハウスの楽屋がツルッツルになっていて転んだことがあります)
特に浸透性の高いオイルだと指板深くまで残留したり、フレット浮きの原因になったりするとされ、このことから一部の人は「指板潤滑剤は絶対に使ってはいけない」と主張することもあります。
とはいえ適当にスプレーせず弦だけを狙えばいいわけですから、たとえば弦と指板の間に紙を挟んでからスプレーしたり、マスキングしたり、直接スプレーしないで液剤を染み込ませたクロスで弦を拭うといった使い方をすれば問題なし。

「スプレーのやつはダメって聞いた」と鵜呑みにする必要はありませんよ。何事も使い方次第です。
続いてフェルトタイプ。こちらはオイルを染み込ませた取っ手付きのフェルトで弦を拭うタイプです。
MUSIC NOMAD ( ミュージックノマド ) / MN109
スプレーのように飛び散ることがなく、また適度な量を塗布しやすいため最近ではこちらを使う人が増えています。かくいう私もMUSIC NOMADのフェルトタイプを愛用中。

使いやすく、甘い香りで、性能もよい。これなしではやっていけません。この他にはサブとしてFenderやGHSのフェルトタイプも常備しています。
GHS ( ジーエイチエス ) / FAST-FRET 指板潤滑剤
フェルトタイプの場合もツルツルヌルヌルしすぎると感じたらクロスで軽く拭ってから演奏しましょう。ゴシゴシしない限り油分は残るので素の状態の弦よりはすべりが向上しているはずですよ。
■ 裏技的な使い方①
さてここからは裏技……という程ではないですが、弦にただ塗布する以外の使い方についてお話しましょう。
ひとつめは「酸化皮膜の除去」作業のケア。
錆には至っていないレベルの劣化、手触りがザラザラしている弦には、指板潤滑剤を塗ったところであまり効果を感じられないことがあります。
しかし、ザラザラした弦は単純に弾きにくいですし、その微細なザラザラを残しておくことで弦自体がヤスリとなってフレットの消耗を早めてしまう原因にもなります。できる限り除去しておくべきです。
酸化除去において一番確実なのはピカールやスクラッチメンダーのような金属磨きで研磨すること……。ですが、その方法だと巻弦に研磨剤が残留してしまうんですよね。
そこで使用するのが害のない成分の指板潤滑剤。
これを適当なウエス、特にザラザラした生地のウエスに塗布して、弦を強めに何度も磨いてやる。すると軽度の酸化ならきれいに落ちることがあります。酸化除去を確認したら清潔なクロスで汚れたオイルを拭い、最後にいつも通りの塗り方でケアをする。
この方法なら研磨剤のように気を使うこともありません。
使用するウエスはなんでもOKですが、デニム生地やキャンバス生地のような頑丈でザラザラした生地だと効果が大きくなります。弦を切らないように注意しながら試してみてください。
■ 裏技的な使い方②
もうひとつの裏技、それは……フレットに塗布すること。
MUSIC NOMADのような長方形のフェルトタイプ潤滑剤を、

こんな感じで弦と平行にしてフレットに塗布するんです。指板に触れないよう注意しながらね。
こうすることで弦とフレットの接触による摩耗が抑えられるだけでなく、チョーキングやビブラートのやりやすさも向上します。
弊害があるにもかかわらずスプレー直吹き派が存在するのは弦とフレットの両方が潤滑されて快適になるからかなと思います。
スプレーと同じように潤滑の恩恵を受けつつもギターや周辺環境に影響を与えない方法がこの並行塗りです。私がMUSIC NOMADを愛用している理由がおわかりいただけましたか?

これね、並行塗りにすっごくちょうどいいんです。フレットの摩耗が気になる方はぜひお試しください。
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